夢獣夜 第2夜 フクロウの目のくらみ ★夢の中でフクロウになったと思ったら、なんか首が180度以上回って怖いんですけど!!
★夏目漱石の【夢十夜】という響きが好きなのと、フクロウは獣ではないですが可愛いですよねで、無理やり2夜となります。今回もタイトルと終りちょっと使わせて頂きました。中身は全く関係ないです!最後なんだかホラーに・・・
こんな夢を見た。
てゆーかあれ、なんかこの前もこんなことあったような気がする。
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突然なんだと思うので説明しよう!この物語の主人公である渡里部十夜
21歳は、人より寝つきがやたらいいほうである。
横になれば3秒で眠りにつける為、家族や友人から『のび太君』なんて呼ばれている。
そんな彼がいつものように、布団に入った途端眠りにつくと。
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『お久しぶりバクー♪』
盛大に頭の中に声が響いた。
『ねえそこの君、もう忘れてると思うけど、また【夢獣】と戦ってくれないバクか?』
どこかで聞いたような、声高な声と語尾が再度頭の中に響いた瞬間。
グッと体を上空に吹き上げられる感覚に目を開けると、
目の前に小さな物体がふわふわと浮かんでいた。
『やあ!もう一度自己紹介するバクよ!僕は夢境界の番人、獏の夢ポンだバクよ♪』
もう一度といって名乗った、そのやけに声高なミッキーマウス的な代物は、
やはり獏とも名乗ったが、どう見ても狸のぬいぐるみにしか見えなかった。
『イエーイ、僕に会いたかったバクーか♪』
元気よく小さい手なのか?不格好な右ぬいぐるみ手を挙げて楽しそうに、
やたらテンション高く笑っている物体に、十夜は嫌な記憶がよみがえってきた。
あれ、これはもしかしてまたアレなのか?
そうして、嫌な予感と共に自分の手を見るとそこには自分の手でも獣の手でもなく、
大きな翼が見えた。
「え?なにこれ」
『全体が見たいバクか?♪』
そういって夢ポンは、お腹の辺りからにゅにゅっと器用に大きな鏡を取り出した。
今回もドラえもんかい!とつっこんでいる場合ではない、今自分の体は何故か
フクロウになっていたのだ。
それも人間大、大きすぎだろこれ、夢ポンと同じサイズの方が可愛くて良かったと
思うんだけど。なんでこのサイズなの?
「てゆーか、フクロウは獣じゃないだろ!」
『フクロウは夜行性で、木の枝で待ち伏せして音もなく飛んで獲物に飛び掛かることから
『森の忍者』なんて言われてるバクよ♪カッコいいバクね~』
「いや、だからなんでフクロウなのかの理由になってないから!」
『人間の首って大体回っても180度位だバクよね』
「突然なんだ?」
『前も言ったけど、ここは【夢境界】といって、夢と現実の狭間の世界さ。
そして君は僕と契約したんだから、ここの【夢獣】と戦ってこの歪んでしまった
夢境界を、直すのが使命バクよ♪』
「契約なんかしてないよね!?そんで話のそらし方が雑すぎだろ!」
『細かい事は気にしないバク♪君と僕はとても相性がいいバク、こんなに簡単に夢に入り込める
隙のある人間はそういないバクよ~』
「さらっとひどいなお前」
『まあ、僕が君の相棒になったからには、僕に全てまかせておけば大丈夫だバク!』
「相棒になった覚えないんだけど!?」
『前にも言ったけど、ここの夢獣を倒さないと君は永遠に眠ったままだし、
姿もそのままになるけどいいんバクか?』
「それは困る!」
『ならこの事件を解決するしかないバクよ♪』
事件じゃないよね、それになんかやたら相棒ずらしてくるのがいまいましい。
マスコットきどりなのか、両ぬいぐるみ手を口元へ持って行きやたら『バクバク』
言っているがもしかして可愛い鳴き声のつもりなのだろうか。
見ているこっちからすると、何かをこっそり食ってるぬいぐるみにしか見えないん
だけど。
