放送係準備
一日2話投稿するつもりです。
よろしくおねがいします。
──そして、一週間たったある日の6時間目に係の集まりがあった。
栄生は放送係の拠点である音楽室に入る。
「…失礼します」
「卯月さんですね。座っていて下さい」
女の音楽の先生が配置されている席を指す。
3つの席。おそらく、6年生3人ということだろう。
「失礼します!」
といきなり入ってきた生徒がいた。
他クラスの生徒だ。
「え、栄生もだったの…?」
その生徒は去年栄生と同じクラスだった面識のある生徒だ。
栄生は素っ気なく返事する。
「わたしも放送係だよ」
「やったー!同じだね」
「……──」
栄生は反応に困った。
その生徒とはあまり仲良くない。
なのにやった!、と喜ばれるわけが分からないのだ。
「同じだね」
なんとか返事を返す。
「失礼します」
また他クラスの生徒が入ってきた。
「……!」
「……」
他クラスの生徒と栄生は顔を見合わせるとそっぽを向いた。
二人の間になにかある、そう気づいたもう一人の生徒は、
「どうしたの?仲が悪そうだけど」
「……」
「……─」
栄生は生徒の顔を見つめた。
ゆず、という名前だ。
ゆずも栄生を見つめる。
二人の間に何があるのか。
何を思っているのか。
栄生とゆずの間におどおどしい空気が流れた。
「と、ともかく座ってよ」
もう一人の生徒が二人を急かす。
ゆずは顔をうつむかせて椅子に座った。
栄生も座る。
「では、本題に入ります」
音楽の先生が紙の束を見せつけた。
「こちらは運動会のプログラムをコピーした物です。これを見て、どこを放送したいか決めて下さい」
全部で14個。低学年リレー、高学年リレーを入れたら16個だ。
「あ、6年生の放送は代理で5年生に任せます。あと、低学年、高学年リレーは実況と説明で二人ずつとなります」
6年生の出し物は2つ。
となると16個の項目になる。
一人4個。そして三人の中の二人が5個。
栄生は高学年リレーは絶対実況したいと思い、第一候補に入れる。
あと4つは下級生の出し物の中から適当に選んだ。
「…やりたい人」
「「はい」」
というように決まっていく。
そして最後に高学年リレー。
「実況やりたい人」
「「はい」」
「ん…?」
「……──」
栄生とゆずの声が重なった。
またも二人は顔を見合わせる。
「じゃあ、じゃんけんで」
ゆずはうなずいた。
栄生もうなずく。
じゃんけんは自信ない…が、ゆずるつもりはない。
この実況目当てで立候補したのだから。
「最初はグー、じゃんけん」
「「ポン」」
しかし、あいこ。
「あいこでしょ」
「!!?」
「…?」
またもあいこ。
その次もあいこだった。
そいて次もあいこ、あいこ、あいこ…。
10回も続く。
(くっ…)
栄生は気を引き締めた。
あいこに驚いたので気を緩めて負けかねないからだ。
「仲良しさんね」
音楽の先生が笑う。
「じゃあ、気を取り直していこっか」
一息ついて拳を開いた。
パー・グー。
栄生の勝ち。
「うそ…勝った!」
実況の権利がもらえる。
「…なら私高学年リレーの説明やります」
ゆずはポツリと言った。
「はい。決まりましたね。最終確認です」
音楽の先生が名前を読み上げていく。
栄生は聞く。
優越感に浸りながら。
数字が漢数字になっていたり数字になっていたりするのは気にしないで下さい。