運動会準備
(うわ…栄生ちゃん放送係になった!)
栄生が勝ったところを見たリコは小さく微笑んだ。
栄生はリコに「絶対放送」と言っていた。だから、親友が望む係に行けて自分もうれしい。
「フローガン係をやりたい人」
「「はい」」
リコが手を挙げる。
誰かと声がかぶった。
「じゃあ、中山さんと如月さんだね」
もう一人は沙羅だった。
「あと二人空きがあるので、やりたかったら言ってください」
リコは心の中で冷や汗を垂らす。
中山沙羅。
クラス委員長で目立つ存在。もちろん、気配もすごく、隣にいると圧倒される。
そんな彼女と同じ係──不安しかない。
「じゃあ、フローガン係入ります」
と手を挙げたのはシュンだった。
自分のやりたい希望におちたから、フローガン係にしたのだろう。
「じゃあ、あたしも」
もう一人クラスメイトの女子も手を挙げる。
「はい、うまりました」
フローガン係は以上の4人となった。
「ねえ、聞いてよ」
休み時間。リコはふいに声をかけられた。
「!?」
ふりむくと沙羅だった。
勝ち気な瞳に怒りをためている。
「フローガン係よろしく」
「…はい。よろしく」
リコはおどおどしながら返した。
怖い。なぜか沙羅は怒っている。
逆鱗に触れたくない。触らぬ神に祟りなしだ。
リコは去ろうとした──が。
「フローガン係になりたくてなったわけじゃないの。そこは承知しといてね」
「なりたかったわけじゃないの?」
沙羅はニヤリと笑った。
リコはしまったと思う。
つい答えてしまったのだ。
「そう。放送係で負けたのよ」
「栄生ちゃんが勝ったんだよね…?」
「うん。棒読みのくせに」
沙羅は栄生の悪口をスラスラと言う。
「ね、そう思わない?棒読みだと思わない??」
リコの表情が強ばる。
「別に…」
とっさにそう答えた。
沙羅があっそと冷めたように言う。
「ま、フローガン係でよろ〜」
リコは固まったまま沙羅の後ろ姿を見つめる。
栄生本人に言うべきか。
しかし…。
『影の悪口は本人に言わないほうがいいです。本人が傷つくので』
と言う教えがある。
それはだいたいの人が言っていることだ。
リコは栄生にこのことを話さないことに決めた。
沙羅は栄生を目の敵にしているであろう…