メモリー1:中級ボス魔族マカロンと慌ただしすぎる初日
お父さん、お母さん、お元気でしょうか。私はこのたび辺境の地スィート砦に向かっています。魔族学校を卒業と同時に就職するのはわかっていましたが、本部ではなく地方へ飛ばされるのは正直ビックリです、自分で言うことじゃないけど私はあまり成績が優秀ではなかった気がします!。
ですが任されたからにはしっかり働いて、自分の役割をこなすと同時にいい親孝行ができたらなと思います。二人ともお体に気をつけて。
〜マカロン〜
ガタガタガタと揺れる骨馬車に乗せられながら私は手紙を親へと書いていた。今向かっているのはスィート砦、私がこれから新しく働く仕事場だ。魔族学校を卒業してすぐに転勤だから多分色々と経験は浅い方だと私は思う。
だからせめて先輩たちの役に立てるように自分を奮起させなければいけない、だって私はかなり内気だから、
「お嬢ちゃん、もうすぐ着くよ。」
「あ、ありがとうございます。」
心の中で色々考えるのもいいけど、しっかり働けるっという第一印象を見せなければならない。
私は第一印象を良く見せるために書いた台本を手に取り脳髄に叩き込ませる。文章のところどころに書いてある赤い印は自分の努力の結晶のように思えて少し気持ちが落ち着いたりする。でも、油断してはならない本番と練習は大違い……魔族学校のプレゼンでカミカミだったあの事件のことは今も脳内で忘れられない。
だから今回は準備に準備を重ねてきている、決して間違えないようnィ────!!
「おっとすまない、石に躓いたようだ。大丈夫かい?。」
「だ、だいじょぶでしゅ。」
舌を思いっきり噛んでしまったので、私は手を当てながらぎこちなくそう返事をする。
(あぁ、ダメダァもうおしまいダァ。したが使えずしていかにしゃべるかダヨォ。)
自分は内気だ、というよりはかなりネガティブヤン、すぐこんなふうに悪いことに転換してしまう悪い子。みんなからこの性格をよくフォローされているから自分でもすぐ自覚してしまう、
(新しいところでも役立たずなんていう風に思われないといいなぁ。)
みんな学生時代ではみんな私のことをよく気にかけてくれたり、簡単な仕事を任せてくれたり、すぐ頭を撫でたりと、かなり厄介に思われていたに違いない。だって───
〜プチ回想〜
『マカロンちゃんはここにいて…』
『マカロンちゃあ〜ん、暇ならお姉さんに頭撫でさせてぇ〜』
『マカロンちゃんかわいい〜。』
『こんなかわいい子には簡単なことさせないとぉ。』
〜プチ回想終了〜
(皆さんにお役に立つどころか、変に甘くしていただいたマカロンはこの通り。今頑張りの念を燃やそうとしています、あんな風に使えないなりの役割じゃなくて、しっかりとした役割をこなす…立派な魔族になるんだ!。)
そう奮起した自分。先ほどの自己肯定感は何処に、実に実に単純であるマカロン。そんな私はついに新しい職場に辿り着いたのでした。
送ってくれた骸骨おじさんには手を振りながら、、
「こ、ここがスィート砦。」
私は目の前に聳え立つ薄暗い森と相性がいい(褒め言葉)使い古されているようなボロボロの砦と対面する。
(結構ボロだけど、これは最近流行っている新築ボロアパート流だ!。きっとそうに違いない)
仮にそうじゃなくとも、カモフラージュの場合だってある。あれ、そう考えると私ってかなり場違いな気がしてきたこんなすごい砦で働くことになっていいんだろうかと、マカロンちょっとビビってしまう。
「うぅん。しっかりするんだマカロン!、私は今度こそしっかりとお役に立つために!!」
私は自分を勇気づけて、砦の裏口へ向かう。鍵を取り出し鍵を回し、木製の肌触りがそこそこなドアノブをしっかりと持って深呼吸。
(スーハー、スーハー、よし!)
