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冒険者適性Aランク でも俺、鍛冶屋になります  作者: むひ
クラルの章

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偽りの理想郷 ネオニッポン:再潜入調査と困惑

翌日:グランベルク王宮


「レイモンド、ネオニッポンで何か大きな変化が起きているようですね」


クラル王が執務室でレイモンドを呼び出していた。


「はい、陛下」


レイモンドが報告書を開いた。


「昨夜、ネオニッポン上空に7つの星が現れました」


「そして、各地で不可解な現象が報告されています」


「前回の調査で感じたのですが...」


レイモンドが率直に述べた。


「あの国の技術と文化は、我々の理解を超えています」


「一人で調査するには限界があります」


クラル王が頷いた。


「分かりました。今度は本格的な調査団を編成しましょう」


「ただし、条件があります」


「前回、あなたが3日で魅了されかけたことを考えると...」


クラル王が深刻な表情を見せた。


「並大抵の精神力では、ネオニッポンの誘惑に勝てません」


選別基準

- 10年以上の実戦経験

- 家族への強い愛情と責任感

- 信仰心または強固な価値観

- 誘惑に対する高い抵抗力

- 冷静な判断力と分析能力


「我が国で最も意志の強い者たちを選抜します」


1週間後:選抜結果


厳格な審査により、5名の精鋭が選ばれた。


調査団メンバー


1. レイモンド・アイアンウィル(隊長)

- 年齢:45歳

- 地位:神聖近衛隊隊長

- 特徴:鋼鉄の意志、前回経験済み


2. マーガレット・ステイブル(分析官)

- 年齢:38歳

- 地位:統計局長

- 特徴:論理的思考、データ分析能力


3. ガルディアン・フェイス(戦士)

- 年齢:42歳

- 地位:古参騎士

- 特徴:3人の子を持つ父親、家族愛が強い


4. セラフィナ・ピュア(僧侶)

- 年齢:35歳

- 地位:神殿長

- 特徴:深い信仰心、清らかな心


5. オブザーバー・サイレント(諜報員)

