floor.12 ダンジョンマスター:黒い人型2
「効かない!?」
俺はすんでのところで攻撃を回避して敵と間合いを取る。
「マジかよ……催眠が効かないやつとかいるのかよ……」
俺は黒い人型を疎ましそうに見やる。
人型は「カッカッカッカッ」と不気味な笑い声をあげながらこちらを見る。
いや、ここでさっきの太鼓の達人ボケのカッの方回収しなくていいからね? もうそのボケはさっき終わったからね?
人型はニタァと笑いながらまた加速を始める。
どうやら俺に抵抗のすべがないと判断したのか、以前よりも大胆に直線的に迫ってくる。
そして俺に近づいてきたと思えば、今度はもやもやとした体をパラシュートを広げるようにぐおっと展開して俺を取り込もうとするかのような技を放つ。
ヤバいな、これは回避しきれないぞ……。
俺はたったと数歩後ろに下がるが、もう遅かったらしく、いつの間にか周りは暗闇になっていた。
「これは本格的にヤバいやつや……」
俺は周囲に立ち込める負の瘴気に精神をやられそうになるのを耐えながら立っていた。
すると、瞬間。
周囲から黒い針のようなものが無数に俺の方に向かって放たれた。
次の一瞬には、あたりには鮮やかな赤が飛び散っていた。
「カッカッカッカッ!」
俺の耳にやつのけたたましい笑い声がこだました。
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「あ、異世界でもスマホ使えるんだ」
俺はスマホをいじりながら黒い人型が頑張って俺の幻覚と戦っているのを遠目に見ていた。
「あいつ速いなー。マジ怖いわ」
ちなみにあいつは今、俺と目があった瞬間から覚醒状態で深い眠りに落とされている。
催眠LEVELマックスはなんか格好いい魔法陣とかで眠りに誘うスキルかと思っていたら大間違いである。
とりあえず見た対象は全員眠らせることができます。
ちなみにあいつは今悪夢の序章を見せられている状態である。
絶望とは、期待や希望との落差が大きければ大きいほど深くなる、というような名言があってだな。
「ヒギィィィィィィ!」
途端に黒い人型は悲鳴を上げて悶え始めた。
「始まってしまったようだ……」
いったんどんな恐ろしい悪夢を見ていることやら。
近づいて聞きに行ってみよう。
あいつ言葉しゃべれるのかよくわからないけど。
悶えながら床をゴロゴロとしている黒い人型に近寄る。
「トウトスギテシヌゥゥゥゥ!」
すごいもがいてると思ったら尊死する直前だった。見た目に寄らず結構オタクだったんですねあなた……。
「ユリユリサイコォォォォ!」
そういいながらそいつは目をかっと見開いて絶命した。
うん、ここにはお前の墓石の代わりにキマシタワーを建ててやるよ。安らかに眠れ。
今回は俺のフルの力の1%ぐらいも発揮せずに勝ててしまったので手ごたえがなかったな。
次のダンジョンマスターに期待しよう。