デートでは手をつなぐのが常識なのか?
「不動さん、おはようございますっ!」
デート当日。
美琴は白いオフショルダーのワンピースを着て俺の前に現れた。
日差しに照らされ服がキラキラと輝いている。
「お前が忍び装束以外の服を着ているのをはじめてみたよ」
「似合っていますか? 実はムースさんに選んでもらいましたっ」
手を後ろに組んでにへらと笑う美琴。
長いストレートの黒髪が風に揺れる。
「それじゃあ、デートにいきましょう!」
美琴は俺の腕をつかんで嬉しそうに歩き出す。
正直デートというのが何をするものなのか俺はよくわからん。
美琴はわかっているのだろうか?
「楽しいですね」
「……」
街を手をつなぎながらふたりで歩く。
無言の俺に美琴が目を潤ませて上目遣いをする。
「楽しく、ないですか?」
「そうだな。楽しくはない」
「そうですか……」
しゅんとして落ち込んでいるが、俺は困ってしまった。
手をつないで歩いて喜ぶのはガキだけだ。
正直、何が楽しいのかサッパリわからん。
わからんのだが……
俺の脳裏にムースの声が響く。
『美琴様を幸せにしてほしいのです!』
奴が土下座までして示した覚悟。
それを裏切っては漢とは言えぬ。
「どこか行きたい場所とかはあるか?」
「えっと……遊園地に行ってみたいですっ」
「わかった」
今度は美琴の腕を俺が掴んで先導していく。
「ふ、不動さん! 早いですよぉ!」
「これぐらいで根を上げるようではスター流とは言えん」
「もうちょっとゆっくりいきませんか?」
美琴の頼みに俺は少しだけ速度を落とした。
奴を悲しませてはいけない。
これからは多少気遣って歩かねば……
しかし開始早々この調子で本当にうまくいくのだろうか?