犯人
「行方不明になった際に、とっておいた資料映像みますか?」
車はモニタに当時の監視カメラの映像を表示した。
夕方も日のあるうちに黒のベンツが入ってきた。裏口にとまる。店のオーナが降りてきた。運転手は駐車場奥に停め、どこかへ出て行った。
一時間ほどしてあたりが暗くなったころ、黒いセダンが入ってきた。
「前回追跡した元組長の車です。」
そのすぐ後ろから、軽のワゴン車が入ってくる。大きさや塗装の感じから、例の逃走屋だと思われる。いずれの客も、裏口から入っていった。30分後には全員、ちりぢりに出て行った。食事にしては短い。
「被害者の記憶にありました。オーナーと数人が、被害者が持ってきた鉢を見てけげんそうにたずねてます。」
AIは再現した。
「この花は君のかね。」
オーナーのといに
「お客さんが、オーナーの誕生日祝いということでおいていかれました。」
僕は、言われたとおりに答えたが
「馬鹿な。わしの誕生日は半年先じゃ。」
オーナーはそんなことも知らんのかというように僕をにらみつけた。
「この花はないというはなじゃ。」
杖をついた老人がたずねる。
「それはサギソウですね。」
オーナーが急に咳払いをした。そして話題をかえてきた。
「なんで赤いボウフラがいるんじゃ。」
「これはユスリカ。」
これを聞いていた杖の老人は、疲れたのか近くの椅子に座り込んだ。再現映像では息が荒い。僕がはっきりと認識していない細部まで再現されているようだ。