- 年齢:40歳

- 地位:情報部長

- 特徴:感情を表に出さない、冷徹な判断力


出発1週間前:王宮訓練場


「今回の任務では、これまでにない誘惑に直面します」


レイモンドが部下たちに説明していた。


「相手は我々の欲望そのものを武器にしてきます」


訓練内容

- 幻惑魔法への抵抗訓練

- 精神集中力の強化

- 家族の写真を常に携帯し、初心を忘れない

- 互いの監視体制の確立


「もし誰かが誘惑に負けそうになったら...」


レイモンドが厳しい表情で続けた。


「遠慮なく物理的に制止してください」


「任務完了まで、個人の自由はありません」


特殊装備

- 精神防御の魔法具

- 緊急脱出用の転移石

- 記録用の魔法クリスタル

- 偽装用の商人服


資金

- 現金:100万ドル相当

- 貴金属:金貨1,000枚

- 宝石類:ダイヤモンド等


「あの国では、金銭が重要な武器になります」


クラル王が説明した。


「十分な資金を用意しました」


2週間後:ネオニッポン国境**


「前回より...さらに発展している」


レイモンドが国境の街並みを見て呟いた。


調査団一同が、その変化に驚愕していた。


前回との違い

- 建物が20%増加

- 新しい巨大施設が7つ建設されている

- 街の雰囲気が何となく緊張している

- 住民たちが7つのグループに分かれているように見える


「あれは何でしょうか?」


マーガレットが街の各所に設置された看板を指差した。


街中に溢れる謎の看板


『ソウルコイン取引所』

『MirrorMe体験センター』

『ペイン・リンク格闘場』

『魂代理稼働AI』

『光の回帰信者募集』

『リフレッシュハート・センター』

『七つの選択、あなたはどちら?』


「さっぱり意味が分からん」


ガルディアンが困惑していた。


「ソウルコイン?ペイン・リンク?」


「魂を取引するということでしょうか?」


セラフィナが不安そうに尋ねた。


「だとしたら、恐ろしいことです」


街角での情報収集


「すみません、少しお聞きしたいことが」


オブザーバーが通りがかりの住民に声をかけた。


「ああ、観光客の方ですね」


住民が親切に応じた。


「何でもお答えしますよ」


「あの看板の『ソウルコイン』とは何ですか?」


「ソウルコイン?ああ、快楽の新しい通貨ですよ」


住民が当然のように答えた。


「快楽を数値化して、取引できるんです」


「は?」


オブザーバーが困惑した。


「快楽を取引?」


別の住民との会話


「『MirrorMe』というのは?」


マーガレットが尋ねた。


「人気者の魂を集めて、理想の自分になれるサービスです」


住民が嬉しそうに説明した。


「私も先月、女優の魂を3つ購入して、すごく美しくなりました」


「魂を...購入?」


マーガレットが理解できずにいた。


「『光の回帰』とは何でしょう?」


セラフィナが宗教的な興味から尋ねた。


「ルシファー様の教えです」


住民が目を輝かせて答えた。


「自分の魂を完全に焼き尽くして、神のように生まれ変われるんです」


「ルシファー?」


セラフィナが青ざめた。


「それは悪魔の名前では...」


「悪魔?そんなことありませんよ」


住民が笑った。


「ルシファー様は光の導師です」


宿屋の一室


「全く理解できません」


レイモンドが頭を抱えていた。


「前回来た時と、根本的に何かが変わっている」


「データを整理しましたが...」


マーガレットが資料を広げた。


「7つの異なるグループが存在しているようです」


「それぞれが独自のサービスを提供している」


「しかし、その内容が我々の常識を超えています」


1. 魂の売買- 人格や記憶を商品として取引

2. 快楽の通貨化- 感情や体験を数値化して投資

3. 痛みの快楽変換- 苦痛を喜びに変える技術

4. 完全自動化生活- 魂だけ快楽を享受、肉体はAI制御

5. 魂の破壊と再生- 自我を消して新しい人格を構築

6. 他者の人生体験- 異なる性別や年齢の感覚を経験

7. 嫉妬による平等化- 人気者の魂を奪って分配


「隊長、質問があります」


ガルディアンが手を挙げた。


「魂って、売れるものなんですか?」


「私にも分からん」


レイモンドが正直に答えた。


「我々の世界では聞いたことがない」


「痛みが快楽になるって、どういうことですか?」


ガルディアンが続けた。


「殴られて嬉しいってことですか?」


「恐らく...そうなのだろう」


レイモンドも確信が持てなかった。


「ルシファーを光の導師と呼ぶなど...」


セラフィナが震えていた。


「神への冒涜です」


「しかし、住民たちは本気でそう信じている」


オブザーバーが冷静に分析した。


「彼らにとって、それが真実なのです」


2日目の調査で判明


「各グループが対立しているようです」


オブザーバーが報告した。


「街の至る所で小競り合いが起きています」


- ソウルコイン派 vs 光の回帰派(価値観の違い)

- MirrorMe派 vs ペイン・リンク派(快楽の手法論争)

- 自動化派 vs 全グループ(労働観の違い)

- 各派閥の施設前でのデモや抗議活動


「しかし、彼らが何について争っているのか...」


レイモンドが困惑した。


「正直、さっぱり分からない」


3日目の会議


「このままでは、有効な情報を持ち帰れません」


マーガレットが焦りを見せていた。


「相手の技術レベルが我々を遥かに超えています」


「魂を扱う技術なんて、我々には理解不可能です」


レイモンドの判断


「可能な限り、表面的な情報を収集しましょう」


「詳細は理解できなくても、概要だけでも掴めれば」


「陛下に報告する材料にはなるでしょう」


「どのサービスが一番人気ですか?」


「今、何人くらいの人がこの街にいますか?」


「一番偉い人は誰ですか?」


「外国から来る人は多いですか?」


このような基本的な質問でも、返ってくる答えは理解困難だった。


「一番人気?うーん、最近は分裂してるからなあ」


「ルシファー様派が一番勢いがあるけど、マモン様派も儲かってるし」


「アスモデウス様は昔ほどの力はないかな」


住民が語る権力者の名前(ルシファー、マモン、アスモデウス等)は、すべて悪魔の名前だった。


しかし、住民たちはそれを当然のこととして受け入れている。


調査団には、その背景にある真実を理解する術がなかった。


4日目:最終会議


「これ以上の調査は危険です」


レイモンドが最終判断を下した。


「我々には理解できない世界が広がっている」


「下手に深入りすれば、前回のように誘惑に負ける可能性があります」


収集できた情報


- ネオニッポンで内部分裂が発生

- 7つの勢力が対立している

- 住民たちは悪魔と思われる存在を崇拝

- 魂に関する高度な技術が存在

- 快楽の概念が我々の常識を超えている


「詳細は不明ですが、概要は掴めました」


マーガレットが総括した。


「少なくとも、一枚岩ではなくなっているのは確実です」


「明日の朝一番で帰国します」


レイモンドが指示した。


「これ以上の滞在は危険です」


「そして、陛下には正直に報告しましょう」


「我々の理解を超える技術と文化が存在することを」


調査団は、多くの疑問を抱えたまま、グランベルクへの帰路についた。


彼らが持ち帰る情報は断片的だったが、ネオニッポンの脅威がより複雑で理解困難なものに変化していることは、確実に伝わることになる。


しかし、その真の恐ろしさを、グランベルク王国の誰も理解することはできなかった。

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