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冒険者適性Aランク でも俺、鍛冶屋になります  作者: むひ
アシェルの章

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エーテルの時代の幕開け40:白日の下に――公然たる革命の狼煙

# 第四十章:白日の下に――公然たる革命の狼煙


## 運命の日――準備は整った


アシェルの帰還から、三日が過ぎた。


その間――


エーテル解放戦線のアジトは、かつてないほどの緻密な活動と、熱を帯びた議論に満ちていた。


カインは、不眠不休で作業をしていた。


アシェルの新たな理念に基づいた、革命のロードマップを描いていた。


いつ、何を、どうするか。


すべてが、緻密に計画されていた。


エリアーデは、学園システムの弱点を突くための化学的な破壊工作の準備を進めていた。


様々な薬品を調合していた。


それらは、マナ炉を無力化するための、特殊な薬品だった。


ケンシンとタケルは、決戦に備えて、SATUMAの仲間たちと武具の最終調整を行っていた。


木刀を磨いた。


道着を整えた。


心を、整えた。


そして――


運命の日。


グランベルク王立学園が、創立記念を祝う穏やかな休日の朝を迎えた、まさにその時だった。


学園は、平和だった。


いつもと変わらない、朝。


生徒たちは、思い思いに過ごしていた。


ある者は、自習をしていた。


ある者は、訓練をしていた。


ある者は、友人と談笑していた。


誰も――


これから起こることを、知らなかった。


## 声の響き――真実の宣言


「――グランベルク王立学園に集う、全ての生徒、そして教官たちへ」


突如として――


学園のあらゆる場所に設置された魔法拡声器から、凛とした、しかしどこか物悲しい響きを持つ少女の声が、響き渡った。


講義室で自習していた生徒も。


訓練場で汗を流していた騎士候補生も。


職員室で茶を飲んでいた教官たちも。


誰もが、驚いた。


そして――


その声に、耳を傾けた。


「私の名は、アシェル・ヴァーミリオン」


その名前を聞いて――


学園中が、騒然となった。


アシェル・ヴァーミリオン。


あの、テロリストとして指名手配された少女。


「レメディアル・ティアに所属する、一人の生徒です」


声の主が、先日「危険思想を持つテロリスト」として学園から指名手配されたはずの少女であることに気づき、学園内は一瞬にして騒然となった。


「何だ!?」


「アシェル・ヴァーミリオンだって!?」


「どうやって、拡声器を乗っ取ったんだ!?」


生徒たちの声が、飛び交った。


しかし――


アシェルの声は、続いた。


「皆さんが享受しているこの平和と繁栄が、一体、何の犠牲の上に成り立っているのか」


アシェルの声は、静かだった。


しかし、その声には――


深い悲しみが込められていた。


「その真実を知る覚悟は、ありますか?」


## 白日の下に晒される真実――映像の衝撃


次の瞬間――


学園中の魔法拡声器と、貴賓室やラウンジに設置された全てのマナ・スクリーンが、一斉に同じ映像と音声を流し始めた。


それは、解放戦線が命がけで持ち帰った、あの記録クリスタルの内容だった。


スクリーンに――


映像が映し出された。


それは――


壁一面に埋め込まれた、ガラスの棺。


その中に横たわる、生ける屍のような人々。


そして、その一人一人に付けられた、「消耗品」という、冷徹なラベル。


『生体ユニット No. 734:エミリナ・ライトウィング……予測余命:284日』


映像と共に、アシェルの静かな、しかし怒りに震えるナレーションが重なった。


「ここに映っているのは、皆さんと同じように、この学園で学び、夢を追いかけていた生徒たちです」


アシェルの声は、震えていた。


「『優秀な成績で卒業し、社会で奉仕している』と、学園が発表した、私たちの先輩たちです」


「しかし、真実は違います」


アシェルの声が、強くなった。


「彼らは、『社会奉仕』という偽りの名の下に、学園の地下深くへと送られ、その生命エーテルをマナに強制変換され、この学園都市を照らす光の、動力源として、文字通り『搾取』され尽くされているのです!」


