スローガン係、応援団
リコは沙羅と共にフローガン係の教室に入った。
沙羅と来るつもりはなかった。
しかし、沙羅がリコに声をかけたのだ。
(はぁ…)
リコは心の中でため息をつく。
「フローガン係の絵、一緒に担当しない?」
「…いいよ」
とりあえず承諾する。
逆らったら面倒くさい。
リコの運命は沙羅と一緒にフローガンの絵を描くことだ。
運動会らしい絵。
リコは簡単な絵ならいけるだろう、と書こうとした瞬間。
「私が手伝うよ」
沙羅が紙を奪って絵を書き始める。
リコは反抗できなかった。
自分の出番がなくなった。
(でも、上手い)
沙羅は紙に生徒の絵を書いている。
正直、上手い。悔しいけれど、上手かった。
「上手だね」
リコはそう口に出した。
「そう?」
謙遜しながらも沙羅は満足そうに微笑む。
それを見るとやはり憎めない。
リコは沙羅の手から描かれる絵をただただ見つめた。
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一方応援団では。
晃が団長に立候補していた。
圧倒的な上手さは誰も文句が言えない。
「じゃあ、島村さんが団長ね」
先生に確定と言われる。
晃は満足げにうなずいた。
一年生の頃から夢見た団長だ、と。
初めて運動会をやると聞いたときはただこう思った。
「運動が得意だから嬉しい」
実際、50メートル走は早かった。1位だった。
もう一つの出し物のダンスはいい思い出がないが。
そこで目に止まったのはずっとたって応援する6年生だった。
大声を張り上げ、ポーズを決める。
それがなぜかかっこよく思えた。
(だからがんばる、あの人を見習って)
初めて見た、頑張る人を。
そしてその人達は輝いて見えた。
だから、自分も輝こう。
団長として。
ゆずのことを書こうと思ったのに晃の気持ちを書いてしまいました。