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青色の薔薇  作者: キハ
1オレンジの薔薇「信頼・絆」
10/26

高学年リレー

 


 シュンは足が速い。

 毎年リレー選手に選ばれる。

 去年も選ばれた。その前も、その前も。

 1年生からずっと……。


「そして、今年が最後か」

 6年生でこの小学校を卒業する。

 だから、最後は何が何でも勝ちたいのだ。


 低学年リレーが終わり、高学年リレーとなった。

 初めは女子の対戦。

 赤組、赤、黄色の色の選手。

 白組、青、白の色の選手。

 全部で4チームだ。


 ここで、ゆずの放送がかかり、スタート。

「がんばれー!」

 赤、白、両組からの声援がうるさい。

「はい、4チーム一斉にスタートしました!先頭は赤チーム、猛烈な速さです‼」

 ノリノリな栄生の実況。

 思わず、見ていたシュンは笑みを浮かべた。

「お、黄色チーム、青チームを抜かしました‼2位になりました」

 声を上のほうに持っていく感じで棒読み感がなくなっている。

 ──が。

「ただいまの順位は、一位赤チーム、2位黄色チーム、3位白チーム…すみません、3位青チーム、4位白チームです。白チームがんばれ‼」

 青と白を間違えてしまったのだ。

「がんばれ‼」

 まだ栄生の実況が続く。

 そして、アンカーに渡った。

「バトンがアンカーに渡されました。あと一周です。がんばれ‼」

 一周をリレー選手は走りきり…ゴールへ。

 女子の結果は、1位赤、2位黄色、3位青、4位白だった。


 次は男子のリレー。

 シュンは白組のため、女子の方で負けたので、ここで巻き返す義務を背負っている。

 また、放送本部にいる栄生も祈るようにシュンを見つめた。

 去年、同じクラスだったシュンの実力を栄生は知っている。

「白組…勝って…」

 そう願いながら、実況を再び初めた。


 シュンは3番めに走る。

 4人目がアンカーだ。アンカーの足を引っ張らないように走らなければ。

「選手、そろってスタートをきりました!」

 栄生の実況、そして声援の声。

 2番手がシュンの元に、走り寄ってくる。

「早く!」

 シュンはゆるく走りながら後ろに手をのばした。

「……!」

 しかし、バトンはこなかった。

「!?」

 2番手が渡す瞬間、突如に立ち止まったのだ。

「なっ!」

「ごめん!」

 2番手がまた走り寄ってくる。

 早く、早く。バトンを。

 じゃないと、一位はとれない。2位の選手がシュンをぬかした。

(ここで…巻き返さないと…俺のせいになるだろ‼)

 心の中で、強く念じる。

 2番手はまだ、追いつかない。そこで。

「何やってんのー渡しなよー!」

 晃の野次がとんだ。

 はっとして、2番手がシュンとの差を追い詰める。

「早くっ!」

「はいっ!」

 シュンはバトンをさっと受け取った。

 途端に走る速さを早める。

 先頭は赤。速くしないと。

(…でも、走れば、俺の勝ち‼)

 シュンは速い。

 一瞬で一位を抜かした。

 そのまま、走りきり…アンカーへ。

 結果、白組が一位をとったのだった。



「は…すごかった」

 栄生はリコと共に更衣室へ向かう。

「ね。最後のリレー、ドキドキした」

「うん。危なかったよ、白。シュンの元にバトンが遅かったら…って考えると」

「でも、結局引き分けだったね」

「まあね」

 リレーは女子と男子の結果を合わせると引き分けだった。

「でも、白は勝ったよ!」

「総合的にね!嬉しい」

 白組は赤組に勝った。

 それは、運送能力が優れていた人が多かったのか、団長の結束がよかったのか…それは分からない。

「…あのさ」

 栄生の前に沙羅がきた。

「何?」

「認めるわ」

「何を」

 沙羅は言いづらそうに少し、言い淀む。

「…その、棒読みじゃないっていうことを」

「ああそれ。ありがとう」

「別人のような明るい声だったわ…びっくりした」

「それ褒めてんの?別人って…」

 あきれて、栄生は苦笑する。

「本当だよ。あの声だけだったら栄生だと分からない」

「…それで?」

「放送係は栄生が適任だったね。認める」

「沙羅も、頑張ったね」

「なっ…?」

 まさか褒められるとは思わなかった沙羅の顔が赤くなった。

「絵も上手いよ。リコを外したのはあれだったけど…その後、リコにも描かせてあげてたでしょ?それに、スローガンの言葉もかっこいいし」

「あ、あれは…晃が考えてくれたのよ!」

「でも、晃にお願いしたのは沙羅、でしょ?頼む人の選び方、上手いね」

「…そんぐらい、簡単だから。あんたの放送よりも‼」

 沙羅は耳まで赤くした、飛び出していった。

 意外と素直な人だ、と栄生は思う。

「…ふふ」

 運動会のことを思い出すと、自然と笑顔があふれてくる栄生であった。

第一章完結っ‼

みなさん、読んでくれてありがとうございました‼

もちろん、まだまだ続きますよ。

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  忘れな草作
― 新着の感想 ―
[良い点] 誤字もほとんどなく、とても安定して読みやすい文章でしたので、安心して読み進められました。 文章からも小学生のかわいいやり取りが感じられ、キャラが生き生きとしていて、読んでいて楽しかったです…
[良い点] とりあえず一章まで一気読み。 そんな係あったなぁと懐かしさを感じながら読みました。 係をめぐって気持ちが揺れ動く彼女たちが、運動会を終え成長していた。 面白い◎
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