もう背中は追わない
本当に仕方のない事なのだけど…
『オレの事は死んだと思って忘れてくれ』
こんな最低な事を言い置いて我が身可愛さに逃げたカレの事を
もう5年以上も想い続けていた。
前の会社の同僚から何気に送られてきた社員旅行の写真…
そのスナップの片隅に写り込んでいたカレとその家族。
揺れる通勤電車の中、人差し指と親指でその画像をピンチアウトすると…決して忘れる事の出来ない奥様とカレの面影を持つ娘さんがそこに居た。
そんな“最低な写真”の力を借りて
その夜、私は夢想する。
あの場にいるのが私で
その夜、可愛い娘が寝入ったら
指と指を絡め
カレの懐へ潜り込む。
そう、ひっそりとした深夜
私は幻想を抱いて
人差し指と親指で
自分を
ピンチイン
ピンチアウト
熟してそれらが滑り出すと中指と薬指の出番…
密かに燃え
つまらなく残骸を焦がす。
そして肩を揺らし
忍び泣き
そんな独りが辛くって
お互い酔った勢いだからと
拾い拾われたのが
この若い背中…
きれい
ああ
いいんだ
男のくせに
こんなにすべすべの背中をして…
おざなりには似つかわしい安ホテルの照明の下
その人の背中に頬を転がし、目を凝らしてみると
浮かび上がる白い爪痕が幾条か…
こうやって
跡を残したのは
いったいどんな女?
この人に
傷なんて付けなくていい
数えて何番目かでもいい
その“何番目”かに
なってみたい。
かくも私は
乾き切った荒地だったのだろうか?
捨てられたカレへの思慕が
『単なる肉欲に過ぎなかったのでは?』
と思えてしまうほどに…
この人の腕や胸や手や指やくちびるは優しかった。
ああ、こんな…灰になるまで逃れられそうにない“業”を
これからいったいどう扱っていけばよいのか
すぐ背後に
絶望の淵を感じて
その場限りでもなんでもいい、体ごとこの人の背中に縋って
素肌に人肌を感じたら…
この人は、回した私の腕を抱きしめてくれた。
お返しに
何でもしてあげたいと思った!
そう!
ひとりこっそりと観ていた“映像”みたいなコトでも
なんでも!
なるだけ甘く
こう囁いたら
「あなたにとって僕は…まだまだ頼りない存在でしょうけど…僕の大切な人になっていただけますか?」
こんな事を今、言われたら
もう泣くしかないじゃない!
バカみたいにエンエン泣いたら
“あなた”もグシュグシュになって
涙味のキスを
いっぱいいっぱいした
そしてこれから先
ずっとずっと
二人の心が繋がるように願いを込めて
お互いがお互いを感じた。
。。。。。。。
イラストです。
秋が深まり
人肌が恋しくなったりして…(^^;)
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