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第2章身につけた力の片鱗②

アクセスいただきありがとうございます。

最強の代行者現る!そして黄金世代の一人との邂逅。

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

では、どうぞ

「さて、新人大会だが、これは素人だった学生が一ヶ月間の現場体験でどう成長したのかを披露する場だ。まぁたかだが一ヶ月間現場に出た程度で何が変わるか知らないが毎年恒例行事なんだ。それに今年は『黄金世代』だから観覧に光王陛下を始めとしたこの国の重鎮達が来る。面倒なことこの上ない」


隊舎に戻ってきて幾斗瀬さんから新人大会の説明を受けていた。新人大会自体は私も初耳ではない。テレビ中継もされる程度に有名で光立代行者養成学校【新陰】の卒業試験以上に盛り上がる。驚いたのはそれがこのタイミングで行われるということ。学生の頃は時期なんて意識していなかった。


「新人大会とは銘打っているが出てくるのは各隊の新人の中でも選抜された連中だ。もちろん【新陰】出身者以外も選ばれるだろう」


そう、私の卒業した【新陰】は五格と呼ばれている飛び抜けて優秀な者たちが集まっていたが、地方にも抜きに出た実力を持った学生達も存在する。それ故に私達の世代は黄金世代と呼ばれている。


「加えて新人大会は三対三のチーム対抗によるフラッグ争奪戦。どちらかの隊を全滅させるかフラッグを取るかで勝敗を決するものだ。さて、ユウカ。ここまでで何か質問があるかな?」


「あの・・・チーム戦と言うことですがうちには新人隊員は私しかいませんが、どうするんですか?」


「決まっているだろう?お前一人で出てお前一人で勝つんだ。それ以外にあると思うか?うちは見ての通り人材難なんだ。気張れよ、ユウカ?」


私は頭を抱えたくなった。この山ごりの修行で確かに強くなったと思うがそれでも各隊の優秀な新人達を三人も同時に相手にして勝ち抜ける自信はーーーあれ、あるかも?


「前にも言ったが、二年前の新人大会に出場したイロハは優勝した。その前のカズタケもきっちかっちり優勝している。おかげで星輪隊は出ればブーイングの雨あられだ。だがその分稼ぎ時でもある。フッフッフッ」


「な、なんですか・・・幾斗瀬さんのあの怪しい笑いは?」


「この新人大会は毎年優勝予想が賭けの対象になっているんだ。星輪隊は一人しか送り込まないからオッズが異常に高くなる。そこに隊長はそれなり(・・・・)の額を突っ込んで特別賞与を得ている。去年溜め込んだ分も全部突っ込む気だ」


困った時の東堂副隊長に尋ねると彼は表情を変えずにその理由を答えてくれた。ちなみに毎年倍率が最も低いのは日輪隊。星輪隊は逆に最も倍率が高い。なぜなら賭けるのは隊員のみだからだ。イロハさんの年はまぐれは二度も続かないと思われていたが果たして一年ぶりの出場でどうなるか。


「ちなみに私や度会と紅葉谷もそれなりの額をお前につぎ込む予定だ。その額は聞くなよ?発狂しかねん」


それを聞いただけでも震えが止まらなくなりそうなんですが。ジト目で睨むが幾斗瀬さんはあっと呟いて現実に戻ってきた。


「お前に渡しておく物がある。間に合わなくて悪かったな。ほら、これがお前の【星斂帝釈刀】だ。受け取れ」


布に巻かれたそれを受け取る。両手にズシリと伝わる重み。これが代行者の証。星輪隊であるという証拠。


「大丈夫。山籠りの成果を見せつけてやればいいだけだ。大丈夫、自信を持て。もし自分を信じられないなら、お前を信じる俺を信じろ。神々廻の孫に目にもの見せてやれ」


幾斗瀬さんはいつものように頭をポンと叩いた。


「そして!お前が優勝すれば俺たち隊員の財布がパンパンに膨らむ!膨らめば美味い飯が食える!頼んだぞ、ユウカ!」


少し元気と自信が湧いたと思ったのにこの無駄なイケメンによるウィンクとサムズアップをかまされたことで台無しになった。見ればあの東堂副隊長でさえ無表情だが親指を上げていた。


「大丈夫だよ!ユウカちゃんなら勝てる!なんて言ったって私から一本とったんだから!」


「イロハさん・・・」


「だからお願いね!私のお給料三ヶ月分、一年分に増やしてね!」


もう、この人達は本当に大丈夫なのだろうか。



そんなアホみたいなやり取りから一週間。私たちは今水道橋にあるドーム型の競技施設に来ていた。観客も五万人近く動員できる都内有数の施設だ。本来はスポーツがメインで使われており、アイドルのコンサートなどの利用もある。この新人大会は一般向けにチケットの販売もされており、その収益が護国光輪隊の運営資金にもなる。テレビ中継も入るのでスポンサーもついており、高額な優勝賞金やMVP賞なども出るので選ばれた各隊の新人達はやる気に燃えている。


「幾斗瀬隊長。優勝賞金の一千万円ですが、本当に私が勝ったら丸ごとそっくり私がもらっていんですね?」


「おう!もちろんだ。イロハの時もそうだったしな。好きに使っていいからな。その分俺たちはお前で稼がせてもらう。頼んだぞ、ユウカ」


父の意識が回復する様子はまだない。母にもだいぶ苦労をかけた。この賞金が手に入れば母も少しは楽ができる。美味しいご飯を一緒に食べて贅沢しよう。そのためにはまず目の前の戦いに勝たなければならない。


