ネオニッポンの亡霊達:十年の調査
五年目の後半、クラル王は河村雄斗の影響力がいかに深く広範囲に及んでいるかを痛感していた。
「税収も雇用も増加している。我々としては、これ以上何を求めるというのか」
市長の言葉は的を射ていた。統計上、シルバーポートの経済指標は全て改善していた。失業率は過去最低、税収は過去最高、新規事業の登録数も急増していた。
しかし、クラル王は数字の裏に隠された真実を知っていた。
「雇用が増えているのは確かだが……」
クラル王は自分なりの調査結果をまとめていた。新規雇用の大部分は、河村の関連企業によるものだった。そして、その労働条件は実質的に奴隷制に近かった。
「労働者は法的には『従業員』だが、実態は違う」
クラル王は、ある元労働者から聞いた証言を思い出していた。
「最初は普通の仕事だと思ってました」
その男性——トムは、震える声で語っていた。
「時給も悪くないし、住居も会社が用意してくれるって言うから」
トムは半年前まで、河村の関連企業で働いていた。港湾作業員として雇用され、最初の数ヶ月は順調だった。
「でも、だんだんおかしくなってきたんです」
「どのように?」
「労働時間がどんどん長くなって。最初は8時間だったのが、10時間、12時間、最後は16時間働かされました」
「抗議はしなかったのですか?」
「しました」トムの目に恐怖が宿った。「でも、『契約違反だ』って言われて」
「契約違反?」
「住居費や食費、作業道具代なんかが、給料から差し引かれてたんです。気がついたら、給料よりも控除額の方が多くなってて」
クラル王は愕然とした。これは典型的な債務奴隷制度だった。
「つまり、働けば働くほど借金が増える仕組みになってたんです」トムは続けた。「で、『借金を返すまで辞められない』って言われて」
「どうやって逃げ出したのですか?」
「夜中にこっそり逃げました」トムは震え声になった。「でも、今でも追われてるような気がして……」
このような証言を、クラル王は数十件集めていた。しかし、問題は証拠が不十分なことだった。
労働契約書は表面的には合法で、労働者たちも最初は自発的に署名している。債務の発生も、契約上は正当な手続きを踏んでいる。
「法の抜け穴を完璧に突いている」
クラル王は河村の狡猾さに舌を巻いた。暴力や明らかな違法行為に頼らず、法的な手段だけで人々を支配していた。
六年目に入ると、河村の投資詐欺はさらに巧妙になっていた。
「シルバーマン様、新しい投資機会のご案内です」
ハロルドが持参したのは、「保険投資商品」の案内だった。
「保険投資商品?」
「はい。投資元本が保証されているうえに、年利15%の利回りが期待できます」
クラル王は資料を詳しく調べた。確かに、元本保証という安全性と、高い利回りを両立した魅力的な商品だった。
「保険会社は?」
「新設のシルバーポート総合保険会社です」ハロルドは胸を張った。「弊社の関連企業として設立されました」
クラル王は内心で警戒した。河村は今度は保険業界にまで進出していた。
「しかし、保険業は厳格な規制があるはずですが……」
「もちろんです」ハロルドは微笑んだ。「当局の認可も正式に取得しております」
これが最も恐ろしい部分だった。河村は当局をも懐柔していた可能性があった。
クラル王は、保険監督庁に直接確認を取った。
「シルバーポート総合保険会社?ええ、正式に認可された保険会社です」
担当官の回答は明確だった。
「設立時の審査も、適切に行われました。特に問題はありません」
しかし、クラル王が詳しく調べると、おかしな点が見つかった。
保険会社の資本金は確かに法定額を満たしていたが、その資金の出所が不明だった。また、保険数理士や投資運用担当者など、重要なポストの人材が全て河村の関連企業からの出向者だった。
「実質的には、河村の傀儡会社だ」
しかし、法的には何の問題もない。書類上は全て適正で、当局の審査も通過していた。
