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えんぎでもない?
「警察の方なら、ちょっと相談したぁことがありるんじゃけんど。」
奥から、お茶を出しにおばさんが出てきた。
「近頃、見かけん車がよく通るようになって。近所の連中はミカン泥棒じゃゆうんよ。見張れりゃ、えんでしょうが、過疎化で人通りものうて。」
さっきの連中のことだろうか?
「まだ、収穫時期じゃないので心配ないでしょう。それでもというなら、監視カメラをつけるのがいいです。毎日写真を撮っていれば、もし、被害があっても証明しやすくなりますよ。」
「バカなやつだが、いとこじゃからな。もし、引き取り手がおらんようなら言ってつかあさい。早く供養してやりたいけえ。」
ありがたいことだ。死んで人の情けを知った。
「感動的なところ申し訳ありませんが、裏に迷彩柄の特殊車両があります。それと、赤外線センサーが裏にある旧母屋に何人か人影を検出しました。」
車に戻るとAIが淡々と告げた。
「先回りされてたか。後ろのBMWは囮だったね。」
え?何?さっきの感動的なシーンは、すべて芝居だったてこと?
「一刻も早く遺体を引き取って処分したいってことかな。」