新人大会はトーナメント戦。幸いなことに星輪隊は優勝候補筆頭の日輪隊と同じブロックだった。確実に準決勝で激突する。去年までは日輪隊のオッズが一番低かったが今年は違う

その要因は火輪隊に配属された神々廻雲龍斎の孫娘、神々廻ミモザに他ならない。彼女の実力はすでに大々的に報じられており、実力もすでに副隊長クラスと言われている。そんな火輪隊が今年の優勝候補筆頭だ。蓬莱タツヤ。神々廻ミモザ。黄金世代の中でも別格の五人の中でもさらに飛び抜けた実力者。


「久しいの、士。昨年はお主がいなかったから寂しかったぞ」


「お久しぶりです、神々ししべ隊長。ご壮健のようで何よりです」


私と幾斗瀬さんの元に近づいてきたのは老年の男性だ。顔の至る所に残る傷跡がこれまで幾千の修羅場をくぐり抜けてきた証。年齢を感じさせない筋骨隆々な期待上げられた肉体は鍛え抜かれた刀のようだ。肩に乗せた羽織は護国光輪隊最強の日輪隊を示す純白に太陽の刺繍が施されている。この者こそ、幾斗瀬さんも認める歴代最強の代行者、神々廻雲龍斎ししべうんりゅうさいその人だ。


「ほっほっほ。そんな畏まった言葉をお主が使うと鳥肌が立つわい。やめぇい」


「ならお言葉に甘えて。爺、てめぇユウカを日輪隊に誘ったんだってな?蓬莱の倅に飽き足らずユウカまでーーーどういう了見だ?場合によっちゃこの場で決闘たぞ?」


「相変わらず血気盛んだのぉ。簪君はイサミ元隊長の忘れ形見。彼の元上官・・・としては面倒をみんわけにはいかんだろうて。じゃが儂よりお主を選んだようじゃがの」


聞く人が聞けば私の選択は最強の代行者の顔に泥を塗ったと思われるだろう。日輪隊の誘いを断って未だ世間から認知の薄い星輪隊を選んだのだ。現に神々廻隊長の後ろに控えている新人隊員―――その中には蓬莱タツヤの姿もあったーーー達の顔が鬼のような形相を浮かべて殺気を出している者もいる。戦う前から勘弁してほしいものだ。


「心配しておったが中々どうして・・・雰囲気がお主に近くなっておるな。いい傾向じゃ。これはまたひょっとするかもの」


「爺。ユウカを正しく評価するのはさすがだが、それを自分のところの新人達がいる前言うのはやめた方がいい。大会が始まる前から炎上必至だ」


「ほっほっほ。若い衆はそれくらいがちょうどいい。ではまた後での、士。簪君、精一杯頑張るのじゃぞ」


「は、はい!ありがとうございます!神々廻隊長!」


神々廻隊長が去っていく後ろにいた蓬莱タツヤ率いる日輪隊の新人大会参加者達とすれ違う。そこで彼は怒気を含めた口調で私に言った。


「調子にのるなよ、落ちこぼれ」


「そっちこそ、いつまでも自分が上に立っていられると思うなよ、七光り」


「・・・クソが」


最後に捨て台詞を吐き捨てて蓬莱タツヤ達は日輪隊の待機場所へと去って行った。私は拳を握りしめてその背中に向けて舌を出した。あぁ腹立つ。


「よく言ったユウカ!それでこそ星輪隊だ!試合で奴らの鼻をへし折ってやれ。さて、そろそろ時間になるし俺達も行くか。トシゾウ達もすでに集まっているだろうしな」


広いグランドには各隊毎に仮設のベンチが設けられていた。星輪隊以外は隊長・副隊長・隊長代理の幹部と大会参加者の三人だが、私たちは唯一全員集合していた。それだけ人数が少ないことの証左なのだが。


「さて、ユウカの出番は残念なことに卒業試験とは真逆で一回戦からだ。相手は水輪隊だ。ナオマサのところか・・・よし、遠慮なく打ち倒せ。型はそうだな・・・壱と弐で十分だろう。水を火で消してやれ」


「はい!ちなみに【星斂闘氣せいれんとうき】は使用しますか?」


「出来るなら控えろ。次に当たるのは蓬莱タツヤまでは必要ないだろうが決勝の神々廻ミモザには絶対に必要となる。手の内を無駄に晒す必要はない。同じ護国星輪隊ではあるが今は負けられない戦いだ。全力は出すに値する者にだけにしろ。加減を知るにはこの大会はちょうどいい」


「了解しました!ならまずは水輪隊を蹴散らしてきます!・・フッフッフ。ボコボコのボコにしてやる」


「あぁ・・・簪君?大丈夫かね?ちょっと不気味だよ?って聴いてないなこりゃ」


一回戦など踏み台だ。準決勝で蓬莱タツヤをボコり、決勝戦で番狂わせを見せてやる。いつまでも私を落ちこぼれと思うなよ。


私は一人闘志を燃やしたが側にいた幾斗瀬さんを始め、仲間達は皆そのあまりにもどす黒いオーラにドン引きしていたことには大会が終わってイロハさんに教えてもらうまで気付かなかった。薄気味悪い笑みを浮かべていたらしいが、そんな自覚はなかったのだが。


ここまでお読みいただいてありがとうございます。


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『続きが気になるよ』

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