楓の家
公民館についた頃には空は薄暗くなり始め、時刻は18時を回っていた。
公民館には美味しそうな料理が用意され、村人達が出迎えてくれた。
この村の村長と名乗る老人が自分達の前に来てお辞儀をした。
「この村にお客さんが来るのは久しぶりでね。来てくれてありがとう。
粗末なものですが、好きなだけお召し上がりください。」
村長は席から離れていった。
目の前に並べられているのは、新鮮な魚の刺身。なんの魚かはわからないが身が引き締まっていてぷりぷりしているのがわかる。
その他には、山菜の天ぷら。緑がいい色をしていて衣もカラッと上がっていてとても美味しそうだ。
そして、魚で出汁を取った味噌汁など、人目見ただけで美味しそうだと思える料理が多々並んでいる。
村人達もとても楽しそうに会話をしている。
村人にも聞いて回りたいところだが、今の時点で誰が黒かわからないため、1度様子を見張っておこう。
食べ終わると同時に隣で一緒にご飯を食べていた楓が話しかけてきた。
「家に忘れ物ちゃって…ついてきてくれませんか?」
向坂が頷くと、楓は嬉しそうにありがとうと笑った。
夜の探索は危険を伴う。
幼い少女には負担がかかってしまうだろう。
外は街灯などは殆ど無く月明かりのみが夜道を照らす。
楓にふと、疑問に思った事を質問する。
「何を忘れたんだい?」
楓は恥ずかしそうに下を向く。
「服を…」
最初彼女が何を言っているか全わからなかった。
もちろん服はいま着ている。
少し話を続けていると、楓は今日、自分と一緒に民宿に泊まりたいと思っている事がわかった。
親が心配しているだろうと止めたが楓は泊まること言う事を聞かない為、村の話を聞くためと理由付け、一緒に泊まることにした。
夜道を少し歩くと楓の家についた。
大きな白い建物が家の裏に見える。
どうやら学校の裏手にあるようだ。
夜の学校からは不穏な空気が漂っているように思えた。
楓の家は洋館みたいな建築物で普通の家の数倍の広さがあるように見える。
庭は整備されていて、昼間に来たらすごく綺麗なのだろう。
楓は玄関前で、少し待っていてくださいと言い荷物を取りに行く。
数分後母親らしき女性が家から出てきて向坂の方へお辞儀をした。
「こんばんは。観光客さんですか?
楓がお世話になってます。」
顔を上げた母親は目が釘ずけになるような美貌よ持ち主だった。(APP18)
確かによく見れば楓によく似ている気がする。
ふと開いた扉の方から甘い匂いが漂ってくる。
お菓子?いや、何かの匂いを隠しているかのようなお香の匂いに感じる。
外まで匂うという事は相当強い匂いなのだろう。
もしかしたら中に、何かを隠しているのか…思ってしまう。
考え事をしていると、楓が準備を終えて出てきた。
「お待たせしました。」
楓はピンク色のリュックサックを背負っている。
その中には服が入っているのだろう。
夜は楓も居ることだし、楓の家に行く途中にあった万事屋でお菓子でも買ってから帰ろうか。