表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したので、攻略対象を犬にしてシナリオを全部バグらせます  作者: かんあずき
聖女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/30

15 やられたのは私一人

「キャサリン!」

「キャサリン様!」


アーサーとクルトの悲鳴と同時に、冷たいまとわりつく汚れた水と、自分の落ちた音が聞こえてくる。


また、やられてしまったわ。トーマスは脳筋じゃなくて?

このタイプ、理屈じゃないのよ。

自分が慕っている人が快か不快か......それだけ...


噴水に落とされる。

これは確かにパターンだけど...

想定外──



完璧にリリーたちをやっつけたはずの私の視界は、突き飛ばされたことにより揺れる。

整った髪はべったり水に張り付き、独特の汚水の臭いが鼻につく。



私は目が血走る。


なんですの!これ!許されませんわ。

髪も服もびしゃ濡れじゃないの!

どうしてやろうかしら?


わたしは思わず舌打ちする。

ビジュアルを壊されるのは本当に屈辱でしてよ。



ただ──


私が公衆の面前で落ちたら、どうみても、やられたのは私になるじゃない?

自演して落とされたふりするのはリリー、あんたのテンプレなのに、これはあなたにとっても想定外じゃなくて?


はぁ。

まさか、私が今回も被害者になるとは。

チラッとリリーを視界に入れる。

やっぱり、リリーは、慌てているようだわ。


みんなの目の前でやられるのは自分じゃないといけないのに、文字通り平民のくせに貴族に暴力を振るわせたんですものね


「トーマス!私を守るために女の子に暴力を振るうなんてダメだよぉ!」


涙で首を振りながらも、リリーは指先が震えている。

それでも──


伝家の秘刀! 必殺!責任転嫁!!


だけど、トーマスは脳筋。

責任転嫁されたことすらわかってないわ。


「リリーを守るためだ。こうでもしないとキャサリンは君に何をするかわからない」


「わたしはそんなこと望んでないのにっ!」


ほらほら、わたしは関係ないアピールが始まっているのに、お前のためだと繰り返している。


やればやるほど、リリーが意図の通り、マグナカルタ公爵家の娘に二人が危害を加えた事になりましてよ。



私は、呆れたように、二人の怒鳴り合いを汚れた噴水の中から眺める。


「おい、キャサリン手を伸ばせ!大丈夫か?」


アーサーが急いで駆け寄ってくるが、来るのが遅いのよ。

私は、すわった目でアーサーを睨みつける。



「大丈夫なわけなくってよ。」


私はのろのろとそのアーサーの手を無視して、噴水から一人で立ち上がった。

服が水を含んで重い。


「リリー様、あなたが望んでいようと望んでいなかろうと、やらせたという結果に変わりはなくてよ。トーマス様自身が、あなたのために、私に暴行したと明言しているのですから」


リリーはキッと私を睨みつける。


「何を!やらせたと言う結果に変わらないなら、あなただって同罪だわ。この噴水に浮かぶ教科書やノート、あなたがしなかったらそこにいる二人にやらせたんじゃなくて?」


もはや論理が破綻している。

私がやった、もしくはやらせた根拠がない。

そこに疑問をなぜ持たないのだろう?

まるで、そんな根拠はなくても、自分がそう言えばそうなるといわんばかりだ。


チラッとわたしと一緒に沈むボロボロの教科書とノートを目にする。


これは...確かにリリー様のものですわ。


ふふっ


私は、冷え切った体に、冷え切った目でリリーを見つめる。

自作自演ね。


哀れな本たちですこと...



この裏口の噴水は、学園玄関のものと違って

苔だらけで水も濁っている。

自分で飛び込むのは嫌だったのかしら。

だから本だけ投げたのね。


私が噴水に落とされてなければ、やられているのはリリーの本だけなんでしょうけどね。


ごあいにくさま。このドロドロの汚水に落とされているのは、紛れもなくわたし。


被害者はわたし一人──


「そうですわね。私がもしやるとしたなら、こんなふうにこの教科書は噴水には投げ入れないと思いますわ。だって、あなたに一番必要な教科ですもの」


「な、なんですって!」


リリーの声が裏返る。

わたしは水に沈んでいる教科書を引き上げた。


「だって、これ道徳の教科書じゃなくて?

まさに、私に暴行を働いた、あなたとあなたのナイトに一番必要なものだわ。

あらあら、他にもぜんぶサブ教科ばかり。リリー様、主要教科も大事ですけど、人生を楽しむならサブ教科は重要でしてよ。」


「平民は教養がないっていいたいんだね!ひどいっ!」


....ふうっ、馬鹿の一つ覚えだわ。

そろそろ、パターン外の言葉をぶち壊したくってよ。

私は、リリーを見据えた。


「あら?あなたは貴族より平民の方が教養は高いといいたいのかしら?それは素敵だけど、暴行を加えた後に、教養があるのかといわれたら?」


「やったのは、トーマスよ!」


......往生際が悪い


「そうね、そして、やらせたのはリリー様。わたしは、わたしの所有の子にそんな乱暴な真似はさせなくてよ。ほら、リリー様の手を離れたクルトもおとなしい可愛い子に早替わり。」


ざぶっと、噴水から上がる。

空気が肌に触れて一気に冷え込む。

アーサーが慌てて自分のブレザーを私に掛ける。


おお、腐っても王子!やるじゃないの!


「自分の取り巻きぐらい、自分で管理なさっては?」


わたしはそう言いながら、トーマスの頬にするっと触れる。

トーマスは、ハッとしたような顔になる。


また、魅了かしら?表情が変わったわ。

だからと言って許す気もないですけど...


「何の根拠もなく、マグナカルタ公爵家の令嬢に暴行したのですもの。正式に、我が家から抗議させていただきますわ。

ああ、証言は大量にありましてよ。足掻くことなくお待ちくださいませ」


私は呆然と立ち尽くすトーマスと悔しそうに睨みつけるリリーに氷の微笑を浮かべた。


「では、ごきげんよう」


飛んだ目にあったけど、この段階でやられているのは私だけ。魅了でみんなを欺いていると嫌疑をかけられることもないだろう。


うう、靴の中も水浸しじゃないの。

擦り傷と打ち身も痛いわ。


だが、歩き出した瞬間、リリーの言葉に足を止める。


「ねえ、モブって!あんた転生者だよね!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