ぶち壊したい症候群
耳障りのよい、美しい言葉選びで、自分の物語を語り始めた。
紡ぎ出される物語は、私の中の私の一部を、洗練された言葉のパーツで装飾した、限りなく事実に近しい、虚構。
こんなにも飾り立てて、自らの経験を美しく彩るなんて。
こんなにも闇を纏わせ、自らの経験を暗く塗りつぶすなんて。
途中でふと気恥ずかしくなり、全部全部、ぶち壊したくなる。
恥ずかしさを手放せずに、全部全部ぶち壊す。
大切な言葉をごまかして、大切な物語を塗りつぶす。
言いたい言葉を塗りつぶして、言いたいことは、闇の中。
ああ、物語を書くのは、本当に、本当に、骨が折れる。
結局笑いに逃げ出して、言い切りたいクサい台詞は笑いの渦に飲み込まれていく。
ああ、まるで自分の生き方のようだ。
ああ、私の書く物語は、私にそっくりだ。
私に、そっくりだ。