沙羅の願い
沙羅はレクレーションで迷った挙げ句、司会に立候補した。
本当に迷ったのだ。
やりたいのがない、と。
そこで不思議に思ったのが栄生。
速攻挙手していた。
……決められたんだ。
だから、聞いてみた。
「去年の林間学校での火の精がいいなって思ったから」
そう栄生が言ったから余計に気になる。
「去年の火の精をやっている人に憧れたの?」
確か、去年やっていた人は……。
「そんなんじゃない。私はやっている人に憧れたわけじゃなくて、その役に憧れたの」
と即答された。
予想と違くてあっそと返す。
(晃に憧れたのかと思った)
確か去年、林間学校で、晃は火の精をやっていた。
目立つというほどではなかったけれど、沙羅からしたら、もうずっと目で追っていた。
自分の憧れと栄生の憧れは違うらしい。
ホッとした沙羅は司会台本の自分の役にスラスラと自分の言葉を書いていく。
フォークダンス、肝試し。
異性交流が多い中で、晃となれればいいな、と心の中で秘かに思った。
「って何?フォークダンス!?」
栄生のレクの話を聞いたリコは目を見張った。
「あの、男女手をつないで、踊るダンスぅ……?え、嫌だ……」
絶望的な顔のリコ。
「なんでそんなに嫌な顔するの!」
「男子嫌いだから」
即答。
「ど、どうして!?」
しどろもどろになりながら栄生が聞き返したが、
「まあ、いい思い出がないからかな」
と返された。
「そうなんだ……じゃあ、優しい男子にあたることを」
当たり障りのない言葉を言って栄生は愛想笑いをする。
果たしてリコの過去には何があるのだろうか。
たぶん、次回で移動教室の準備終えて、その次に出発となると思います。