彼岸花畑
登場人物
向坂 蓮
年齢・22
職業・探偵
楓
年齢・3~4年生
職業・小学生
老人
年齢・?
職業・ジャーナリスト
彼岸村の由来になった彼岸花畑を見に行く為に図書館を出た向坂と老人は楓の案内で現地を目指した。
村の中、彼岸花畑に向かう途中、
突然の寒気が向坂を襲った。
何かに見られているような…いや、何かを見てしまったような…。
このよくわからない寒気に怯える。
隣を見ると老人も真っ青な顔をしていた。
老人が口を開く。
「何か見てはならないものを見た気がする…それが何かはわからない。」
楓は後ろを振り向くと、
「どうしたんですか?」
と不思議そうな表情をする。
彼女は何も知らないかのように。
楓は人間ではないから何も感じないのか?
ふと、そんな考えが頭をよぎる。
老人も楓の鈍感さに疑問を感じているようだ。
楓の後ろを歩き続けて20分。
森を抜けた瞬間、景色が一変する。
そこには一面に彼岸花が咲き誇っていた。
見ただけでも数千万の花がありそうな花畑は、まるで真紅の絨毯のように見える。
風で花が揺れる。
ここの空間だけ異界のように感じる。
1人の老婆が揺れる彼岸花を見つめている。
彼岸花とは
お彼岸頃に咲く花である。
季語・花言葉
秋の季語。
花言葉は「情熱」「独立」「再会」「あきらめ」「転生」。
「悲しい思い出」「想うはあなた一人」「また会う日を楽しみに」。
迷信
花の形が燃え盛る炎のように見えることから、家に持って帰ると火事になると言われる。
老人は彼岸花を見ながら先程言わなかった事を話してくれた。
・ここの彼岸花は死んだ者達を肥やしにして咲いているんだ。
・ここには本島に帰れない戦死者の遺骨が未だに数千人埋まっていると言われている。
そして老人は手をあわせる。
向坂もつられて手を合わせた。
向坂はずっと花を見つめている老婆に少し話を聞いてみたいとと思い話しかけてみた。
「貴方はこのむらの方ですか?」
老婆は首を縦にふるが声を発しない。
「どうしてここに居るのですか?」
老婆は少し困ったように笑う。
どうやら声を出すことが出来ないのかもしれない。
ふと楓を見ると、とても心配そうに老婆の方を見ているのがわかる。
老婆に話しかけても耳が遠いせいか、なかなか言葉が通じないらしいし、筆談も難しい為、老婆に何も聞けないのは惜しいがここを離れることにした。