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「影を操る俺が、落ちこぼれから世界最強の祓魔師になるまで」  作者: ゼナ キラ


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10/10

苦闘

歩を進めるごとに、森はまるで無数の目で見つめているかのように息を潜めていた。影は存在しないはずの場所で揺らぎ、踏みしめる一歩ごとに音が不気味に響く。

この迷宮のような森を進むのは零班だけではない。しかし、待ち受ける試練はそれぞれの限界、そして弱点を突くものだった。霧の狼、鋼の獣、悪夢から生まれた怪物たち――そのすべてが沈黙の中に潜んでいる。

ヒカル、サクラ、ミキオにとって、これはもはや力を競うだけの試験ではない。試されるのは信頼。ばらばらの連携が、これから押し寄せる嵐に耐えられるかどうかだった。


森の奥へ五分も歩かないうちに、空気は重くなった。

まるで木々そのものが息をひそめているかのように。


落ち葉のざわめきも、枝の折れる音も――すべてが脅威を孕んで響く。


最初に沈黙を破ったのは、案の定、桜だった。


「で、リーダー。モンスターに遭遇したらどうするの? とりあえずぶん殴って、質問は後回し?」

彼女はほとんどスキップしながら俺の隣を歩く。


ポケットに手を突っ込みながら答える。

「それはお前が、即落第したいのか、それとも恥かいてから落ちたいのか次第だな。」


「ひどっ!」桜は大げさに息を呑んだ。「ヒラくん、冷たすぎ! 私は優秀な戦士なんだから! ただ……」

彼女はちょっと考え込み、ぽつりと言った。

「……作戦は苦手。」


「知ってる。」


後ろを歩く幹生は黙っていたが、空中に炎文字で書きつけた。


『彼女はどうせ突っ込む。考慮に入れろ』


「ほら、幹生は私のこと分かってる!」桜は得意げに舌を出す。


「それは褒め言葉じゃなくて警告だろ……」俺はうめいた。


桜が反論する前に、地面が揺れ、前方の木陰から何かが姿を現した。

霧のような体を持つ巨大な狼。半透明に揺らぎ、目は淡い紫に光っている。


桜は俺の袖をぎゅっと握った。

「うわ、きも……でもちょっとカッコいいかも。」


「撫でたいとか言うなよ?」

「言ってない! ……ちょっとは思ったけど。」


狼が低く唸る。森全体が鳴動するような声だった。


幹生がすばやく書く。

『試験用の敵。観察しろ』


「了解。」俺は一歩前に出る。体の奥でオーラが唸りを上げる。

「どのくらい強いか、見てやる。」


動こうとしたその瞬間、桜が狐火を放った。

炎が狼の胸を貫き、霧の体を四散させる。


「やった! 一撃必殺!」


だが霧はすぐに集まり、狼は再び姿を取り戻した。

「……一撃、脳細胞ゼロだな。」

「ちょっと! 試しただけでしょ!」


狼が突進してくる。爪は煙の刃のように鋭い。

俺は迎え撃ち、拳を振り抜く。

霧の体は裂け、今度こそ火花と共に消滅した。


「ヒラくん、カッコつけすぎ。」桜は頬をふくらませる。

「違う。効率的なんだ。」


幹生が手を叩く。雷鳴のような音が森に轟いた。

炎文字が宙に浮かぶ。


『音に弱い。物理で止めを』


「なるほどな。」頷いたその時。


森全体が唸りを上げた。木々の奥、無数の瞳が灯る。

紫の霧の中に、赤い光点が散らばるように。


桜の狐火が周囲を照らす。

「やだやだやだ……リーダー? パニックしていい?」


「却下だ。陣形を取れ、ゼロ班。」


幹生が簡潔に書きつける。

『群れが来る』


「やっぱりか。」


茂みを突き破り、次々と霧狼が飛び出す。

群れが現れた。


