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飽食戦線  作者: ボンジャー
10/26

こちら本日のお勧め、熊のフランベでございます。

 時計の針が逆に回転し始めている。


 1944年8月 大英帝国は白旗を上げた。


 彼らを非難しないで欲しい。彼らも頑張ったのだ。


 だが混乱の中、息を吹き返したルフトバッフェが、英国全土に損害を顧みず、フェムトの砂を散布した事で勝負は決まった。


 如何したしたって防ぎ切れる物ではないのだ。相手は指呼の間にある、英仏海峡の向こう側から来る。


 バトルオブブリテンの時の様に、密集して爆撃して来るのであれば、レーダー網と米国からの援軍を得た英国に分がある。だが相手は散開しながら隙間を潜り抜けてくるのである。


 それでいて一機でも侵入されれば、頭の上にライスプティングが出来立て配送される。


 「これ以上抗戦するので有ればブリテン島はローストビーフに埋まる事に成るであろう」


 アバディーンにスターゲージパイが降った翌日、総統が宣告した、次の日のディナーメニューを前にして、大英帝国の抗戦の意志は折れた。


 意気揚々と(降り立った瞬間に腐敗臭と油臭さに吐きそうになっていたが)ヒースロー空港に降り立った、ドイツ外相リッペンドロップと親衛隊長官ヒムラーの写真は世界に衝撃を走らせる事になる。


 本国の敗北を受け、英連邦諸国は辛い決断を迫られる。


 大英帝国の至宝であるインドは、迫る日本軍と続発する独立運動の前に混乱の坩堝に叩き込まれ、早々に旗幟を鮮明にしたガンジーとチャンドラ・ボースは連名で独立を宣言し、大東亜共栄圏への加盟を決めた


 ガンジーは平和主義者だって?彼はクレバーなのだ。暴力で独立が勝ち取れるのが確実ならば躊躇はない。

後ろ盾に、昨日までの貧乏ぶりが嘘の様に、景気よく食料を撒きつつ、進撃して来る日本が居るのであれば猶更である。


 カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどは継戦を選んだ。


 オセアニアの白人国家に取って黄色人種の下に付く恐怖が先に立つ、カナダは言わずもがな、アメリカに保証占領されてたまらない。南アフリカ?世界の果てまで枢軸が手を伸ばせるか?


 その他ユニオンジャックの翻る場所は混乱の渦中にある。


 枢軸を呼び込もうとしアメリカに踏みつぶされ土地、独立の炎が燃えあがる土地、中立を決め込もうと必死な土地、兎も角大英帝国は崩壊したと言う事実のみが残る。


 合衆国もまた辛い立場に追い込まれ様としている。


 英国からは「後生だから出て言ってくれ!このままでは国土がマーマイト臭くなる!」と言われ涙を飲んで逃げ出す羽目に陥り、スペインではフランコ政権の目の色が怪しくなってきて、何時ジブラルタルが陥落するか分からない。


 そしてスエズだ。もしスエズがペンネとマカロニで閉塞したら偉い事になる。


 どうやらドイツは食料爆弾兵器の使用をイタリアにも許可したらしく、マルタ島はオレンジの空挺降下を受け沈黙、スエズ閉塞の懸念は日に日に高まっている。


 「我々は旧大陸を失いつつある」


 合衆国の焦燥は大きい。だが一つだけ分かった事がある。頓智機攻撃の正体だ。


 日本とドイツが撒き散らす謎の砂。あれが原因なのだ。であるならば、叩き落とす、沈める、絶対に近寄らせない。


 サイパンでの悲劇は完全に罠に掛かった形だが、あいつ等はの攻撃は動目標には使えないから、罠何ぞ張って待ち構えていたのだろう。


 正直損害は痛い、万単位で失われた、熟練の海軍軍人の補填は、いかなアメリカで有ろうと難しくはある。


 だが、いまだ合衆国の生産力は衰えていない。


 「空母を!潜水艦を!爆撃機を!戦争はまだ終わっていない!奴らが根を上げるまで損害を積み上げる!泥仕合ならば勝機はある!こちらにはまだ切り札だってある!」


 「そうさ!あれがある!何も超兵器を持っているのは貴様らだけではない!精々いい気になっていろ!」


 戦争終わらず。巨人は反撃の時を待っている。




 1944年9月 東部戦線


 ファシズムの絶滅により、終わろうとしていたその戦争は、その残忍さを増していた。


 東部戦線の全てが燃えがっている。酔っぱらっているとも言う。


 殺戮に関して、大変に勤勉で効率を重視するドイツ人。


 その代表格である、唾棄すべき親衛隊と国防軍と言う名のユンカー崩れは熊の駆除に好物を有効活用している。


 「ウォッカが好物なんだろ熊公?なら死ぬまで飲め、きつい奴をな!」


 第一発見者は、勿論狼の巣の不愉快な仲間たちだ。


 英国への更なる嫌がらせの為に、扱いの慣れてきたタブレットを弄り回していた総統は、操作ミスで開いた酒のラインナップの横にアルコール度数が併記されている事に気づいたのだ。


 「ふん!強いアルコール等不健康の元だ!吾輩の作るゲルマニアにそんなもんいらん!なんだこれ!七十度?こんな物飲むからロシア人は馬鹿なのだ!」


 プンプンしながらフリック操作をする総統、その指はとある製品を目にして止まった。


 アルコール度数96%の世界一強い酒である。


 「馬鹿か?これを飲むのか?誰が?ああロシア人か、、、、、待てよ、、、、ふむ、そうだな、うん、そうだ、誰か!ゲーリングを呼んでくれ!」


 英国軍港を襲ったシュナップスの雨を覚えて御出でだろうか?あれで効果は実証された。英国人は一応人間の範疇で有るから手加減はしたのだ。


 だが熊の駆除に手加減は無用である。


 「熊は幾らでも居るからな!効率だよ君、効率!あいつ等も死ぬまで飲めて幸せだろう?」


 戦場に降るアルコールの雨、十分に揮発したところで曳光弾なり焼夷弾をボン!火炎瓶はNG、自分も巻き込まれる。


 そして出来る熊の酒蒸しと丸焼き料理、揮発したアルコールは塹壕に隠れようが戦車の中に居ようが襲ってくるのだ。


 戦線が燃える、人が酔い潰れる、あとに残るは肝硬変患者と丸焼きのみ。


 酒臭さと腐臭が入り混じる殺戮が東部戦線の日常となった。

 


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 燃料気化爆弾だと考えると、焼死より周辺一帯の酸素を奪うんで窒息死が一番多そうですね…
[一言] 最初にやると思った酒爆撃……考えてみるとそもそも知らないと選択肢に無いか。 パワーは劣るがガソリン車で使えるから色々解決するなぁ
[良い点] ここの伍長閣下は、暇さえあればタブレットをぐりぐりと操作してそう そしてムッソリーニと会談時に、タブレットの操作方法であれこれ蘊蓄垂れてそう 眼は画面から最低30cmは放そうね。老眼が酷く…
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