メモリー2:中級ボス魔族マカロンとこんにちはマカロンver2。
お父さん、お母さん、お元気でしょうか。私マカロンは無事辺境の地スィート砦に到着して仕事を始めています。不憫なことというか不便なことはそこそこあったりして何かと苦労は多いですが挫けず頑張っていきたいと思います。
それと改めて、私に家事全般を教えてくれてありがとうございます…現在ではとても大助かりな上、生きていくのにもはや必要不可欠なレベルです。前途多難な先が多いことでしょう、しかしここまで培った知恵を総動員させてこれからも頑張りたいと思います。
お節介かもしれませんが、掃除は定期的に行っておいた方がいいと思います…二人ともお体に気をつけて。
さて、私ことマカロンがこの砦に着任してから一週間が経過した。残念なことに掃除のスピードはこれと言ってとても早くなっているとはあまり言えなかった、ただ便利にはなっていた。
それは前世の記憶のおかげでもある、どうやら前世の私さんはいろんな体験を通して家のため家族のために己を費やすような生活を行なっていたらしく…各方面あらゆる分野において無類の才能があったらしい。
正直何もないマカロンからすれば羨ましい限りです、そしてもちろんそれは土木系も含まれていた……例えば家の治し方だったりとか水道管が壊れた時の対処法、それと私も習っていたが予算とかそこらへんのデスクワーク案件等々、正直今世のマカロン要素が全て敗北するほどの情報量、生きている時間的にはマカロンが上(これでも90歳なマカロン)だけどこの情報量を見るに人間がどうして魔族と対等レベルに争えるのかということを再認識してしまう。
やはり人間は恐ろしい、知恵の方面を極度に伸ばし続けてこれならば、力の面は一体どうなってしまうのだろうかっとマカロン結構ビビってしまう。
まぁそれはおいおい。で、そのおかげで今まで濡れ雑巾に手を変えていたことで補っていた行動がなんとバケツやらなんなら蛇口やらに体を変えることができるようになっていた、いわば前世の文明レベルに私自身を引き上げることができるようになったため掃除もホウキと濡れ雑巾でひたすらやるというだけの作業とは大違いになった。
例えば水拭きしても埃が埃が取れなかったり自分の腕なんかが届かないところにある蜘蛛の巣とかはもうどうしようもないと思っていたのだけれども、ここで登場するは近代兵器、その名も"フローリングワイパー"、長い棒の先端に濡れ雑巾というかよく取れる布をつけるだけであら不思議、手が届かないところにある埃なんかを一回で掃除できたりする。
しかもこれのすごいところは、取り替えが不必要ということ、私マカロンの肉体がどうなっているかは見当もつかないのだけれども、毎回体を変える時には新品のものに必ず置き換わっている。なぜ、という疑問が頭の中を巡ったが細かいことを考えていて掃除が終わらないのであればそれは本末転倒、ということなのであまり気にしないことにした。
ゆえにこの仕様を利用して私の掃除はかなり便利になっていた、例えば掃除機なんかに体というか腕を変えられるのだがこっちもこっちでバッテリーという概念はあり、切れたら使えなくなる、しかし一回腕にしてもう一度戻せばMAXの状態へ戻る。
掃除界隈に革新が起こるような出来事だらけであり、私マカロンからしても本当に大助かり……なのだが先ほども言ったように掃除が早くなっているわけではない、
これは確かに便利でスピード良くこなせるという点においては間違いなどない、でも追加として掃除するべき場所が増えたということになる。
私だってそれは年頃の女の子だ、見える範囲全てを掃除してピカピカの状態で過ごしていたいと思う、でもこのワイパーとか掃除機が出てきてからは……掃除して部屋でもまだ掃除足りないと思えてしまうことがある。
つまりはクオリティそのものが大きく上昇したため結果的にはあまり速度に変化はない。
床だけやればいいところを、天井まで気にかけてしまうことになったらそれはそれでいいのか悪いのかみたいな感じになってしまう。
気にしなければ?っと言われればもちろんその通りだとマカロンも感じている。でも、前世のA型の私が完璧を求めようとするあまり、意志の弱いマカロンは否定できようにもできず、結果がコレ。
「うぅーん。人間って意外に几帳面、というか前世の私本当にどんな仕事してたんだろう。」
記憶を辿れば見えてくれはずだが、なぜだか印象に残るシーンしか思い出せない……でも掃除機とかで印象に残るシーンなんて親に邪魔だから退いてと言われた場面くらいであって、掃除機の内部構造とかを知る機会とかは思い出せない。
だから多分、思い出せないだけで記憶には残っているみたいな感じなんだろう、ほら体が覚えているというかなんというか………、
「でも、へんに押し負けたりとかしなくてよかったー。」
というのも、前世の記憶というのはもちろん前世の人格もハッピーセットでついてくるわけで、内気な弱々マカロンは下手したら負けてしまうわけですよ、でも実際にそうはならずいささかの強い意志を私の中に埋め込みながら、前世の私は静かに眠りについた。
まぁ、、今世は私ってことで手を引いてくれたのならそれはそれで、つまりはニューマカロンとしてこれからは歩んでいく次第。
「よし、今日も掃除だけどマカロン頑張るぞー!」