『じゃーん!そして今回のその姿は、またこの夢境界で助けを求める獣の姿なんだ
バクよ!』
だから獣じゃないんだけど、話が進まないので無視しよう。
「このフクロウがか?」
『そうバク、今回のその姿はフクロウカフェで可愛がられすぎて目が回ってしまった
悲しいフクロウなんだバク』
「フクロウの目が回る?」
『フクロウの首は、最初からくるくる回るんだバクよ♪』
「首?え、そうなの」
『そうバク!フクロウの首の骨は14個もあり、可動域はなんと270度にもなる
バクよ♪』
「に、270度も回っちゃうの!?首が!」
『フクロウは人と違って眼球を動かすことができないから、顔ごと回してみる必要
があるんだバクよ』
「まじか、すげーな!ていうーか今の説明だと目が動かせないなら目が回ることは
ないんじゃないのか?」
『君に分かりやすく説明するために、人間のような言い方をしたバクよ♪』
なるほど、よくストレスや仕事のし過ぎなどで、めまいや目のくらみなんてのは
よく効く話だ。
つまりこのフクロウは、人間社会のストレスと同じようなものを抱え込んでしまった
ということか。
『まあ、どこでもなじめないものや、自分に合わないものってあるバクよね』
「な、なんか辛い話になってきたな」
『まあそんな訳で、君にはその姿でこの世界から消えてもらうバクよ!』
「またかよ!!」
またもや恐ろしい言葉をさらっと言われ、前回の光景がよみがえる。
「これ、俺じゃなくていいよね。お前が起爆剤なんだからお前だけやれよ」
『それじゃ意味ないバクよ、この夢境界の夢獣のストレスを発散させることが
君の使命なんだから』
「え?それってつまり、ただの八つ当たりなんじゃ」
『自分じゃ発散できないから夢獣になっちゃうんだバク。だから誰かが対処して
あげないと!君は選ばれたバクよ♪』
「お前さっき、夢に入りやすいだけっていってただろが!」
『では今回もレッツファイアー!!♪』
「またかーー!!」
と叫んだ十夜だったが、何故か自分がぐるぐると回転していることに気付いた。
「え?何、なんなの、なんで俺回ってんの!?」
どんどんと回転の速度が上がり、そしてなぜか体がどんどん膨らんでいるような気が
する。いや、実際にフクロウの十夜は真ん丸なバルーンのように膨らんでいた。
『これでぷすっといくバクよー♪』
不穏な台詞と共に、何故かこんなに回転しているのに夢ポンの姿がくっきり
見える事に、このフクロウの姿だからか?なんてことを考えた事が、一気に吹き
飛ぶものが見えた。
あのふざけたぬいぐるみは、自分の体よりもだいぶ大きな爪楊枝のようなものを
こちらに向け狙いを定めている。
「あ、てめーこれじゃ俺だけやられるだけじゃねーか!起爆剤どうした!!」
『毎回同じじゃ、つまらないバクよ♪』
「誰も求めてねーよ、そんなレパートリー!
あ!ちょっと待て、俺のサイズでかいのってもしかしてこの為だったのか!?」
『じゃあ特大、派手に打ち上げいくバクよー!』
「おい待て!相棒打ち上げる気かお前はー!!」
『尊い犠牲バク、チクっ♪』
チク、どころではない衝撃と音と共に十夜は空高く舞い上がる感覚に一瞬、
鳥ってこんな感じに空飛ぶ・・・わけねーな。なんて頭の隅に考えた事も、
目の前がまばゆい光に包まれ真っ白になっていった。
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「!?」
がばっと十夜は、布団から跳ね起きた。
全身汗だくで気持ちが悪い。
「・・・また、何かすげー変な夢見た気がする」
嫌な感じに肌に張り付いた髪をかき上げ、服にもパタパタと空気を入れていると
『チーン』
「え!?」
はっと音に驚き辺りを見回し、ふと手元の目覚まし時計を見ると、ちょうど夜中の
2時だと気付いた。
『チーン』
時計から二つ目の音が鳴り響く。
「・・・怖っ!、これデジタル時計なんだけど!!」
おわり
ここまで読んで頂き、ありがとうございました(>_<)