そしてゼロ班にとって――ここからが本当の生存試験だった。


森の上から差す陽光が木々の影を揺らす中、クラウドナイン班は前進していた。


先頭はフジ。無言で冷静、影がかすかに揺れる。

後ろでミカサが眼鏡を直す。その奥の「霊眼」が淡く光り、周囲を探る。

さらにその後ろを歩くのはタリア。腕を組み、感情を表に出さない顔。


「この辺り、オーラ反応が多すぎる。」ミカサが小声で告げる。「弱いのもあれば……強いのも。」

「まとまって動け。必要になるまで分かれるな。」フジは低く返す。


タリアが口の端を上げる。「ベテランみたいね。」


枝が折れる音。木陰から二体の狼型の獣が姿を現す。


「俺が足止めする。」フジの足元から剣が伸び、槍のように突き刺す。

「……まだ力不足か。」


「なら、私が印をつける!」ミカサの眼鏡が光り、霊眼が敵のオーラの流れを読み取る。

手の中にオーラの銃が形作られ、震える指で狙いを定め――バン!

弾丸が狼の脚を撃ち抜いた。


「当たった!」彼女は驚きに声を上げた。


もう一体が彼女に飛びかかる。

フジの剣が閃き、軌道を切り裂く。

「集中を切らすな。」


隙を突き、フジの剣が一体を粉砕。

残りの一体も舞うような剣技で斬り裂かれ、霧散する。


息を切らし、震えるミカサにフジが一瞥を投げる。

「大丈夫か。」

「う、うん……ちょっと、使いすぎただけ。」


「この調子じゃ日没まで持たないな。」フジは肩をすくめる。

その影がゆらりと揺れ、彼の瞳は冷静に光る。

「だが――適応する。それが試験だ。」


彼らはさらに奥へと進んでいった。


森の小道は不気味なほど静かだった。


「この静けさ……仕組まれてる。」スキが低くつぶやく。

「仕組まれてても関係ない。」ユキが頷く。「やるだけ。」


後ろのジャクソンは落ち着いた表情で手を開閉していた。

「心配するな。血が流れれば――俺のものだ。」


金属の悲鳴。藪から鋼鉄と樹皮でできたゴリラ型の構造体が現れる。

地面を叩き、震動が走る。


「重戦力かよ……」スキがうめく。

「なら踊ろう。」ユキが返す。


双子は疾風のごとく駆け出す。

一体の足をユキが切り裂き、スキが背後から肘を叩き込む。

巨体が倒れ込む。


ジャクソンはその場を動かず、手のひらを裂き、血を鞭のように操る。

「クリムゾン・バインド。」

血が鋼を貫き、構造体を縛り裂いた。


「出力が……大きすぎるな。」彼は舌打ちする。


「抑えろ!」スキが叫ぶ。


だがジャクソンはさらに血を刃へと変え、ゴリラを両断した。

最後の一体が煙を散らして倒れると、静寂が戻った。


ユキとスキは肩を並べ、平然と立つ。

ジャクソンは血を拭い、闇の笑みを浮かべた。

「……まあ、準備運動だな。」


ユキが腕を組む。「消耗が早すぎる。」

「燃え尽きた方がマシだ……無力よりはな。」


双子は目を合わせただけで何も言わず、三人はさらに森の奥へ進んでいった。


作者コメント(幹生)


霧でできた狼。弱点を突かないと消えない化け物。三分おきにパニックする桜。何でもないふりをするヒラ。――まあ、いつも通りだ。


だが、データは取れた。

音に弱い。物理で止め。覚えておけ。

(どうせ読者は戦うわけじゃないがな。)


(桜:「なにそれ、説明書みたい! やる気ゼロ!」)

(ヒカル:「幹生は説明書だろ。」)


……無視する。


この試験が面白いと思ったなら、コメントとフォローをしておけ。

さもないと桜がまた俺に作者コメントを書かせる。――それだけは勘弁してほしい。



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