三話
蒼井葵にとって初恋を何かに例えるなら試練の連続だ。 初恋に気がついた私はある日突然、初恋相手と少しの間距離が離れてしまい、その間に初恋相手は他の人と仲良くなってしまってた......
そして、その初恋相手は私に今......
「あのね! なんでそんな事しないといけないわけ!」
私にとって一番頼まれたくない頼まれ事をしてきてた。
彼は、今度好きな人に告白するために私に協力してくれと頼んできたのだ。
私の気持ちを知らない彼、中学の頃になぜか距離をとってた彼、それからもなにか話してる時にたまに距離を置いてる気がする彼。
私の心はズキズキと鈍い痛みに占領されてた。
「そんなの私に関係ないもん! 晴樹なんてもう知らない!」
私は自分の想いを伝えてないのに、私の気持ちに気が付いてない彼に怒った。
晴樹はまだ何かを言おうとしたけど、タイミング良くチャイムが鳴りこの話はここで一旦終わった。
でも、晴樹の事だ休み時間になったらまた話しかけてくるだろうと思ってたら、予想通り最初の休み時間に晴樹は私に声をかけてきたが、晴樹の言葉を遮る様に私は教室を出て行った。
なんで私が怒ってるのか少しは考えてくれても良いじゃん......謝ってきてくれたら私もこんな事しないのに......
結局最初の休憩時間が終わる直前まで私は教室に戻らなかった。
その後も、晴樹から逃げる様に一日を終わらせた私は......晴樹たち2人に捕まってしまった。
「晴樹から聞いたけど、葵はどうしても手伝いたくないのか?」
正志は私が晴樹が好きなのを知ってる。 正志にとって私より晴樹を優先するのはわかってたし、ある意味こうなるだろうなとは予想もしていた。
「なんで私が手伝わないといけないのよ!」
私は、頑なに断わり続けた。 だって、そんなの手伝いたくないじゃん......
「な、なぁ正志。 流石にこんだけ嫌がってるんだしもう葵に頼むのはやめとくよ」
「えっ?」
「いいのか晴樹?」
「あぁ、流石にこれ以上無理に頼んで葵に嫌われるのも嫌だしな」
「まぁ、晴樹がそう言うなら俺は別にいいけど」
予想外にも晴樹がそんな事を言ってきた事に私は驚いた。 朝あんなに必死に頼んできてた晴樹がまさか諦めた。 それも、理由が私に嫌われたくないからと言って......
あまりに突然の事だったからキョトンとしていた私の腕を正志が突然つかみ、晴樹から少し離れたところまで引っ張られ、小さい声で話しかけてきた。
「ホントにこれでいいんだな?」
「なにがよ?」
「葵がこの話を断ったら、俺の妹に手伝ってもらうって晴樹に話してるんだ」
「はぁ?!」
なにそれ! なんでそんなこと言っってるのよ正志は!
「俺としては、どっちが手伝ってくれてもいいんだ。 だた、考えて欲しいこのまま断わると、晴樹との距離は確実に離れていくぞ?」
「そんな事言ったって......」
晴樹との距離を縮めたい。想いをちゃんと伝えたい。 そう思ってても、もう遅いそれもわかってる......
「可能性を無くすのか、僅かな可能性でも残すのか選ぶのは葵自身だから、もう何も言わない」
それだけ言って正志は晴樹の方に歩いて行った。
「晴樹ごめん。説得しようとしたけど無理だったよ」
「正志もありがとな。 葵も無理に頼んで悪かった」
あっ......このままだと本当にもう終わるかも......
手伝いたくない、でもまだ可能性を残したい。 矛盾してる感情が水と油の様に交わらずにグルグルと渦巻いている。
そして私は2人に聞こえる様に
「仕方ないわね......わかった! わかったわよ手伝えばいいんでしょ!」
僅かな可能性にかけることにした。