偽りの理想郷 ネオニッポン:魂の交換と老王の悲劇
ネオニッポンの自由な環境により、これまでにない愛の形が生まれ始めていた。
「翔太、君といると心が安らぐ」
18歳の青年、佐藤健一が同級生の田中翔太に告白していた。
「僕も同じ気持ちだ、健一」
翔太が照れながら答えた。
「でも、美月のことも愛してるし...」
「それでいいじゃないか」
健一が微笑んだ。
「愛に制限なんてないって、先生たちも言ってたし」
「桜ちゃん、あなたと一緒にいると本当に幸せ」
美月の親友、小林桜が山田花音に手を握られていた。
「私も...花音ちゃんといると、特別な気持ちになる」
桜が頬を染めながら答えた。
「翔太君も大切だけど、花音ちゃんとの時間も大切にしたい」
- 男性同性愛者:全体の約8%
- 女性同性愛者:全体の約12%
- バイセクシャル:全体の約30%
- ヘテロセクシャル:全体の約50%
「多様性こそが、愛の真の姿です」
エンチャントレスが生徒たちに説明していた。
「どんな愛の形も、すべて美しいものです」
「次は、これまでにない画期的なサービスを開始します」
アスモデウスが悪魔会議で発表した。
「『ハートスワップサービス』です」
「どのようなサービスでしょうか?」
ベリアルが興味深そうに尋ねた。
「魂の一時的交換です」
アスモデウスが詳細を説明した。
ハートスワップの仕組み
- 期限を決めた魂の交換(1日〜1年)
- 完全な合意に基づく実施
- 相手の身体と記憶を一時的に共有
- 元の身体への完全復帰保証
「つまり、他者の人生を実際に体験できるのです」
1週間後:ハートスワップセンター開設
「いらっしゃいませ」
サキュバス・カウンセラーが来客を迎えた。
「本日はどのような体験をご希望ですか?」
人気の交換パターン
男性→女性体験
- 「女性の感覚を知りたい」
- 「出産を体験してみたい」
- 「女性の快感を味わいたい」
女性→男性体験
- 「勃起の感覚を経験したい」
- 「男性の力強さを感じたい」
- 「精通の瞬間を体験したい」
若者→高齢者体験
- 「人生の重みを知りたい」
- 「経験豊富な感覚を味わいたい」
高齢者→若者体験
- 「若さを再び味わいたい」
- 「青春をもう一度体験したい」
妊娠・出産の代替サービス
最も人気が高かったのは、妊娠・出産関連のサービスだった。
事例1:代理妊娠
「私、嘔吐恐怖症で妊娠できないんです」
25歳の女性、田中美咲が相談していた。
「でも、夫の子供は欲しくて...」
「承知いたしました」
カウンセラーが解決策を提示した。
「妊娠期間中、代理の方と魂を交換いたします」
代理妊娠のプロセス
1. 美咲の身体で受精・着床
2. 妊娠判明後、代理女性と魂交換
3. 代理女性が美咲の身体で妊娠期間を過ごす
4. 出産後、魂を元に戻す
5. 美咲が自分の子供を抱く
事例2:男性の出産体験
「僕、妻の出産がどれほど大変か知りたいんです」
28歳の男性、佐藤大輔が申し込んだ。
「妻が2人目を妊娠中なので、代わりに僕が出産したいです」
出産体験のプロセス
1. 妊娠9ヶ月の妻と魂交換
2. 大輔が妻の身体で出産を体験
3. 陣痛から分娩まで完全体験
4. 出産直後、魂を元に戻す
「信じられない...こんなに大変だったなんて」
出産を終えた大輔(魂)が涙を流していた。
「妻への感謝が何倍にもなりました」
1ヶ月後の利用状況
ハートスワップサービスは、想像以上に多様な用途で利用された。
珍しい交換希望
「不自由な方の感覚を体験したい」
「天才の思考回路を体験したい」
「アーティストの感性を味わいたい」
「スポーツ選手の身体能力を感じたい」
カップル間の交換
「お互いの感覚を理解するため」として、恋人同士での交換も人気だった。
「翔太君の気持ちがよく分かった」
美月が1日間の交換後に感想を述べた。
「男性って、こんなふうに感じてるのね」
「僕も美月の繊細さがよく理解できた」
翔太も同じように感動していた。
「女性の感受性って、本当に豊かなんだね」
6ヶ月後:旧王国
80歳を超えた国王ヘンリー・アイアンクラウン八世は、生き先短い人生を前に決断していた。
「もう長くはあるまい」
ヘンリーが側近に告げた。
「最後に、世界を見て回りたい」
「陛下、お身体が...」
側近が心配したが、ヘンリーは聞き入れなかった。
「構わん。死ぬなら、外の世界で死にたい」
ヘンリーは精鋭護衛5名と共に旅に出た。
「陛下、最初はどちらへ?」
護衛隊長が尋ねた。
「最近話題になっている『ネオニッポン』とやらを見てみたい」
ヘンリーが答えた。
