おにぎりを食べて両想い
昼飯時になって、俺と美琴は備え付けてあるベンチに隣同士で腰かけた。
どこかへ食べに行くのもいいが、何か買って食べるのも捨てがたいと先ほどから顎に指をあてて思案している。
俺は口角を上げて言った。
「食事なら俺に任せてもらおう」
「不動さん、おいしいお店を知っているんですか」
「そうだな。少なくともお前が何よりも喜ぶ料理は知っているつもりだ」
俺は指を鳴らして虚空から重箱の包みを取り出した。
スター流メンバーは指を鳴らすことで何でも出現させることができるが、こういうときは荷物が少なくて便利だと思う。
「開けてもいいですか!?」
「当然だ」
美琴がワクワクしながら包みを解いて、重箱のふたを開けると中から三角や俵型に握られたおにぎりが姿を現した。
「いただきます!」
彼女はさっそく手を合わせてぱくぱくと食べ始める。
「うまいか」
「はい!」
握り飯は箱から次々と消していく。
最後の一個が残ったところで美琴は俺に握り飯を差し出した。
「不動さんも食べてください」
「俺はいらん」
「せっかくのおいしいおにぎりですから不動さんにも味わってほしいんです」
「……」
「お口を開けてください」
俺が言われるがままに口を開けて握り飯を食う。
多少冷えてはいるが味は悪くない。
「おにぎりは大好きな人と一緒に食べるともっとおいしくなるんです」
妙なことを言ってから美琴は耳まで赤くなりあわあわとしはじめた。
美琴よ。お前の想いは確かに受け取った。
「これからもよろしく頼む」
「はいっ!」
俺と美琴は軽く拳を突き合わせて、デートは終了するのだった。