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ディスク2 元ヒキニート勇者リンと門出

美少年に連れられた私が訪れた場所ただの客室だった。



 


 「コンブチャです。どうぞ、」


部屋に連れられた私は布団を被りつつ美少年が出した紅茶に手を持っていく。無論警戒心100%で


 (コンブチャ……昆布の味しそう。、、いや普通に紅茶だわ。)


オロオロしている自分を少しでも律するためにそのようなボケとツッコミを寂しく心の中で行う。目の前の美少年にはこの心わかるまい


 「……それで、リンさん。」


 「………」


 「あの、実はおりいってお願いがあるのですが。」


 「…………」


美少年はとても困った様子だ。そんな姿を鑑賞する趣味はない私だが、だからと言ってこの美少年のお願いを聞けるかと言えばノーだ。


 「あなたにその……端的にいいますと、世界を救ってもらいたく────。」


 「はぁ」


あまりのテンプレートじみた願いに呆れと憤りのため息が出る。顔が良くて今は許されているが、そうでなかったら私渾身の貧弱右ストレートがその顔を横ぎるまたは陥没させていたことだろう。格闘技はやってないけど、今の気持ちを拳に込めればできなくない。


 そしてこの美少年は私に何を期待したのだろう。


 「あの………」


 「残念ながら、私じゃ力になれませんよ。」


行き詰まっていた美少年に答えを出す。理由なんてものはいくらでも述べられる、だがそれは相手が催促してきたらの話だ、


 「そ、そんなことはありません。勇者として召喚されたあなたなら、きっと女神様のお力が宿っているはずです!大丈夫です、」


 「はぁぁ。」


なんだそのテンプレートの塊、私に神の力が宿っている?、そんなわけない断言できる。私のような無価値なヒキニートにそんな力を与えるほどその女神様とやらも暇ではない。

第一、神とかなんだとか言っているけど、見るからに召喚行為を行ったのはここにいる人間だろう。それに神が宿るなんて、八百万の神ですらびっくりの方程式だ。


 「まず、私はあなた達が望んでいるような力も、能力もありません。わかってください、そしてわかったのならさっさと私を返してください。」


 「…………」


 「どうしたんですか?」


 「申し訳ありませんが、あなたをお返しすることはできません。」


 「──────は?」


 「申し上げにくいのですが、我々は返す方法を────ぐッ!?」


 「ふざけるな、ふざけるなぁ!!」


私は激昂した。目の前の美少年にか、それとも私自身にか、いや…こんなヒキニートにこんな苦しい思いを強制させる世界に、もしくは自分も含む全てに怒りを向けた。しかし目の前にこれほどまでに当てがいい標的がいるならば、私はこのように真っ先に胸ぐらを掴み壁に叩きつける。


 「お、落ち着いて………!」


 「これが落ち着いていられるかっ!!、私は………私をもう放っておいてくれ!!!」


 一瞬元の世界に戻った時の姿を見た。時間前と変わらず家出した親、一人寂しく家に残り、部屋に篭り誰にも必要とされず、誰の役にもててず、そこに佇みながら自分の人生を捨てた咎人がそこにはいた。無様にもたった一言で妹の命を奪って、家族を、家庭を破壊した存在価値のない女が、まるで夢を見たかのような目をした後、ゲームの電源を入れる姿を。

何も変わってはいない、何も変わってはいない。その生活に戻れば。


 (それでどうなるんだ?、お前は誰にも必要とされていないのだから)


 「ぁぁあああああああっ!!!!」


半狂乱になりながら、掴んでいた美少年を近くの地面へと投げ捨てる。叫び声を上げる必要はない。だがどうしても叫びたい気分であった、私は確かにあの世界の中ではいあらない存在で拒絶されていたかもしれない。しかし確かにそこは私の家であり、こんな意味不明な場所よりよっぽど安心できる場所だったのだ。

だがそんな場所はない、働けっと言われ家から放り出されるよりも辛い、意味不明で不可解な異変に今私は巻き込まれているのだから、勝手に頼られ、勝手に期待され、そんな辛いことをして生きていくよりも、惨めに底辺のまま生きた方がまだマシだった、私の知っている世界で生きたかった。


 「なんで、なんで、なんでなんでなんでっっ!!!」


答えは返ってこない。まるで私という人間を否定しているかのように。それとも、私には誰も味方してくれないのだと、諭されているように。


 「───────────………」


疲れた。叫び疲れた考え疲れた怒り疲れた生き疲れた泣き疲れた働き疲れた苦しみ疲れた聞き疲れた学び疲れた。疲れた、そう疲れたんだ。もう放っておいてくれ、私はそうしてあの世に行きたい。


 「……………リンさん、」


 「」


美少年は私を心配するような瞳を向けていた。とてもじゃないが投げ飛ばされた相手に向ける目ではない。


 「実は、魔王を倒すと、世界が救われて。そうすると女神様から願いを一つだけ叶えてもらえます。」


 「…………………どんな願いも?」


 「────おそらくは」


この時私の脳裏に浮かんだのは、元に世界に帰りたいという気持ちではなかった。そんなものあったところでと感じた。しかしどんな願いも叶えられることができるのなら、、


 (私はもう一度、妹(あの子)に会いたい。)


あって、謝りたい。私が悪かったのだと、私がしっかりしていなくてごめんと。


………………………もしそれが叶うのなら。


 「、わかりました。やってやります、勇者。」


魔王を倒せば、全てにかたがつく。そう、すべてにだ。そのためなら、私はヒキニートを辞めよう。






次回 ディスク3 元ヒキニート勇者リンととある日

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