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「影を操る俺が、落ちこぼれから世界最強の祓魔師になるまで」  作者: ゼナ キラ


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4/10

イントロダクション

ようこそ、Fクラスへ――。

壁はひび割れ、机は壊れ、そして生徒たちは……もっと奇妙だ。


この章でヒカルはついに〈エーテル学園〉の新しい教室へ足を踏み入れる。

そこにあったのは埃と廃れた備品だけではない。

落ちこぼれ、はみ出し者、そして隠された力を持つ者たちが待ち受けていたのだ。


炎のように鋭いフジ。

影を纏う双子。

沈黙を貫くミキオ。

そして、いつまでも明るく押しの強いサクラ。


一人ひとりの「自己紹介」が、この物語を大きく動かす。


ここからが本当の始まり。

ヒカルの新しい“家族”は、すでに決められてしまった。

彼の望みとは関係なく――。

教室は、僕が想像していたものとはまったく違っていた。

壁はひび割れ、窓は古く曇っていて、机は何世代も使い回されたように見える。

――そうだ。ここはクラスF。エーテル学園の「落ちこぼれの吹き溜まり」。


足を引きずるように中へ入り、周囲のひそひそ声を無視する。


そのとき、気づいた。――自称「クラスメイト」たちの存在に。


乱れた茶髪の少年が椅子にのけぞり、足を机に投げ出していた。

「また不幸な奴が来たな」

にやりと笑う。あれがフジ。もう僕を値踏みしている目だった。


窓際には、まるで光そのものから逃げるように、影に半分隠れた少女が座っていた。

彼女の名はスキ。一度だけこちらを見て、すぐに窓の外へ視線を戻す。表情は読めない。


その隣には、彼女と同じ顔をした少年――双子のユキ。

彼はにやりと笑い、鉛筆を空中に投げながら言った。

「新入り、あいつの無口を気にすんなよ。ずっとああなんだ」

気楽そうな声。でもどこか、トラブルを待ち構えているような鋭さがあった。


教室の奥では、異国風のアクセントを持つ二人が小声で囁き合っていた。タリアとジャクソン、転入生らしい。

彼らは場違いに見えたが、その目は妙な鋭さで周囲を観察している。


近くには、小柄な少女が机にうずくまり、不安げにペンをいじっていた。ミカサ。間違いなく引っ込み思案のタイプだ。目が合うと、びくりと肩を震わせた。


そして――ミキオ。

背が高く、静かに目を閉じ、まるで眠っているかのように動かない。言葉ひとつ発しない。

だが彼の周囲の空気だけが、異質だった。


これがクラスF。

最底辺。

そして、どうやら僕の新しい居場所らしい。


教室はすでに騒がしく、 chatter が飛び交っていた。僕が後ろの席に座ろうとしたその時――


「ヒラくん!!」


声が耳を突き、僕は固まった。まさか。


反応する前に、誰かが勢いよく飛びついてきて、まるで何十年ぶりの親友再会かのように腕にしがみつく。


振り返ると――彼女がいた。サクラ。


ピンク色の髪が彼女の快活な顔を縁取り、小学生の頃から変わらぬ輝く瞳。太陽のような笑顔を浮かべていた。


「やっぱりヒラくんだ!」

「……サクラ?」

「そうだよ! 久しぶりだね!」彼女は場違いな大声で続ける。「わぁ、本当にすごい! まさかまた同じクラスになるなんて!」


僕はため息をつく。よりによって彼女か。


変わっていない。押しが強くて、勝手に「親友」扱いして、やめろと言ったあのあだ名を平然と使ってくる。

しかも当然のように、僕の隣の席に腰を下ろす。


「これって運命でしょ?」

「違う。不運だ」


――だが、本当は覚えていた。

小学生の頃。僕の「家名」のせいで、皆が僕を避けたとき。唯一、僕のそばにいてくれたのは彼女だった。人気者で、友達に囲まれていたのに、必ず僕を引っ張っていった。


そして今も、彼女はここにいる。

相変わらず子供っぽく、相変わらず押しが強く、相変わらず……サクラだった。


彼女の笑顔を見て、ずっと奥に押し込めていた記憶がよみがえる。


――小学校の校庭。暑い午後。僕は壁際に立ち、囲まれていた。


「おい、カゲ」少年が僕の襟をつかみ、嘲った。「お前んとこの一族って無能なんだろ? 皆そう言ってるぜ。もう学校来んなよ」


僕は何も言わない。言葉なんて意味がないと早くに悟っていた。


拳が振り上げられ――その時。


「やめなさい!」


鈴のような声が響いた。

皆が振り返る。


そこにいたのはサクラ。小さな体で、顔を真っ赤にして怒りに震えていた。

ためらいもなく僕の前に立ちふさがる。相手は自分の倍の大きさなのに。


「ケンカしたいなら他を当たりなさい! でも、ヒラくんに手を出すなら、まず私を倒してからにしなさい!」


少年たちはたじろぐ。誰も僕をかばったことなんてなかったから、どうすればいいか分からなかったのだ。


「頭おかしいんじゃねーの」

「やめとけ」


そう言って散っていった。


サクラは両手を腰に当て、まるで世界を救ったかのような笑顔でこちらを振り返る。


「ね? 私がいれば大丈夫でしょ、ヒラくん!」

「……頼んでない」

「ふふん、でも“どういたしまして”でしょ」


――あれがサクラだった。いつも突っ走って、いつも笑顔で、いつも僕を「ヒラくん」と呼んで。


そして今、何も変わっていない。


僕は顔を覆ってため息をついた。

どうしてよりによって、彼女が僕の隣なんだ……。


東棟の大きな窓から朝日が差し込む。世界屈指の名門と言われる学園のはずなのに、僕が入った教室はお世辞にも立派とは言えなかった。歪んだ列の木製机、何十年も使い古された黒板、閉まりきらない窓。


