ネヴァーエンディング物語
遥か遠未来 軌道惑星居住地にて
「いやぁ、上手くいったねぇ!我ながら最高の出来だ!」
大日本帝国への全てのテコ入れを終え、物語を締めくくった平衡世界人の片割れである成原は自画自賛してた。
1977年。東条英機は、世界をかき回すだけかき回した平衡世界人に見守られ世を去った。
死の直前まで、飽きが来ていた平衡世界人を繋ぎ止めて、後進の為に地均しをしていたのだから、心労に心労を重ねながらも随分と長生きしたものである。
彼が残した帝国は、ちょっとやそっとでは壊れないであろう。
何せ、「これ以上のテコ入れは健全な発展に悪影響が、、、」等と急に常識人ぶる悪魔の使いに、出来うる限りの技術情報の青写真を吐き出させているのだ。
核融合、放射線除去、クローニング、遺伝子改造、初期サイボーグ化、内惑星航行船
主要な所だけでも、これだけある。
訳をしらない後世の学者や研究者は、残された青写真に頭を掻きむしる事であろう。
東条英機と彼の特務機関は、後世、世紀の大宰相にして超天才発明家集団として教科書に載るかもしれない、いや載るだろう。若しくは宇宙人の技術を解析した第一人者として載る。
そして、無限の食糧、超監視社会、逆らう奴は内から爆発、それだけ支配に必要な物は揃っている。
東条たっての頼みで、後三百年は転送システムは稼働する事になっているし、地球を覆うフェムトマシン監視網はそのまま継続される。これで滅びたら物笑いの種だ。
「うん、そうだな。上手くいった、、と思う」
「どしたん?何か気に入らない事あるのかい?」
呵々大笑する成原とは違い、何か歯切れの悪い返事をする田中。
「なーんか、最初に思ってたのと違うかなーって」
そうだ。自分は、苦労するご先祖様に、少しはマシな境遇になって貰いたいと思って介入した。何もディストピア染みた世界を作って貰いたかったわけではない。
だが蓋を開けてみれば、食糧支援だけするつもりが、世界征服のお手伝いである。積極的に行動したのはご先祖様たちだが、冷静になってみると何だか悪い気がしてきた。
「良いじゃんそんな事!勝てば良いの!ご先祖様は勝ったの!日本人は世界の支配者!みんな幸せ!OK?」
そんな田中を成原は、自慢の燃える様な三つ目を輝かせて迫った。凄い勢いだ。
「ああ、、うん、、そだね、、、まあ、、、でも、、、」
「デモもストもない!これで終わり!物語は終わったんだ!君と僕の手で!」
成原の勢いに飲まれ田中は言葉を失う。何か上手く乗せられている様な気がするが、話に乗ったのは自分であるしと疑問を引っ込めた。
「まったく、、、これだから人間は、、、少しは誘惑に身を任せていればいいのに、、、あーあ、嫌な時代だ、、、どいつもこいつも平和平和と、、、おかげで平衡世界なんぞにしか干渉できない、、、」
「どうした?急にぶつぶつと。ボケた?」
「誰がボケただ!」
この時代では歳を誤魔化す奴はごまんといる。だが専門の処置を受けられない市民階級で、数千歳も生きると流石に認知機能に衰えがくる。
もしかして自分はボケ老人のお遊びの片棒を担がされた?急にブツブツ言いだした成原に田中は不安になって率直に質問した。即座に否定されたが。
「ゴホン、、失礼。君ねぇ何度も言ってるだろ?僕はねぇ、これでもレディだよレディ。それを捕まえてボケたは酷いと思うよ君ぃ」
「ゴメン、、でもなぁ、なーんか婆臭いんだよ。特に喋り方、、今時そんな喋り方する奴は、、、」
「シャラップ!萌えだよ萌え!この口調に男はメロメロさ!萌えろよ!誘惑されろよ!襲え!それでも男か!」
萌えとか言い出した、石器時代の言葉だよそれ。しかも襲え?自然交配しろ?何時の人間だ?田中は目の前の女?が本当に同じ人間か疑わしくなってきた。きちゃない。
「お前は何時の人間だ?やっぱ歳誤魔化しているだろ?」
「こういう時だけ冷静になるな君」
だから未来人は嫌なんだ、、、少しは人間らしい所を持てよ、、本能はどうした本能は、、、理性の時代なんか嫌いだ。成原は分けの分からない事を再度呟いている。
「でこれからどうする?次のコミケには十年以上ある、帰って本でも纏めるか?」
銀河ミリタリーコミックマーケットは五十年に一度の零細イベントなのだ。本家の様に五年に一度と言うハイペースでやってない。今までの体験を纏めて本にするなら良いころ合いだろう。
「ああそれね。そうだなぁ、、、」
田中の問いかけに気を取り直した成原は考えるそぶりを見せる。
「エントロピーの増大は、、、、混沌に帰るのはあれだし、、、、もう少し遊びたいし、、、このままの路線、、、堕落のさせようが、、、、」
「また訳の分からない事を」
この女、長い付き合いだが時折オカシクなる。こうなったら放っておくしかない。
田中は成原を置いて席をたった。直径数キロしかない狭い人工天体なのだ、正気に戻ったら直ぐに追いかけてくるだろう。
「待ちたまえ!君ねぇ、せっかちはいけないよ」
そんな田中の背に成原は声を掛けた。心なしか三つの目が燃えているように見える。
「待たない。物語は終わりと言ったのはお前だろう?俺は別の暇つぶしでも、、、、」
「別の平衡世界があると言ったらどうする?」
成原の言葉に田中は足を止めた。そして振り返る。
「別の?」
「そう、別の世界、、、別の、、今度は第二次大戦前夜、、1936年さ」
誘惑だ。そう言われると田中の中でムクムクと新たな欲望が湧いて出る。後悔はあったが、、、もう一度出来るなら、、、今度は失敗は、、、。
「いやダメ!俺は後悔してるんだ!俺のお楽しみの為にご先祖様を操るなんてまね、、、」
「今度は医療供与なんてどうだい?君も見ただろ?向こうの日本は馬なんて使ってた。今度はさバイオ系の供与したら面白いと思わないか?米軍を蹂躙する巨大騎兵部隊とか、、そうだな泳いで米本土に上陸するご先祖様とか見たいと思わないかい?」
「見たい!いつやる!いやすぐやろう!ぼさっとするな成原!行くぞ!」
「君ならそう言うと思ったよ。じゃあ準備しようか」
光の速さで手のひらを反す田中と我が意を得たりと言う感じの成原。
後年。度々の平衡世界干渉により、汎銀河政府から追われる身となる二人の犯罪者の旅はまだが始まったばかりである。
付記1。汎銀河政府が事態の異常性に気付いたのは、平衡世界より、大和朝ローマ帝国、神聖大和ローマ第三帝国、日英大連邦、生体としての大日本帝国、可愛いメイドさんによる人類甘やかし帝国等による連名での抗議の声が届いた事によってであった。
付記2。汎銀河連邦政府通達
「お子様を守る為、高次元からの干渉には気を付けましょう!内原、成原、成瀬、にゃる、ナイ、ナイアール、愛工人、等と名乗る人物がお近くに居ましたら直ぐに保健所に一報を!」
短編の積りが長くなりました。お楽し頂けましたか?