七年目になると、河村の影響力は政界にまで及んでいることが明らかになった。
「来月の市長選挙、面白いことになりそうですね」
ある商人がクラル王に話しかけてきた。
「どういうことですか?」
「現職市長に対抗して、若い候補者が立候補するらしいです」商人は興味深そうに言った。「ゴールデン・トレーディング商会が支援してるって噂です」
クラル王は衝撃を受けた。河村は政治にまで手を伸ばしていた。
「その候補者とは?」
「マーティン・ロックウェルって人です」商人は資料を見せてくれた。「元銀行員で、経済政策に詳しいとか」
クラル王は候補者の経歴を調べた。確かに優秀な人物のようだったが、職歴を詳しく見ると、河村の関連企業での勤務経験があった。
「完全に河村の息がかかった候補者だ」
選挙戦は激しいものとなった。現職市長は実績を訴え、ロックウェル候補は「新しい経済政策」を掲げた。
「シルバーポートをさらなる発展に導きます」
ロックウェルの演説は説得力があった。
「既存の枠組みにとらわれない、革新的な経済政策を実行します」
しかし、クラル王にはその「革新的な政策」の正体が見えていた。河村の経済支配をさらに強化する政策だった。
選挙結果は、ロックウェルの勝利だった。
「新市長誕生!」
街中が祝賀ムードに包まれた。多くの市民は、新しいリーダーシップに期待を寄せていた。
しかし、クラル王は絶望的な気分だった。これで河村の支配は、法的にも政治的にも完璧なものとなった。
新市長の下で、シルバーポートの「発展」はさらに加速した。
「外国投資誘致政策」の名の下に、規制緩和が進められた。労働法も「柔軟化」され、実質的に労働者の権利が削減された。
「経済の自由化により、更なる発展を目指します」
ロックウェル市長の政策説明は、表面的には合理的だった。
しかし、その恩恵を受けるのは河村の関連企業だけで、一般市民の生活は悪化していた。
「最近、生活が苦しくなった」
街の人々からそんな声を聞くことが多くなった。
「仕事はあるんだけど、給料が安くて……」
「物価は上がってるのに、賃金は据え置きだ」
河村は巧妙に経済を操作し、労働者から搾取する仕組みを完成させていた。
クラル王は、この状況を打開する方法を模索していたが、有効な手段が見つからなかった。
「法的手段では限界がある」
河村の行為は、技術的には合法だった。倫理的には問題があっても、法的には処罰できない。
「暴力的手段も効果がない」
河村本人の居場所が分からない以上、直接的な攻撃も不可能だった。
「経済的手段で対抗するには……」
クラル王は自分なりに経済活動を通じて河村に対抗することを考えた。しかし、河村の経済ネットワークは既に巨大すぎて、個人の力では太刀打ちできなかった。
八年目の終わりに、クラル王は深い挫折感に支配されていた。
九年目に入ったある日、クラル王に思わぬ転機が訪れた。
「シルバーマン様、お久しぶりです」
現れたのは、以前投資から撤退した商人——エドワード・ブラウンだった。
「ブラウンさん!お元気でしたか?」
クラル王は驚いた。エドワードは三年前に河村の投資から手を引き、その後商売がうまくいかなくなって街を去ったと聞いていた。
「まあ、なんとか生きてます」エドワードは苦笑いした。「実は、お話ししたいことがあって戻ってきました」
「お話し?」
「ええ。ゴールデン・トレーディングの件です」エドワードの表情が真剣になった。「あなたも、薄々感づいてるんじゃないですか?」
クラル王は内心で驚いた。エドワードは何かを知っているようだった。
「どこか、人のいない場所で話しませんか?」
二人は港の外れにある古い倉庫で落ち合った。
「実は」エドワードが口を開いた。「私は諦めてませんでした」
「諦めてない?」
「ゴールデン・トレーディングの正体を暴くことをです」エドワードの目に強い意志が宿っていた。「この三年間、私なりに調査を続けてきました」