――クラスF。


僕は割り当てられた席に腰を下ろす。窓際、二列目。


カラリ、と扉が開く音がした。


女性が入ってきた。

温かい笑顔、緩く編んだ栗色の髪。明るさに満ちた雰囲気を持ち、ベージュのジャケットに黒のワンピースを合わせた姿は教師というより若いOLのようだ。


「おはようございます、みんな!」彼女は手を打ち鳴らし、明るく言った。「私はクラリッサ・アオリ。あなたたちの担任です。でも堅苦しいのは抜きにしましょう。“クラリッサ先生”でいいですよ」


ざわめきが走る。教師を名前で呼ぶなんて聞いたことがない。


彼女は机に腰をかけ、目をきらめかせる。「せっかくだから最初の日はシンプルにいきましょう。自己紹介です。名前、好きなもの、嫌いなもの。簡単でしょ?」


生徒たちの間から不満の声が上がる。僕はため息をつく。自己紹介なんて無意味だ。


クラリッサ先生は前列を指さした。「フジ、最初はあなたね」


鋭い目をした黒髪の少年が立ち上がる。

「フジ・カネ。好きなのは剣術。嫌いなのは怠け者」


短く、切り捨てるような声。


「クールね、フジ」先生は笑う。「次!」


だらしなく椅子に座る長髪の少年が片手を上げた。

「ユキ・ミカヅキ。嫌いなルールは守らない。笑えって言うな」


双子の姉が睨むように立ち上がる。

「スキ・ミカヅキ。好きなのは静かな場所。嫌いなのは弟の態度」


教室に笑いが起き、ユキはにやりと笑った。


次に、赤髪で顔の半分を金属のマスクで覆った少年が立つ。

「……ミキオ・タイヨウ」


炎でその名を空に描き、すぐに座った。


「ミステリアスね!」クラリッサ先生は動じない。


青髪の小柄な少女が立ち上がり、スカートを握りしめる。

「み、ミカサ・アオリ……す、好きなのは……絵を描くこと……に、苦手なのは……人混み……」


同じ苗字に、教室がざわつく。頬を赤らめた彼女はすぐに座った。


次は二人の転入生。

「ジャクソン・チー。スポーツが好き、特にバスケ。じっとしてるのは嫌い」

「タリア・ホシノです。読書が好き。私を見下す人が嫌い」


「国際色豊かね!」クラリッサ先生は嬉しそうに言った。


最後に、ピンクの髪の少女が勢いよく立ち上がる。

「サクラ・キツネ! サクラちゃんって呼んでね! 好きなのはお祭りと甘いものと友達づくり! 嫌いなのは暗い顔!」


ちらりと僕を見る。僕は視線をそらす。


「元気いっぱいね、サクラ!」クラリッサ先生は拍手した。「じゃあ最後、ヒカル?」


仕方なく立つ。

「カゲ・ヒカル。好きなものはない。嫌いなものもない」


間。


サクラが笑った。

「うそつき! ヒラくん!」


僕は顔を引きつらせ、黙って座った。


クラリッサ先生はまた手を叩く。

「よし、全員自己紹介も終わったし、これで“クラスF”としての一年が始まるわよ! 他のクラスに見下されても、あなたたちは一緒に強くなる。これは私の担任としての約束です!」


教室がざわつく。希望、無関心、色々な反応。

僕? ――どうでもいい。


「じゃあもっと面白いことをしましょうか」クラリッサ先生は笑みを深めた。「もう知ってると思うけど、エクソシストは一匹狼じゃなくチームで戦うの。だから――あなたたちは今日から『エクソシスト小隊』に入ることになります!」


「小隊?」ユキが呟く。「牢屋の仲間分けかよ」


「違うわ」先生は首を振る。「仲間は命綱。盾。第二の家族。ひとりが倒れたら、他の仲間が支える。それがエクソシストの掟よ」


僕は窓の外を見つめる。家族。仲間。――意味のない言葉だ。


クラリッサ先生はチョークを黒板に打ち付けた。カチリ。

「小隊は――初日に決めます!」


「は? 初日から?」僕は小さく呟いた。


先生はにやりと笑う。「そうよ、ヒカル。暗い顔しないの。噛みつきはしないわ」


面倒なことになった。


クラリッサ先生が手を上げると、教室の床に魔法陣が広がる。机は一瞬で消え、僕たちは空っぽの訓練場に立っていた。


驚きの声が響く――。


(ヒカルより)


――ふぅ……これでFクラス全員か。

正直、半分は厄介そうだし、残りの半分は時間の無駄にしか見えない。

で、俺の運の悪さからして、きっとその両方に巻き込まれるんだろうな。


明日にはチーム分けだとさ。……最高だな。俺に必要なのは、さらに人にまとわりつかれることらしい。


で、俺に押し付けられるのは誰だと思う?

サクラか? ミキオか? それとももっと最悪なのか……?

……まあ、どうでもいいけどな。

予想したいなら勝手にすればいい。


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