その言葉に――


学園中が、静まり返った。


誰もが――


息を呑んでいた。


スクリーンに、学園長オルティウス自らが起草した、あの非人道的な計画書の文面が、大写しにされた。


『……レメディアル・ティアに属する生徒たちは、社会における生産性が低い。彼らを『社会奉仕』の名の下に『生体電池』として活用する……』


その文章を読んで――


学園全体が、水を打ったように静まり返った。


そして、その静寂は、やがて恐怖と、怒りのどよめきへと変わっていった。


「嘘だろ……?」


誰かが、呟いた。


「先輩たちが……電池に……?」


別の誰かが、信じられないという声で言った。


「私たちの使っているマナは、あの人たちの命だったっていうのか……?」


また別の誰かが、恐怖に震える声で言った。


学園中が――


混乱に陥っていた。


## 内部からの告発――良心の目覚め


その、燃え広がる疑念の炎に、油を注ぐ者が現れた。


「……告発は、真実です!」


拡声器から、今度は震える、しかし決意に満ちた青年の声が響いた。


マルクスだった。


彼は、学園長に加担してしまった自らの罪を償うため、解放戦線と連携し、この内部告発の日に、自らの正体を明かすことを決意していたのだ。


「私は、学園長閣下の命令により、アシェル君たちを監視していました!」


マルクスの声は、震えていた。


しかし、それでも――


彼は、真実を語り続けた。


「閣下は、彼女の力を利用するため、バルトール侯爵を使い、彼女の親友の命を盾に取りました!」


「全ては、閣下が描いた、非情な脚本通りだったのです!」


マルクスの内部告発は、あまりにも衝撃的だった。


学園長が――


すべてを、仕組んでいた。


すべてが――


計画通りだった。


さらに、彼の勇気に呼応するように、これまで沈黙を強いられてきた他の良心に目覚めた者たちからの告発が、次々と続いた。


「私も証言します!」


エリアーデ教官が、薬学部の放送室から叫んだ。


「私は、バルトール侯爵に脅迫され、リアン嬢への薬を偽物にすり替えるよう、強要されました!」


エリアーデの声は、力強かった。


もう、恐れていなかった。


「僕も見た!」


ファウンデーション・ティアの一人の生徒が、涙ながらに訴えた。


「学園長は、僕の学費を免除する見返りに、龍人族のドラゴ様たちが、アシェル君を陥れる計画を練っているのを、見て見ぬふりをするよう命じました!」


次々と――


告発の声が上がった。


それは、雪崩のようだった。


一度始まれば、もう止まらない。


学園は、完全な混乱に陥った。


信じていたはずの権威が、その根底から腐敗していたという事実。


自分たちの平和が、仲間たちの犠牲の上に成り立っていたという罪悪感。


生徒たちは、何を信じ、どう行動すれば良いのか分からず、ただ呆然と立ち尽くすばかりだった。


## 独裁者の反撃――力による鎮圧


北塔最上階「観測室」。


学園長オルティウスは、怒りに顔を歪ませ、マナ・スクリーンを睨みつけていた。


「……愚かな」


学園長の声は、低かった。


「自らの手で、パンドラの箱を開けるとはな」


だが、彼の動揺は一瞬だった。


彼は、即座に、最も冷酷で、最も効果的な鎮圧方法を選択した。


学園長は、通信機を手に取った。


そして、命令を下した。


「全警備部隊に通達!」


学園長の声が、警備兵たちの持つ通信機に響き渡った。


「これは、エーテル解放戦線を名乗る、過激派テロリストによる、学園の転覆を狙った情報工作である!」


「首謀者アシェル・ヴァーミリオンは、危険な禁術を用い、生徒たちを洗脳している!」


「直ちに首謀者を捕縛し、抵抗する者は、容赦なく排除せよ!」


彼は、自らが保有する正規軍――学園警備隊と、買収した龍人族のエリート部隊を動員して、この「反乱」を、力で鎮圧しようとしたのだ。


正午。


