バカなバイトは使いうよう
「恨みは若干あるが、殺すほどじゃないなあ。」
火蔵がぼそっとつぶやくと、Cくんが、
「おれら疑われての?ここだけの話、いなくなってみんな困ってんの。先輩は正社員になれたけど、あいつがことわるつもりだったのはみんなしってるし、店長は誰が正社員でもよかったんだけど、人手不足だから一人減るのは痛手なんだよ。それに、あいつ獣医学部だったからか、動植物に詳しくてね。バカだったけど、役には立ってたよ。あの日はめずらしくオーナーが来ていたんで、みんな張り切ってたな。ほら、そこの白い花はあいつが持ってきたんだ。」
みると、小さな白い花が咲いた鉢がある。
「サギソウだね。ありゃ、鉢受けにボウフラがいるよ。」
火蔵の言葉に、
「ユスリカの幼虫の赤虫です。蚊と違って無害です。」
AIが答えた。
「入口の金魚のエサにしてるよ。」
Cくんが面倒見ていてくれたんだ。感動していると、
「エサやり1回100円だけどしない?」
と言ってきた。ちゃっかり小遣い稼ぎしてやがる。
当時から残っている従業員は少ない。バイトなら同僚に消息不明や死人が出たらやめるだろう。この業界は他に夢をもっている連中が多いからローテーションが早いんだ。飯代を浮かせるために働いているといってもいいかもしれない。