「快楽の国だとか言われているらしいが、どのようなものか」
護衛たちは、ネオニッポンがどれほど危険な場所か知らなかった。
「こ、これは...」
ヘンリーが国境を越えた瞬間、巨大な都市群に圧倒された。
「わしの国とは、まるで別世界だ」
護衛たちも同様に驚愕していた。
「陛下、この国は...なんと進んでいるのでしょう」
1日目:観光
「いらっしゃいませ、国王陛下」
サキュバス・ガイドが丁寧に出迎えた。
「どちらから来られましたか?」
「旧王国からじゃ」
ヘンリーが答えた。
「それは遠いところから。ごゆっくりお楽しみください」
2日目:カジノ体験
「これは面白い」
ヘンリーがポーカーに興じていた。
「こんな遊びがあるとは知らなんだ」
護衛たちも、それぞれ別のゲームに夢中になっていた。
3日目:高級エンターテイメント
「素晴らしいショーじゃ」
ヘンリーがサキュバスたちの踊りに見とれていた。
「わしの宮廷にも、こんな美女がいたらなあ」
1週間後:完全な依存状態
ヘンリーの目は、完全に娯楽に魅了されていた。
「もっと...もっと刺激的なものはないのか?」
ヘンリーの目がギラギラと輝いていた。
「陛下、そろそろ帰国を...」
護衛が提案したが、ヘンリーは聞く耳を持たなかった。
「まだじゃ!まだ体験していないものがある!」
10日目の夜
「あそこは何だ?」
ヘンリーが煌びやかな建物を指差した。
「え、あれは...」
護衛が慌てて答えた。
「娼館です。陛下が行かれるような場所では...」
「娼館?」
ヘンリーの目がさらに輝いた。
「陛下、それは流石に...」
護衛隊長が必死に止めようとした。
「ご高齢でもありますし、お身体に障る可能性が...」
「黙れ!」
ヘンリーが怒鳴った。
「わしは国王だぞ!わしの好きにさせろ!」
護衛たちを振り払い、ヘンリーは娼館へと向かった。
「陛下!」
護衛たちが追いかけたが、ヘンリーは既に館内に消えていた。
「いらっしゃいませ」
最高級サキュバスが出迎えた。
「どのようなお相手をご希望ですか?」
「わしの...わしの亡き妻を...」
ヘンリーが震え声で答えた。
「アンリエッタという名前で...若い頃の姿で...」
「承知いたしました」
サキュバスが変身を開始した。
数秒後、そこには30歳頃の美しいアンリエッタの姿があった。
「あなた...お疲れ様でした」
完璧に再現されたアンリエッタが微笑んだ。
「アンリエッタァァァァァァァァ!」
ヘンリーが狂ったように叫び、妻(の姿をしたサキュバス)に抱きついた。
1時間後
ヘンリーは人生で最高の快楽に酔いしれていた。
「もっと...もっとじゃ...」
しかし、まだ満足しなかった。
「今度は...娘の...エリザベスの姿で...」
30分後
エリザベス王妃の若い姿に変身したサキュバスとの行為の最中、ヘンリーに異変が起きた。
「うっ...うああああああ!」
ヘンリーが白目を剥いて絶頂した瞬間、心臓が止まった。
「陛下?陛下!」
サキュバスが慌てて蘇生を試みたが、時既に遅し。
ヘンリー・アイアンクラウン八世は、腹上死を遂げていた。
翌朝:娼館ロビー
「申し訳ございませんでした」
娼館の支配人(悪魔)が深々と頭を下げた。
「このような結果になってしまい...」
護衛たちは茫然としていた。
「陛下が...まさか...」
「当館でも、これほど高齢のお客様は初めてで...」
支配人が弁解した。
「医療チームも常駐しているのですが...」
ホテルの一室にて
「隊長、これをどう報告すれば...」
部下が困惑していた。
「まさか『娼館で腹上死』なんて報告できません」
「そうだな...」
隊長も頭を抱えていた。
「陛下の名誉を考えると...」
「陛下は旅行中、急性心不全により崩御されました」
護衛隊長が公式発表を行った。
「最期まで、旅を楽しんでおられました」
「苦痛もなく、安らかな最期だったと聞いております」
護衛たちは真実を墓場まで持っていくことを誓った。
「ヘンリー八世陛下が...」
クラル王が深い悲しみを表した。
「長年の友人でした」
「葬儀には必ず参列いたします」
クラル王とエリザベス王妃、アレクサンダー王子が参列していた。
「父上は、最期まで国のことを考えておられました」
現国王(ヘンリーの息子)が挨拶した。
「旅先で倒れたと聞き、無念でなりません」
クラル王が弔辞を読み上げた。
「ヘンリー八世陛下は、真の君主でした」
「その死を深く悼み、心からご冥福をお祈りいたします」
しかし、クラル王たちは知らなかった。
ヘンリー八世が、ネオニッポンの快楽に溺れて死んだことを。