エドワードは分厚い資料を取り出した。
「これを見てください」
資料には、河村の組織の詳細な関係図が描かれていた。クラル王が把握していたよりもはるかに複雑で巨大なネットワークだった。
「どうやってこれを?」
「私一人じゃありません」エドワードは言った。「同じように被害を受けた商人たちが、密かに情報を共有してるんです」
「被害を受けた商人たち?」
「ええ。表向きは商売に失敗して街を去った人たちです」エドワードは続けた。「でも、実際は河村に潰された人たちなんです」
クラル王は、事態の深刻さを改めて認識した。
「何人くらいいるのですか?」
「50人以上います」エドワードは資料をめくった。「皆、それぞれ違う時期に、違う手法でやられました」
資料を見ると、河村の手法は時代と共に進化していることが分かった。
初期は単純な投資詐欺だったが、徐々に債務奴隷制度、価格操作、政治的圧力など、様々な手法を組み合わせるようになっていた。
「そして、これが最も重要な発見です」
エドワードは別の資料を取り出した。
「河村雄斗の居場所です」
クラル王は息を呑んだ。
「本当ですか?」
「確証はありませんが、有力な情報があります」エドワードは指差した。「『黄金の館』と呼ばれる秘密の邸宅です」
資料には、シルバーポート郊外の詳細な地図が描かれていた。森の奥深くに、巨大な邸宅の位置が示されている。
「ここに河村がいると?」
「おそらく」エドワードは頷いた。「複数の情報源から、同じ場所の名前が出てきました」
「しかし、なぜ今まで見つからなかったのでしょう?」
「厳重に秘匿されているからです」エドワードは説明した。「邸宅周辺は私有地で、立ち入り禁止です。警備も厳重で、近づくことすら困難です」
クラル王は考え込んだ。ついに河村の居場所が判明したかもしれない。しかし、それでも問題は残っていた。
「仮に河村を見つけたとしても、法的に処罰する証拠がありません」
「それについても、実は……」エドワードは別の資料を取り出した。「決定的な証拠を掴みました」
「決定的な証拠?」
「河村の組織内部の文書です」エドワードの目が輝いた。「組織の真の構造、資金の流れ、そして……奴隷貿易の実態を示す資料です」
クラル王は驚愕した。
「どうやって入手したのですか?」
「内部協力者がいるんです」エドワードは声を潜めた。「河村の組織の中にも、彼のやり方に疑問を持つ人がいます」
その夜、エドワードの案内で、クラル王は内部協力者と会った。
現れたのは、30代の女性だった。ゴールデン・トレーディング商会の経理部門で働いているらしい。
「私、アリシア・スミスと申します」
彼女は緊張していたが、強い意志を感じさせる目をしていた。
「なぜ、内部情報を提供してくださるのですか?」
クラル王は率直に尋ねた。
「最初は普通の仕事だと思ってました」アリシアは悲しそうに言った。「でも、働いているうちに、会社の実態が見えてきたんです」
「実態とは?」
「人身売買です」アリシアの声が震えた。「表向きは人材派遣会社ですが、実際は奴隷を売買してるんです」
アリシアは複数の帳簿を取り出した。
「これが証拠です」
帳簿を見ると、「人材」が商品として扱われていることが明確に記載されていた。価格、在庫数、売上高など、人間を物として扱う記録が延々と続いていた。
「これは……」
クラル王は言葉を失った。想像以上に悪質な内容だった。
「そして、これが組織の真の構造図です」
アリシアが示した資料には、河村を頂点とする巨大な犯罪組織の全貌が描かれていた。
「河村は、複数の身分を使い分けています」アリシアは説明した。「表の顔として『経営コンサルタント』、裏の顔として『組織のボス』、そして時々『ミスター・K』として現れます」
「やはり、ミスター・Kは河村本人だったのですね」
