ディスク1 元ヒキニート勇者リンとゲーム式異世界召喚
前提として私は思う、外は嫌いだ。外には恐ろしい世界(現実)がたくさんある。世界は便利になったけどその代わりに簡単に人を傷つけることができる魔境になった。犠牲者には人権が与えられず、平等と謳っているものは常に不平等を行く。
私もその一人だ、現実の恐ろしさに心がやられて一人寂しく部屋に燻っている存在。
それが私であり、世間体からして。
ニートと呼ばれる者だ。
いつもと変わらない1日、汚れた部屋で目を覚ました私は、布団を頭に被りながらのっそのっそとゲーム機の方へ向かっていく。電源ボタンを押し、いつも通り廃人プレイヤーらしくコントローラーを構える、アプリケーションを選択して、ゲームを始める。
「……………」
ゲームの音が聞こえ、すぐさまスタートボタンを押す。同時に、近くにあったタイマーを押す
見慣れた風景、昨日の出来事を思い出しつつ、操作可能になった瞬間にスティックを動かし予定通り動く。
エンカウントした敵を倒して、魔除けの呪文を唱える。できるだけ最速を目指すために1フレームの隙も見逃さず頭に焼きついた動きをそのまま体に、コントローラにトレースさせる。
数時間、私はつきっきりで食材を口に運ばず、目の前のゲームに集中し続ける。長いロードやスキップできないムービの合間にいつ買ったかわからない飲み物を飲む。それもただの水分補給だ、ゲームをやっている間の私はろくに頭を動かさないのか、自然と水だけ飲んでいても不服を感じない。
いつからこうなったかは知らない。あぁでも。
「─────。」
私はすぐさま、タイマーを止めて。ゲームをセーブして布団の中へ急いで籠る。
嫌なことを思い出した時、私は反射的にこうなってしまう。本当に、、哀れだ。
「────すまない、私を許してくれ。」
頭に存在しない幻聴が流れ込んでくる気がしてくる。そうさ、私のせいだとも。私があの子を殺したのだ、私がこうなっいなければ、あの子はこんな死骸に話しかけることも、自分の人生を私のために費やすこともなかったのだから。結局人の人生を滅茶苦茶にしておきながら、最後は愚かにも、私を馬鹿にした連中のように心無い言葉を送ってしまった。
ただ言葉を述べただけでも、あの子にとっては聞きたくなかっただろうに。
「───私を、許してくれ。許して、、妹よ。」
あの子のために、何かできることがあったらしたかった。勇気も、希望も、才もない、私でもできることを。
あの子のためにしてあげたかった。
「こんな私でも、できることを……」
その時、世界が光った。また誰かが私の部屋の明かりをつけたのだろうと思ったが、今の私に部屋の明かりをつけて暮れるほどの人などいないことも思い出す。
そこまで考えるとこの現象がいかに不思議かと認識した。
かぶっていた布団を貫通するほどの眩しい光、電子的でも人工的とも言えない不可思議な光、私はそれを確かめようと布団の外に顔を出した時。
「……………………………、」
世界が変わっていた。目が慣れるまで数秒はかかりはしたが、聴覚、触覚、嗅覚を通してすでに大いなる違和感を感じていた。騒がしい声、冷たい床、嗅いだことのない新品のような匂い。
そして、メガネを通して見ええてくる私の部屋じゃないどこか。
(───────!?)
視界に映る見たことのない姿をした人々。囲まれていると瞬時に判断した私は思わず顔を合わせたくない一心で体を包み込んでいた唯一の防御兵装:布団を頭からかぶり丸くなる。
一体何が起こっているのか、何も理解できない。
なんなんだ彼らは、なんなんだこの状況は、私は薄暗い部屋にいたはずだ。
それなのに次の瞬間にはどこかで見たことあるような風景。これは夢か、夢なのかと私は思いながら頬をつねるが残念ながら現実らしい
嫌そうだとしたらもっと混乱する。
「あの、」
すぐ近くから声が聞こえてくる。私は、反応して声の方向に体を回し、布団を少しあげてチラッと向こう側を見る。
「大丈夫ですか。」
(なんだこの美青年ェェェーーーーン!?!??!)
いや、すっご。何これ、こわ!こんなイケメン存在する?!どこかで見たことあるけど、現実にこんなイケメンいるはずない、でもどこかで見たことある気がするけど!こんなイケメンが現実に存在するはずないのだよ!!!!
整いすぎた容姿、一体どんな人を親に持って、どんな血を引いてきて、どんなものを食べればそんな姿になることができるのか、女神が作ったと言っても疑えないほどの美青年だぞこれェェェ!?
(ダメだ、余計に直視できない。心配してくれた心遣いは感謝に値するが、人とコミュニケーションを遮断した私は、もはや無敵だ!防衛戦の一点においてなのだけれども!!)
「あの、よければお顔をもう一度見せてくれませんか?」
「断るッ!!!」
「、ごめんなぁ、さい……?、で、ではそのままでいいのでお名前くらい…」
「…………………(コミュ力の塊か、)リン」
私はなかなか引けを取らない美青年に根負けして、自分の名前を言った。もちろんそれ以外の言葉は話せない、もとよりそんな高度な言語能力を兼ね備えているわけではない。
「では、リン…さん。もしよろしければこちらにお越しになってくださいませんか?」
(私にこの場から動けというのかっ!!、って言ったとしてもおそらく連行されるだろう。行くしかないか)
私はもそっと体を起こし直立する。布団の長さ的にからだ全体を包むことは叶わないため顔と前を出して静かぁに私はゆっくりと案内されていく。その道中、私は見慣れていない風景にビビりながら歩いていく。
(一旦納得ぅしたわけだけど、私一体どうなるんだい。)
次回 中級ボス魔族マカロンと食料調達