恋路を邪魔するジャドウと守りたいムースの激闘に俺は無視を決め込む
コーヒーカップやメリーゴーランドなど美琴は遊園地の遊具を堪能し笑顔を見せていた。
俺は毎回のように制限が道を阻み共に楽しむことはできなかったが、笑っている彼女を見ているだけで心が癒されてくるのだから不思議だ。
戦闘と修行ばかりの生活だった俺に癒しを与えてくれる美琴の存在は、本当に大きなものだと思う。
遊具で遊ぶことはできずとも同じ空間と時間を共にできるだけで俺は満たされている。
心底楽しそうに遊んでいる彼女に自然と頬が緩む。
と――遠くで何やら人だかりができているのを発見した。
視力を上昇させて確認してみると、白い軍服姿の老人と金髪縦ロールの見知ったガキが激闘を繰り広げていた。
何やら言い合っているが、俺には関係ない。
しかし奴らも遊園地に来ているとは。
否、違うな。
俺の推測ではジャドウが俺と美琴のデートの邪魔を試みて、ムースが全力で阻止しようとしているのだろう。
ジャドウは自分の恋が実らないから嫉妬心を爆発させ、仲間の恋愛を破壊しようとする。
ムースは最愛の美琴の幸せを守りたいから全力でジャドウを止めようとしている。
同性に対する恋という点では共通点はあれど、両者の思想は真逆だ。
俺としては相性が良いと判断したが、それは間違いだったらしい。
美琴は遊具に夢中で気づいてはいない。
それでいい。
俺も知らぬふりを決めておこう。
ここで下手に俺が介入すれば、ムースの気持ちを踏みにじることになる。
彼女は陰ながら俺たちを守りたいのだ。
だったら最後までそれを貫かせるのが礼儀だろう。
ムースよ、俺は何も見なかった。
だが、ありがとう。