floor.5 哀愁
「おい、肩の調子悪いのか? 一回ブルペンで肩温めてこい」
「オ、オォォォォ」
モンスターは痛く反省したようで校庭に向かっていった。
「いや行くなよ!? モンスターだよね!? あれモンスターだよね!? 人間を殺したい衝動とかに駆られてるんじゃないの!?」
「……紅麗亜、あいつはもうだめだ、あの事件以来、肩をやっちまったんだよ……」
「いつだよ!? 今日お初にお目にかかったよ!? なんでちょっと少年野球のエースが舞台を降りなきゃいけないシーンみたいになってんの!? 泣けばいい!? 私悲しみで涙すればいいの!?」
見るとモンスターは血涙を流していた。
「泣くな!! 戦える、お前はまだ戦えるから!! きっと肩の故障を乗り越えて強くなれるから!! ていうか敵として頑張ってもっと!!」
「お、紅麗亜いいな、女性マネージャーとエースの熱い劣情ね?」
「それを言うなら友情だよ! 勝手に発情させないでもらっていいですか!?」
俺と紅麗亜の巧みなコンボプレーにより、高校球児型モンスターは甲子園の舞台を去った。
あとで砂を渡してあげよう……。
「灯夜、私のダンジョンもこういうノリで攻略してたの?」
「いや、ダンジョンに入ってからはもっとまじめに永久の悪夢を使って戦ってたぞ?」
「あ、そう……。戦うのよりは楽でいいと思ったんだけど……」
「まあモンスターとの交流は隠し味的な感じでダンジョンは進めていかなきゃいけないからな」
「交流といっていいのか全く分からないけど……」
そうこう言いながら俺と紅麗亜は職員室に入り、早乙女先生の机へと向かった。
そこには紅麗亜がダンジョンになった時と同じく、銀河のような渦が展開されていた。
「これがダンジョンへの入り口?」
「ああ。たぶんさっきの高校球児もここから出てきたんだろうな」
「もうモンスターではなく人になっちゃってるんですが……」
「俺、この戦いが終わったらあいつに砂をあげるんだ……」
「甲子園で死亡フラグ立てるのやめてもらっていいですか?」
俺は紅麗亜と甲子園ノリで絡みながら渦の周りを少し見まわす。
紅麗亜の時は、体重計の上の方に渦ができていた。
つまり、その人が抱えている悩みに関係があるものに反応して渦はできており、内部のモンスターもそれと関係しているものが多いはずだ。
俺は渦の下の方を見る。
そこには、赤くて丸いシールが貼られていた。