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5話


俺は次の日、学校を休んで千晴のいる病院に向かった。

病院に行き、病室を聞いたら快く教えてくれた。



コンコン


「はーい、どうぞー」


俺は千晴の声を聞いて、少し嬉しかった。

扉を開けて無言で千晴のいる病室に入ったのだ――












千晴side


私は悠真との思い出を書いた日記を読んでいた。

突如扉からノック音が聞こえ、日記を閉じて台の上に置く。


「はーい、どうぞー」


私は返事をしたが、なかなか扉は開かなかった…

1分くらい経った後に扉が開き、私は目を丸くした。


あの時、酷いことを言って突き放したはずなのに、何故ここにいるのだろうかと頭の中をよぎった。



「な、なんで?」


「千晴、勝ち逃げなんて許さねーよ」


「どうして、ここにいるの……

私は……もう仮面を被れないよ?」


「もう被らなくていいよ。


俺は千晴がずっと好きだから、千晴を忘れる事はできない」


「なんで…きちゃったの…私はこんな姿を見せたくなかった…」


「俺は千晴がどんな姿になってもずっと好きだ。愛しているよ。だからさ俺にお前を見届けさせてくれよ」



私はついに涙が溢れてしまい、悠真の前で思いっきり泣いてしまった………




「でも悠真、私はあと1週間と少ししか生きられないよ…


それでもいいの?」


「あぁ…俺は最後までお前と一緒にいたい」



「そう?貴方は悲しくならない?辛くならない?」


「俺は…悲しくなるだろうし、辛くもなると思うけど…

最後を見届けなかったほうがもっと辛いし後悔する」




「あぁ、せっかく悠真には秘密にしてたのにな…」


「俺は千晴がずっと来なくて焦ったよ…」


「じゃあさ…最後はさ色々思い出話をしようか?」


「あぁ…」


私達は1週間、色々な思い出話をして楽しい時間を過ごした…


1週間したら、だんだん眠くなる時間が長くなってきた、そろそろお別れの時間かな?



「ねぇ、悠真…私ね悠真と桜が見たかった…


桜が綺麗だねって2人で並んで歩いて見たかった…


私達は春にできることが何もできなかったからそれだけが心残りかな……」


「どうしたんだよ、急に…」


「わたし、そろそろだと思うから…

もし私が永遠の眠りについたら、よかったら私の日記をもらってくれない?

要らなければ貰わなくていいけどね…」



「そんなこと言うなよ、でも日記は貰っておくよ…」


「本当はね、悠真が病室に来てくれてとても嬉しかった…」


「………」


「本当に、悠真は馬鹿だよ…


せっかく私から解放してあげたのに……」


「馬鹿…ってそれは酷いな…」


「私ね…


悠真と一緒に入れて…とても楽しかったよ


でもサヨウナラだね…


ずっと…一緒にいてくれてありがとう


好きだったよ……」


「もう、死ぬみたいなこと……言うなよ、

まだたくさん話そうぜ……


俺も……


ずっと愛しているよ」


「最後は…わら……て………ね……」



「おい!千晴!ちはる………」


私の最後の1年は幸せだった…

ありがとう悠真……









悠真side



「千晴が…永遠の眠りについてしまった……

ナースコールを押さないと……」


俺はナースコールを押し、ご両親が来るまで病室で待った。

俺はこれからどう生きればいいんだろうな….

胸にぽっかりと穴が空いてしまった……


「千晴!ちはる!どうして急に……」

「娘は…もう…」


俺はご両親に挨拶をし、帰った……

涙は意外にも出なくて…


俺は薄情な奴だったのかな――





1週間後に千晴の葬式があり、俺は最後に千春に会いに行った。

その時に初めて涙が出てきて、千晴が本当に死んでしまったのだと実感できてしまった…

俺は、葬儀中はずっと涙を流していた


千晴のお父さんは涙を流しながら話をし、その話を聞いて余計に涙が止まらなかった…


最後に千春を見に行った時、千春が最後に言った言葉を思い出し、泣きながら笑った…


「千晴…笑ったよ…だから……」


千晴は笑っても起きてはくれなかった――






葬儀が終わり、俺は普段の生活に戻った。

朝起きたら、制服に着替え学校に行く。

友達と話したりして授業を受け、放課後になったら屋上に行きボッーと空を見る。

しばらくしたら家に帰り、夕飯を食べて、風呂に入って寝る。


俺はなんのために生きているんだろうな…

千晴がいない世界はとてもつまらなく、色が褪せてしまった世界だった…


千晴と出会ってなかった時はどうやって過ごしていたんだっけ?




あれ、思い出せないや……


それほどまでに千晴は俺の心の中に入ってきていた…


そんな毎日を送っているうちに、そういえば千晴の日記を貰ったんだっけ……

千晴がどんなことを書いていたか見てみよう……



4月○日

「今日は、悠真に勝負を仕掛けた。受けてくれるか心配だったけど受けてくれてよかった。

私はあと1年しか生きられないけど、悠真はすぐに私のことなんか忘れちゃうよね?


勝負を仕掛けた後はゲームセンターに行った。ゲームセンターはとても楽しいところで、悠真はどのゲームもとても上手かった。

ぬいぐるみをもらった時はとても嬉しくて、部屋に飾ることにした。」


4月※日


「今日は放課後にショッピングモールに行った。

ショッピングモールは行ったことなかったけど見ているだけでも楽しかった。


クレープ屋さんで買ったクレープは悠真が私の食べたいものを買ってくれてとても嬉しかった。

悠真が私のクレープを食べた時はとてもドキドキして顔が熱くなっちゃったけど、私は誤魔化せたかな?

悠真とは初めての間接キスだったけど悠真は気づいたかな?」



4月*日


「今日は綺麗な夕陽が見える丘に行った、夕陽が沈む時はとても綺麗で悠真を少し見たら悠真の顔もとても綺麗だった…


胸が少しドキドキして、苦しいな…」



それから毎日、日記が書いてあってページごとに涙で濡れた箇所が何箇所かあった。

千晴はこれを書いている時?それとも読み直している時?に1人で泣いたんだな…


俺は日記を涙を流しながら読み続け、最後のページには俺への気持ちを綴った文章がたくさん書いてあった。


俺は日記を全て読み終わり、俺が死んだ時に千晴が自慢できるような男になろうと決意した。





それからもう2年が経ち学園を卒業した。

卒業後の進路は学園よりも高度なことが学べる大学に入った。


学園の卒業式にはやっぱり千晴はいなくて、代わりに他の女の子たちから告白された。

告白は全て断り1人で学園の桜を眺めていた…


「次は、大学か……千晴がいればな…」


俺は桜を1人で見た後は家に帰った――










大学の入学式の日



入学式が終わったら、病院の近くの桜を今日は見に行こう。






入学式が終わり俺は病院の近くの桜を見る。

すると1人先客がいたみたいで、近づくと綺麗な女性だった…


その女性を見た俺は胸が高鳴り苦しくなる…



千晴なわけない…

あいつはもういなくなってしまったのだから…


女性はシルバーと黒のメッシュをした髪色で、千晴は黒髪だった。


でも胸が苦しい……もしかしたら…


俺は勇気を出して声を掛けた。


「桜、綺麗ですね…」


女性は振り返り


「えぇ…綺麗ですね」


返事をしてくれた。


俺は女性の声を聞いた瞬間、わかってしまった。


この出会いの奇跡を信じて、女性に駆け寄る……


【完】

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