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セミデカ

 黒塗りの青いナンバープレートのセダンがつけてくる。

 生前の僕は、馬鹿だったが、僕の記憶を持つAIは賢かった。

「放っとけ。何か仕掛けて、自ら墓穴を掘るような連中じゃあるまい。」


 現場は、休日の昼下がりの公園。つい先日、人が死んでいるというのに、家族連れやカップルでにぎわっている。見た目には、ごく普通の和やかな風景だ。

 しかし、AIの目には、周囲に溶け込むように停められた迷彩柄の車両がはっきりと見える。ベンチに座っていちゃつくカップルの目の鋭さも気になる。

「やつらは、自衛隊員だ。おまえさん、よっぽど大物に目をつけられてるな。」

 どうやら捜査情報は筒抜けらしい。


「最新のVDはオンラインで本部とつながっているが、わざとか偶然かはわからないが、お前が適合するのは初期モデルのオフライン仕様だけだったからな。やつら、情報がなくてやきもきしてるんだろうよ。」

 新熊火蔵にいくまかぐら。一年の大半を地下の資料室で過ごし、たまに地上に出てくる。そんな、彼を、ニイ・クマ・ヒグラシと呼ぶ。別名、セミデカ。ほとんど餌となる手がかりの無い事件の真相を手繰り寄せることから『太公望』と呼ぶ人間もいる。


 僕は、彼のあとを端末ドローンを飛ばして、現場を見ている。人型とまではいかないが、自走式ロボットである現在の僕が人混みに出ると目立ちすぎる。街中では、介助ロボットやペットロボットもめずらしくないが、一昔前のSF映画にでてくるようなつるつるの筐体は、ものめずらしい存在になってしまった。

「ここの木の根元に頭から地を流して倒れていたんだ。」

 それは、散り始めた一本の桜の木の下だった。

「多くの人が、花見の酔っ払いが寝ていると思ったそうだ。犬の散歩中の老人がみつけたらしい。」

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