私は気合を入れ直して頭に掃除用頭巾を被り、服を着替え直す。ちなみに服も変えられるかどうか試そうとしたけど、皮膚を犠牲にすることで成り立つことを知ったので、さすが遠慮した……私だって自分の皮膚を剥がした状態で掃除なんかはしたくない。
ので、いつも通り少し気崩したお掃除マカロンモードで今日も今日とて、砦の掃除に向かう。
砦にきてからは一週間が経過して、それなりに色々な場所を掃除できてきていることを実感している……でも反面、
「わっと、ここ昨日穴空いちゃったんだよねー。」
老朽化によってちょくちょく壊れていたりするものはどうしようもない…補修することはできなくもないのだが、流石に適当な木材くらいは必要だ。
「よし、なら今日は掃除を終えた後階段と廊下と壁の穴を防ぐために木を切りに行こう!。」
ちなみにマカロンは木を切ったことはない。
「そういえば、シャワー室の掃除ももうすぐ終わるんだっけ……これでやっと満足に文明的な暮らしができる。」
え、じゃあそれまでの6日間どうやって過ごしていたかって、それはもちろん、髪を適当に洗って、体全体をお湯で軽く拭くなどしてなんとか女の子としての尊厳を維持してきた。
※濡れ雑巾というか濡れたタオルなどはお湯の温かい状態で出すこともできます。
「なので、マカロンとしては結構精神ギリギリ。」
前世の文明的な記憶とのギャップですでにボロボロなのに、追い打ちをかけるように普段の不便極まりない生活を送っていればマカロンとて平常心を保てなくなる。
「でも、それも今日で終わり!絶対に何がなんでもお風呂を、お風呂に入れるようにするんだー!!」
そうしてお風呂場の掃除を開始するマカロンは、ある重大なことに気づく。
「………老朽化で壊れているところとかあるー。」
ここでも老朽化に問題が上がる、風呂場の浴槽は所々に傷や穴が空いておりこの中にお湯を入れようものなら最後に待っているのは裸のマカロンがバスの中で虚無の顔を見せているという光景、サービスシーンにしては終わっている。
「これはぁ、早急に補修を急いだほうがよさそう。」
ということで、ところ変わって木を切りにきましたマカロンです。まず、木の上に生物とかがいないのを確認します、鳥さんが住んでいたりしたらたまったもんじゃないからです、(それとはハチさんとかも。)
何もいなく、何も実らない木を見つけたのなら手を斧……ではなくチェーンソーにします、
前世でこういうキャラがいたような気がするけど、無視!。木の破片がよくこちらの方に巻き散るのでしっかりと髪の毛でゴーグルを作って、いざ…
エンジンをかけて、前世の知識をフル稼働…木さんにさよならを思いつつ切り倒します。
「そいヤァーーー!!」
切り倒した木の枝部分を全部切除、今夜の晩ごはんを焼く用の薪として利用します。(ちなみに夜ご飯は焼きリンゴ。ここ一週間同じものしか食べてないけど、塩やシロップも手を変造させれば入手できなくないので、今度やってみようと思う。)
で、まず木の皮?というか外の部分を剥がし落とすというか切り落として、裸状態にします。
「ここまでの行動に一切の不手際ないところ見ると本当に私は一体どんな職についていたんだろう。、へんな仕事とかじゃないよね?結構不安のマカローン。」
そしてそれを真っ直ぐいくつかに切ります。そしてひと束というか一塊の木を持って砦の中に保存。雨なんかが降ったら危ないから腕を包まれているブルーシートにして、中身だけ取り出して元に戻し、残った木のを満遍なく包み込む、これによって雨が降ったりしてカビが生える可能性なんかがかなり低くなる。
「思うんだけど、自分の体積以上のものは出せなくても、変えたものからいくつかとって元に戻してもマカロンの体は普通に戻るんだよね。なんか不思議、、」
例えば手を金十個に変換して、九個だけとって元の手に戻してもデメリットなしの芸当ができるわけで、そうなれば無限に増殖することができたりするけど……それが掃除の役に立たないのなら今は関係ないかな…?っと思う。
「まぁ、知っててよかった系の裏技だもんねこういうの。」
そして私は木で風呂場の改修を施して始める。釘を左手に右手を金槌に変えて、建築者スタイルで挑む。
元々は石でできていたけど、ひび割れたりとかしていた部分も多々あったので綺麗なもの以外はほとんど気に変えた。ちなみに湿気対策に気にワックスを塗っておいたから、多分大丈夫な筈。
私の記憶が間違ってないことを祈る。
そうして完成した、浴槽に水を入れようと思う。もちろんバケツリレーなんて持っての他だし手を雑巾にして絞るなんて効率が悪い、ので手を蛇口に変えて浴槽いっぱいにお湯が貯まるまで待つ、
「…………この時間が一番暇かも。」
でもこの退屈の果てにお風呂があると思うと、我慢できる。でも流石に面倒臭いからお風呂は週3くらいの頻度にしようと思う。
そしてその日は記念すべきマカロン銭湯の完成日、私は久しぶりに湯船にゆっくりつかれて改めて文明の力に感謝をする。(石鹸などは《自己変造》でなんとかしました。)
お家が恋しいことばかりの生活だけど、たまには自分で汗を流して苦労して作ったりするのも悪くはないと私は感じた。
キリが悪いけど、あと寝るだけだからマカロンもう終わるね!バイバイ、
次回 遅れてくる記憶