「き、今日からお世話になります。中級魔族のマカロンです!、よろしくお願いします!!。」
・・・シーンっとした空気が私の肩を刺激する。頭を90°下げているからか、見えているのは地面のみ、きっと働いている皆さんの顔は見れない…こんなマカロンでごめんなさいと共にどうして誰も何を言わないのっ?!っと少し混乱気味。
(………、)
恐る恐る片目を開けながら頭を上げる。
「へ。」
中には誰もいなかった、そして新築ボロアパートではなかった。内装も外観と同じくらいのボロ…ボロボロのボロ、あまりの驚きに私はその場で真っ白になったように固まった。
少しおしゃれな服を着てきた私がこの砦の中でいちばんの場違いみたいで仕方なかった。
それほどまでに静かで、いい風に言えば慎ましやかで、印象とは大違いの砦だった。
「あれ……え?、場所間違えた?。」
私は慌てて契約書の紙を取り出し確認した。スィート砦、としっかりと記載がある。給料はかなりいいし砦はしっかりと広い、トイレも四つあるし、食堂もある、寝床も複数個あり、相室はなし。文面だけ見れば十分高待遇だ、だが清潔か否かについての言及はない。
「も、もしかしたら間違えたのかもしれない…マカロンうっかり!。だってこんな高待遇でお金かかってそうなところしかも給料がいいところでこんなボロなわけないよー!!絶対そうだ!。」
そうキョロキョロと入り口を見ていた時、地図が目に入った。この砦の地図だろう、トイレが四つもあり、食堂があり、寝床も複数個あり、相部屋は見る限りない、読み解く限りではそう回答してしまう。
「………ま、まだだここにきてからマカロンスィート砦のスの字も───。」
ふと朽ち果てた壁掛け看板が目に入った。
『スィート砦』
10年以上前に書かれたような年季の入った看板がそこにはあり、私の見間違いではないことの何よりの証明になっていた。
「………………………うーそーでーしょーぉぉぉぉ、、(泣)。」
仕切り直し。
どうも、マカロンです。どうやら私はオンボロ砦でたった一人で過ごすことになったそうです。砦の中はすごくオワッテいてまず掃除から始めるべきだとマカロン思いました。
なので今頑張って掃除をしています、幸いここにいるだけの仕事なので早々から書類仕事をこなすみたいな感じではないそうです(契約上)でもやること多いです、(特に雑用、しかも私しかいないから必要事項)お母さん、お父さん…仕送りをしようと考えていたマカロンですがもしかしたらこの砦に資金全ブッパするかもしれません、悪しからず。だって私もこんなところだって知らなかったもん、
「もう疲れたぁ。」
マカロン疲れました。だってこの日のためにせっかく台本書いてきたのに、せっかく新しい服を買ってきたっていうのに掃除を30分しただけでもう埃が肩にのっています。あぁ〜このまま疲れ果ててしまうのかもしれません、そっと地面(床)に横になりながら棺桶が来るまで待って────、
「ゲッホ、ゲッホ!!、無理!!。なんで横になろうとしたの私ッ」
床に近づけば近づくほど埃アレルギーが失神してしまうほどの埃たちがわんさかしている。これなら野宿したほうが案外健康にいいんじゃないかすら思ってきちゃう。
「うぅ〜ジャージ持ってくればよかった。オニューの服が……それに、ここにあったホウキもうボロボロだし。」
でも、そんなこと言っている場合ではマカロンありません。できるだけ早くこの砦をなんとか(掃除やら、修繕やらetc〜)しないと、テントなし野宿マカロンになっしまう。
(それだけはなんとしても避けないと……)
そう思うと居ても立っても居られなくなっしまう。そうだ、という少しの起点と共に私は自分の能力を使う。
「《自己変造》…」
