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6、赤本

ミートソースを頬張るカレンは可愛かった。

「ところでカレンは美大って、どこ受けるの?」

「前に赤本見せたところじゃなくて、T美大のグラフィックデザイン科に行ければ行きたいんです。」

「そうなんだ」

一樹はT美大の受験情報をスマホで調べた。


「あれ? 受験科目は国語と外国語のみじゃない? 後は小論文と実技だね」

一樹がそう言うと、カレンは驚いた。

「あ、そうだっけ?」

「過去問とか解いてないの?」

一樹の言葉にカレンは俯いた。


「私、予備校の実技と小論文で手一杯で、そこまで気が回らなかった」

「そうなの? 予備校で言われなかったの?」

「あんまりちゃんと聞いてなかった」

カレンは気まずそうに、ミートソースをフォークでかき混ぜている。


一樹とカレンはミートソースを食べ終えるとドリンクバーから、また飲み物を持ってきた。

「カレンは国語得意なの?」

「うーん、あんまり本とか読まないから、得意じゃないかも」

カレンはそう言って髪を指に絡ませた。


「まずは赤本解いてみた方が良いよ」

一樹がそう言うと、カレンは真剣な顔で頷いた。

「分かった。本屋さんに行く」


カレンは2杯目のメロンソーダを飲み干して、立ち上がった。

「僕も一緒に行こうか? 邪魔かな?」

「ううん、邪魔じゃないよ! 一緒に来てもらえると助かる」


カレンと一樹はファミレスを出ると、駅ビルにある大きめの本屋に向かった。

「T美大は有名だから、ちょっと大きい本屋には置いてあると思うけど」

「そう?」

「うん」

カレンと一緒に赤本の売り場に行く。

端から探していくと、わりあい簡単にT美大の赤本が見つかった。


「ほら、やっぱり国語と外国語だけだよ」

「本当だ。私、算数の勉強して損しちゃった」

カレンはため息をついている。

一樹はそれを見て言った。

「算数とか、無駄になるわけじゃないから今から切り替えていこうよ」


「そうだね」

カレンは笑って、赤本を手にした。

「うわ、4000円もするの? 高いね」

「必要経費だよ」

一樹はそう言って、カレンの手から赤本を取ってレジに並んだ。


「え? え?」

カレンは戸惑って一樹の後を追いかけた。

「はい、どうぞ」

一樹は会計を終えて、袋に入れられた赤本をカレンに渡した。

「ええ!? いいの!」

「今日のモデルのお礼だよ」


「だって、高すぎるよ。半分払う」

カレンはそう言って、財布を出すと二千円を一樹に渡した。

「いいよ」

「良くない」

一樹はやりとりが面倒になって、大人しく二千円を受け取った。


「これからも、勉強教えてくれる?」

カレンは遠慮がちに聞いた。

「うん、僕で良ければ」


一樹はそう言って頷いた。

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