「はい。でも、最近はほとんど姿を現しません」アリシアは続けた。「指示は全て電子メールか、信頼できる部下を通じて行われます」
「その信頼できる部下とは?」
「何人かいますが、最も重要なのは『ナンバー2』と呼ばれる人物です」アリシアは声を潜めた。「この人だけが、河村の本当の居場所を知ってると言われています」
「ナンバー2の正体は?」
「分かりません」アリシアは首を振った。「会ったことがある人も、ほとんどいません」
しかし、アリシアの情報により、クラル王は河村の組織について決定的な理解を得ることができた。
アリシアからの情報を基に、クラル王はさらに詳しい調査を行った。
そして、ついに重大な発見をした。
「河村の組織は、単なる犯罪組織ではない」
クラル王は一人で分析結果をまとめていた。
「これは、経済システム全体を支配するための巧妙な仕組みだ」
河村の最終目標は、単にお金を稼ぐことではなかった。経済システム全体を支配し、人々を完全にコントロールすることだった。
奴隷貿易は手段の一つに過ぎず、真の目的は「経済による完全支配」だった。
「投資詐欺で資金を集め、それを使って企業を買収する」
「買収した企業で労働者を債務奴隷化し、安価な労働力を確保する」
「安価な労働力により価格競争で勝利し、市場を独占する」
「市場独占により価格を操作し、さらなる利益を得る」
「その利益で政治家を買収し、法制度を自分に有利に変える」
「法制度の変更により、自分の行為を合法化する」
これが河村の戦略の全体像だった。
「完璧すぎる計画だ」
クラル王は河村の頭脳に戦慄した。これほど綿密で長期的な計画を、17歳の少年が考え出したとは信じがたかった。
「悪魔の知識か……」
マモンから授かった知識が、河村をこれほどの戦略家に変えたのだろう。
しかし、同時にクラル王は希望も見出していた。
「完璧な計画には、必ず弱点がある」
どれほど巧妙な仕組みでも、それを支える人間がいる。そして人間である以上、必ず弱点があるはずだった。
調査を始めてから十年が経過した。
クラル王は58歳になっていた。長年の潜入捜査により、彼の外見も変化していた。「マックス・シルバーマン」として生活を続けるうちに、商人らしい風貌が自然に身についていた。
しかし、内面の決意は全く衰えていなかった。
「今年こそは、決着をつける」
クラル王は十年間の調査結果を総括していた。河村雄斗の組織、手法、そして弱点について、ほぼ完全に把握していた。
エドワード・ブラウンとアリシア・スミスを中心とする「反河村同盟」も、50人を超える規模に成長していた。被害者たちの証言、内部文書、そして決定的な証拠が揃っていた。
「法的手段、経済的手段、そして最後に物理的手段」
クラル王は三段階の作戦を立てていた。
まず、法的手段で河村の組織を攻撃する。アリシアが持ち出した内部文書を使い、当局に告発する。
次に、経済的手段で組織を混乱させる。反河村同盟の協力により、河村の取引先や投資家に真実を暴露し、資金源を断つ。
最後に、それでも解決しない場合は、クラル王自身が直接河村と対峙する。
「しかし、問題は河村の居場所だ」
「黄金の館」の存在は確認できたが、そこに河村がいるという確証はなかった。十年間で数回、館の周辺を偵察したが、厳重な警備に阻まれて内部の様子は分からなかった。
「まずは、ナンバー2を見つけることから始めよう」
クラル王は、ナンバー2の正体を突き止めることに集中した。この人物を見つけることができれば、河村の真の居場所が判明するはずだった。
アリシアの協力により、クラル王はナンバー2についての手がかりを得ていた。
「月に一度、極秘の会議があります」
アリシアは説明した。
「参加者は幹部の中でも限られた人だけ。そして、その会議にナンバー2が現れると言われています」
「会議の場所は?」
「毎回変わります」アリシアは困ったような表情を見せた。「前日にしか通知されないんです」
