運動会に向けて
久しぶりに会話のシーン入れたな…
運動会の練習も本格的になってきた。
6年生の出し物は組体操とフラッグダンス。
組体操は足がふらつくし、バランスがむずかしい。
フラッグダンスは振り付けを覚えるのに苦労をする。
でも、栄生はそれを全て難なくクリアした。
栄生にとっては簡単だったのだ。
しかし、100メートル走は足が遅いので不安しかない。
それはともかく。
「プログラムです」
運動会まであと3日のときにプログラムを配られた。
栄生は配られると自分の担当の放送のところに印をつける。
「ん?なんで印つけてんの?」
近くの席の晃が?顔で見てきた。
「おまえそこやらないだろ」
「自分の放送するところだから」
「そういうこと」
晃は納得したのかふうんと言う。
「おれここでするよ」
と、印の指したところを指差した。
「そ、そうなの?」
別に栄生は晃に特別な感情は何も抱いていない。
クラスメイトの男子として見ているだけだ。
そのせいで余計に返答に困る。
「その時に放送やるんだ」
「…そうだよ」
晃が応援しているときに放送をする──そう言われたみたいで、ドキリとした。
「栄生ちゃん、この絵でいいと思う?」
休み時間リコがフローガン係の絵を栄生に見せてきた。
「上手い!リコが描いたの?」
「いや…」
リコは少し渋い表情をした。ほんの少しだけだが。
それだけで、付き合いの長い栄生に悟られた。
「いや?何?」
「それ、沙羅ちゃんが描いたの」
そこへ沙羅がひょこっと現れる。
「そう!私が描いたの。上手いでしょ??」
「う…ん」
沙羅のことは褒めたくない。
しかし、上手さは本物だ。褒めるしかない。
「リコが描いた絵は?」
「……いや、私絵下手だから」
リコはそう言い、沙羅と絵の紙を持って作業を始める。
リコは絵が下手じゃない。沙羅と比べると引け目を感じるが、それなりの腕前はあるはずだ。
なぜ、下手だというのだろうか。
そう栄生が首をひねっていると、「ああそれ」と返ってきた。
「!?」
「口に出てたから答えた」
返事をしたのはシュンだった。
「出てた?」
「うん」
栄生は思ったことが口に出ていたらしい。
恥ずかしくなる栄生。
「リコの絵のことでしょ?それさ、沙羅が邪魔したらしいよ」
「え…?どういうこと?」
栄生は目を見開いた。
沙羅が邪魔をした。どういうことか。予想外のことだ。
「リコと沙羅で分担しようとしたんだけど、沙羅が全部やっちゃって…おれは全部見てたよ」
「リコは一つも描いてないの?」
「そうだよ。フローガン係だったから分かる」
シュンは淡々と言う。
「ありがとう、教えてくれて」
「だから、答えただけだから!」
少しキツめに怒鳴るシュンはさておき。
栄生は沙羅の元にかけよった。
「──!?」
沙羅は振り返る。
「リコの邪魔、したの?」
ストレートすぎる言葉。
いきなりのことで沙羅は面食らう。
「邪魔って何よ?何を言い出す気!?」
「リコの絵描かせてないんだね」
「描かせてない…いや、描きたくないって言ったから!」
「言うと思う?…リコが」
「……っく」
沙羅は言い返せないのか唇を噛んだ。
「言ってたよね?リコ!」
「ん……──」
「はっきり!」
リコが言い淀む。
そこに沙羅はたたみかけた。
「ほらっ!」
「うるさい」
シュンが止めていた。
沙羅の続きの言葉を。
「見てたから」
「…シュンまで?」
はぁと沙羅はため息をつく。
「でも、私の方が上手いでしょ?」
「それは認める。けど、リコだって下手じゃないから分担するべき」
栄生の言葉に、そして睨んでいるシュンに観念したのか、沙羅は再びため息をつく。
「分担するわよ…栄生、棒読みで読んだら許さないからね」
そう言って沙羅はリコと話し合うことにした。
そして──運動会まであと3日。