学園の中央広場に――


重武装した警備ゴーレム五十体と、ドラゴ・シルヴァリオン率いる龍人族のエリート部隊百名が、完全な戦闘態勢で集結した。


その光景は、圧倒的だった。


ゴーレムの巨体。


エリートたちの鋭い眼光。


すべてが――


殺気に満ちていた。


その物々しい光景に、一般生徒たちは恐怖におののき、逃げ惑った。


「逃げろ!」


「戦いが始まる!」


悲鳴が、響いた。


広場の反対側には――


アシェルを先頭に、エーテル解放戦線のメンバーたちが、静かに、しかし毅然として立っていた。


その数は、わずか五十名ほど。


戦力差は、火を見るよりも明らかだった。


「アシェル・ヴァーミリオンよ」


ドラゴが、高みから言い放った。


その声は、傲慢だった。


「貴様は、その甘い理想で、この学園の神聖な秩序を乱した」


「今ここで、その罪を償わせてやる!」


## 狼煙は上がった――革命の開始


「……私たちの罪は」


アシェルは、静かに答えた。


その声は、穏やかだった。


しかし、その声には――


確固たる決意があった。


「……真実を知ろうとしなかったこと」


「そして、仲間が苦しんでいるのを見て見ぬふりをしてきたことだ」


アシェルは、右手をゆっくりと掲げた。


その手のひらに――


黄金色の、温かいエーテルの光が灯った。


それは、美しかった。


まるで、小さな太陽のように。


「だから、もう間違えない」


アシェルの声が、響いた。


「私たちの戦いは、破壊じゃない」


「解放のための戦いだ!」


彼女の言葉を合図に――


広場の周囲の建物の屋上から、ケンシンとタケルを始めとするSATUMAの一団と、地下闘技場の戦士たちが、一斉に姿を現した。


彼らの手には、木刀や、使い古した武器が握られていた。


その数――


百名以上。


予想以上の、戦力だった。


「学園長に告ぐ!」


アシェルの声が、拡声器を通じて、学園全体に響き渡った。


「今すぐ、中央マナ炉を停止し、囚われた全ての人々を解放せよ!」


「さもなければ、我々は、力をもって、その解放を断行する!」


その宣言に――


学園中が、震えた。


アシェルたちの戦いが、もはや秘密作戦ではなく、公然たる革命へと発展した瞬間だった。


学園長は、観測室のスクリーンを見つめ、冷ややかに呟いた。


「……面白い」


その声は、氷のように冷たかった。


「か弱い子羊の群れが、狼に牙を剥くか」


「よかろう」


「その、取るに足らない反逆の意志ごと、根こそぎ踏み潰してくれるわ」


中央広場で――


ドラゴが、右手を振り下ろした。


「――総員、攻撃開始ィッ!」


その瞬間――


龍人族部隊が、魔法を放った。


色とりどりの破壊魔法の光。


炎、氷、雷。


それらが、解放戦線に向かって飛んできた。


それに向かって――


「チェスト!」


SATUMAの雄叫びが響いた。


ケンシンとタケル、そして仲間たちが、突進していった。


二つの全く異なる力が、激突した。


ドガァァァァン!


爆音が響いた。


閃光が、広場を包み込んだ。


解放戦線との全面対決が、ついに始まった。


この戦いの結末が、どうなるのか。


それは、まだ誰にも分からない。


しかし、確実に言えることは――


もう、後戻りはできないということだ。


グランベルク王立学園の歴史は、この日を境に、血と炎の新たな一ページを刻むことになる。


革命の狼煙は、上がった。


そして――


本当の戦いが、始まった。


運命の決戦が。


すべてを決める、最後の戦いが。


物語は、次なる局面へと進んでいく。


エーテルの奔流が、すべてを飲み込む。


そして、その先に――


真の夜明けが、待っている。

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