魔族には固有能力があり、腕が生えるだとか闇の力が使えるだとか力持ちだとか色々あったりする中でマカロンは自身の体を変身させる能力があるのです。
でもぶっちゃけると使い所はありません、なぜなら…
「私が構造を理解してないと使えないからねぇ〜〜、私理系というよりどちらかと言えば文系派だったし。」
昔から掃除なんかはそこそこ得意な方であったりするから今でこそホウキとかには簡単に変えられたりする。でも、まず自分の体の体積で変えられるものにしかできないし、ごたいのパーツのいずれかでしか変えられないから最大で変えられるにしても5つまで。
だから正直言ってとても扱いづらい能力、場合によって強みになるけど…複雑すぎる構造はまず覚えられないし、適材適所みたいな感じで学生時代はほとんど書類と睨めっこ、勉強はもちろん欠かさなかったけど歴史とかテストに少し強いくらい。
自分の能力を伸ばすより、自分の得意なところを伸ばしすぎた結果マカロンは体育の時間ほとんどはじっこで体育座りしてました。
「こんなことなら、もっといろんなものみて学んでおくべきだったかも。」
っといっても現状が変わるはずがないので、マカロンは懸命に掃除を進めていきます。
でも千里の道も一歩から、ネガティブに言えば実家よりも広い砦を掃除するのは相当に時間がかかるもの。
マカロンは寝室から頑張って掃除していましたが、夜になるまでにできたところはなんと寝室だけ!。寝床は確保できたからよしにしても、扉を開けた先が埃まみれなんて気が滅入って仕方がありません。
でもそれ以前に、体力がないマカロンはここで力尽きました。
「もう無理、もう無理ぃ〜。」
お日様の匂いと少し埃っぽい気配がする布団にダイブした私は一気に体を脱力させました。
部屋の中は《自己変造》で水拭き乾拭き、を済ませなんとか魔族が生活できる領域にはなったものの、やはり第一印象からか…まだここには汚れが残ってると思う。
「実際そうかもしれないけど…もう私は動けないぃ〜。」
先ほどまで来ていた服はとりあえず水源が確保できるまで、外で干してある。《自己変造》で水で濡れた雑巾が出せなかったら、あの干し竿も汚いままだった。改めて自分の人生に感謝したいと思う。
「はぁ。」
パジャマ姿でため息を出す。(さっき着替えた)今日は慌ただしい1日だったのにも関わらず、シャワーすら浴びられてない、女の子が一日シャワーなしは次の日どうなるかわからない…明日はシャワー室でもやろうかなっと考えて眠りにつこうとした時……
ゴンゴンゴン…ガタガタっと突如として2階の部屋から物音が聞こえた。
「……私以外確か誰もいなかったよね。」
残念ながらミステリーやらホラーを嗜むほど私は図太くない。こういう類のものは無視するべきだと分かってはいるでもどうしても気になって寝れない気がしてたまらないマカロンはボロ砦の2階に足を踏み入れたのだった。
(ボロいから、天井がふとした拍子に崩れたとかならいいけど……いやダメだよ!。)
そう、どっちにしたって確認しなければならないことである。《自己変造》で左手を丸々蝋燭にして長い廊下をゆっくりと慎重に歩く。
「うーん。蝋燭もほとんど切れてる、新しいの買ったほうがいいよね?」
自分の近くしか明るくないのも場合によってはとても怖い、だっていつ背後からとか襲われたらたまったもんじゃないんだもん。
「………階段からここまで(10メートルくらい)来たけど、特に何もなし。真上あたりだから音がしたのはここら辺だと思うんだけど。」
ガタガタガガガっと近くの扉から音が聞こえてくる。
「ピッ!」
私はすぐさま音に反応して振り向く、しまっている扉の向こうから聞こえてくる。さっきの音の正体だろう、でも明らかに生物がいるような音、マカロンは実技ももちろんへっぽこだったから超ビビりまくりなのです!