「次の会議はいつですか?」
「来週の予定です」
クラル王は決意した。その会議に潜入し、ナンバー2の正体を突き止める。
会議の前日、アリシアから連絡が入った。
「明日の会議は、『ブルー・ムーン・ホテル』の最上階で行われます」
ブルー・ムーン・ホテルは、シルバーポートでも高級なホテルの一つだった。最上階には、VIP専用の会議室があった。
「警備は?」
「厳重です」アリシアは心配そうに言った。「ホテルの従業員も、その日は全員河村の関係者に置き換えられます」
クラル王は潜入方法を考えた。正面から入るのは不可能だった。
「ホテルの構造図はありますか?」
「あります」アリシアは資料を取り出した。「でも、最上階に上がるエレベーターは特別仕様で、専用のカードキーが必要です」
「カードキーは?」
「幹部だけが持ってます」
クラル王は別の方法を模索した。
「非常階段は?」
「最上階の2階下で止まってます」アリシアは図面を指差した。「そこから上は、エレベーターでしかアクセスできません」
しかし、クラル王には豊穣神としての力があった。
「なんとかなるだろう」
会議当日の夜、クラル王はホテルに向かった。深夜に建物の外壁を登り、最上階に直接侵入する計画だった。
ホテルの外壁は石造りで、登攀は困難だった。しかし、豊穣神の身体能力により、クラル王は音もなく壁を登っていく。
最上階の窓に到達すると、中の様子を覗いた。
広い会議室に、約20名の男女が集まっていた。全員がスーツを着用し、厳粛な雰囲気で会議を進めている。
「これが河村の幹部たちか」
クラル王は一人一人の顔を記憶した。その中に、見覚えのある顔があった。
「ハロルド・グレイ……」
クラル王が長年やり取りしてきた営業部長も参加していた。しかし、今夜の彼は普段とは全く違う表情をしていた。冷酷で、計算高い表情だった。
会議は英語で行われていたが、時々聞き慣れない言語が混じった。
「あれは……日本語か?」
会議の途中で、特別な参加者が現れた。黒いフードを被った人物で、顔は見えなかった。しかし、その人物が話し始めると、明らかに日本語だった。
「これが、ナンバー2か……」
クラル王は集中して聞き耳を立てた。しかし、距離があるため、具体的な内容は聞き取れなかった。
会議は2時間ほど続いた。その間、クラル王は窓の外で息を殺して観察を続けた。
会議が終わると、参加者たちは順次退出していく。しかし、ナンバー2は最後まで残っていた。
そして、最後に一人になったとき、ナンバー2はフードを脱いだ。
その瞬間、クラル王は衝撃を受けた。
「まさか……」
ナンバー2の正体は、河村雄斗本人だった。
しかし、それは10年前に見た17歳の少年ではなかった。27歳になった河村は、完全に別人のように変貌していた。
髪は銀色に染められ、顔立ちも整形により変化していた。身長も以前より高く見え、体格も引き締まっていた。まるで、別の人種のような外見だった。
「だから見つからなかったのか……」
河村は自分自身を「ナンバー2」として偽装し、組織を運営していた。誰も彼が河村本人だとは気づかなかった。
会議室を出る河村を、クラル王は慎重に追跡した。
河村はホテルを出ると、待機していた黒い馬車に乗り込んだ。馬車は街の外れに向かって走り始めた。
クラル王は屋上から屋上へと飛び移りながら、馬車を追跡した。豊穣神の力により、馬車の速度に遅れることなく追い続けることができた。
やがて、馬車は森の中の道に入った。そして、深い森の奥で停止した。
そこにあったのは、まさに「黄金の館」だった。
巨大な西洋風の邸宅で、文字通り金色に輝いていた。外壁は金箔で覆われ、月光を受けて幻想的に光っていた。
「ついに……見つけた」
クラル王は10年間の調査の集大成を迎えようとしていた。
しかし、同時に最大の試練も待っていた。河村雄斗との最終対決が、間もなく始まる。