「怖いの、いませんように怖いのいませんように、怖いのいませんように……!」
ドアノブに手をつけてビビりながら扉を開けた。いざとなったら左手の蝋燭で相手を燃やすせば───ってそれじゃあこの砦まで燃えちゃう、っと気づいた時には部屋の中にいる奴と対面していた
「ニャーー」
「ぁ、────はぁ〜なーんだ猫かぁ。」
私はその場にへたり込み、安堵のため息を漏らしながら動悸が激しかった心臓を落ち着かせました。そして目の前で自分の顔を手で擦っている黒猫をみて、可愛いなぁとマカロン思いました。
「ニャ!」
「ごめんねぇ、ここは一応私の仕事場でもあるから(契約上)、住むなら他のところを……」
「ニャー!!!!」
私が外に出すのを促そうと手で触ろうとすると、黒猫は豪速球猫パンチで私の手を軽々と弾いた。
「いたっ!猫パンチ強ッ!!」
「ニャーーーーー!!」
そして私に向かって飛びかかってきました、しかも顔に。私は驚きつつも顔で暴れ始める黒猫を止めるべく、すぐに左手の蝋燭をすぐに元の手に戻して応戦に出ました。
「は、離れてーー!!怖いよーーー!!」
しかし黒猫はこれまた強靭、野生で育つということはどれほどすごいことなのか教えてやるニャーとまるで格闘戦を申し込まれてたマカロンに勝てるすべなく、なんとか顔から引き剥がそうと主導権黒猫のまま真っ暗な廊下をフラフラと引っ張られながら操縦され、ゴン──
「ンギャ!!」
後頭部を壁に衝突、黒猫を抑えていた手を離してしまいしました。ようやく離したか見たいな感じで黒猫は頭をぶつけた私に向けて猫キック踏み台をかましてきました。マカロンヨロヨロとバランスを崩して結果、ゴン────
「ぁ、ふぇ。私をふみだいにぃ、」
目を回しながら床に激突。そしてそのまま意識は一旦沈んでいきます、だからあれほどいったでしょうマカロン、万全な状態じゃないのに戦うなと…そうだれか、ってこんなこと言うの体育の先生しかいない気がするけど、、マカロンは混乱しながら夢の世界に、でもその夢は今までで見た夢と違ってとびっきりリアルで尚且つ特別なものでした。
『お姉ちゃん、お風呂掃除してっていったでしょ?。そんなんだからお母さん家出しちゃうんだよ、』
『妹よ、どうせ帰ってくるんだからいいんですよぉ。それより、私がすヽめたゲーム…どこまで進んだ?もうラスボス倒した?」
『お姉ちゃんみたいにヒキニート廃人プレイヤーじゃないから、まだだよ…ようやくあの可愛い中ボス倒したところ。』
『中ボス…?そんなのいたかね、私の記憶が正しかったらそんな奴いないんだが。図鑑パラパラ』
『あ、そこだよ、ソレ。マカロンっていう中級魔族…全クリして廃人プレイヤーになっているのにわからなかったの?。』
『あー、エセ隠しボスちゃんか。クエスト隠しボスのくせに報酬がしょっぱいんだよねぇ。』
『なんでそんなこと言うの、私はマカロン好きだよ、何より可愛いし。』
『えー、妹よ。可愛いだけじゃRTAには勝てないぞ、勉強したまえ。』
『こっちのセリフだよ!全くいつまで学校行かないつもりなの。』
『これで稼げるまで。』
『もう!お姉ちゃんなんて知らない!!』
ドッシャーン!!!!
こうして妹は車に撥ねられ、死んでしまいました。そしてマカロンはRTAではガン無視扱いのキャラになってしまいました。めでたしめでたし。
「私死んだァー!!!」
はい、そう飛び起きたマカロンです。飛び起きたついでに今起こったことを話そうと思います。さっきの夢に出てきた妹、アレはマカロン(前世の姿)だったのですよ、角も生えてない、お肉を切るためのそこまで鋭くない歯も生えてない、尻尾もない、そしてなんか色々と風景が都会っぽい人間!、ソレがマカロンの生前。
そしてこんなこと言ってはなんだし、ドラマ性とかゼロだとマカロン思うんだけど、
「前世の記憶の思い出し方ヘボー!!」
黒猫に踏み台にされて頭を2回打っただけで生まれ変わるとかなんたる話ッ?!。勉強尽くしな前世でもこれはダサいと言いたくなるくらいのダサさ、マカロンダサすぎぃ!!自分のことなんだけどねー!!
「あぅ。」
しかも酷い頭痛のおまけつき、マカロン頭イタイタ。
「頭痛いし、色々記憶が整理できないけど…とりあえずもう寝よう、ほんと疲れた。色んな意味で」
人格はマカロン勝ちだけど、色んないらない記憶がいっぱい入ってきたからマカロンはとても疲れました。左手を電球に変えて目をこすりながら大きなアクビをして、オフトンにダイブ。
そしてぶっ倒れるように眠るのでした。
次回 こんにちはマカロンver2。