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アリス、異世界テンプレに気づく

 今日も今日とてネット小説にかじりつくアリスお嬢様は、ついに気がついてしまったようだ。


「じい!爺やは居るかしら?!」


 自室のパソコンを見ながら大声で執事を呼びつけたところ、嫌な顔ひとつせずに老執事はアリスのもとへ向かった。


「いかがいたしましたか?」


「私ね、気づいてしまったのよ」


 得意げに微笑み、ふんすと鼻息荒くパソコンのモニターを指差す。


「あのね、異世界ものってパターンが決まっているのよ!」


「ほほう、例えばどのような?」


 自慢の執事ヒゲを指先でいじりながら問うと、アリスはデコレーション過剰な手帳のページを開いてこう続ける。


「転移後のイベントがほぼ同じなのよ。まずは最初の都市に向かう道中で必ず馬車が襲われている現場に遭遇するわね」


「それは物騒な話ですね」


 この執事も少しズレている。


「それでね、主人公はそれを助けるんだけど、馬車に乗っている人がこの先の都市の権力者なのよ。領主、領主の家族、商業関連の実力者、まぁこのあたりが多いかしら」


「なるほど、そうしますと主人公のこの先の生活がある程度保証されるわけですな」


「その通りよ。で、都市に到着後は冒険者ギルドでお馴染みのやつね。絡まれて実力見せつけて、なんだアイツはー?!ってやつよ」


「地元権力者とコネのある余所者に返り討ちに遭うとは、絡んだ方も災難ですな」


 なぜ老執事はそっち目線なのか分からないが、確かにそうだ。


「そのあとはとにかく女の子を次々とパーティーに加えていくの」


「あまり下半身に節操がないとロクな死に方はしないでしょうに」


「いいのよ。異世界女子は寛容なのよ。新入り女性を邪険にするような娘は見たことないもの」


「じいもそんな世界でやり直したいものですな」


 どうやら老執事はハーレム願望を持っているようだ。


「転生モノの場合はこの冒険者ギルドの前に学園編が入ることが多いわね。そこで季節の行事ごとに新しい女の子と仲良くなるのよ」


「そんな男は同性から嫌われるでしょうな」


 老執事は苦い顔だ。過去になにかあったのだろうか。


「ところでお嬢様、それだけパターンが決まっていたら皆様飽きるのではないですか?」


「そこがポイントなのよ。パターンをなぞっていく中でどれだけオリジナリティーを出せるかが読者を飽きさせないかに繋がるのよ」


「なるほど。では人気作品はどういった特異性があるのですかな?」


「まずは主人公の転生、転移前の職業とか性格ね。ニート、社畜、引きこもりのコミュ障なんかが特にウケるのよ」


「夢も希望もない人生からの一転ハーレムですか、なるほど。夢がありますな」


「でもね、この初期設定をほぼ生かしていない小説が最近多いのよ。現代社会で根暗ライフ満喫してた若者が異世界にいった途端にモテるわけないじゃないのよ」


 お嬢様は根暗に厳しいタイプのようだ。容赦がない。


「辛辣ですな。夢があれば宜しいかとは思いますが、設定を生かさずパターン通りでは確かに残念な内容になるのでしょうな」


「あとは、転生、転移後の種族ね。モンスターとか、異種族とかね」


「なるほど。人ではない目線で話を進めれば、パターン通りでも違った雰囲気が出せる、と」


「ところがね、これも生かさないことが多いのよ」


「と言いますと?」


「人間じゃないと人間の街に来られないでしょう?だから結局人間になるのよ」


「なら最初から人間にしておけばよいのでは?」


 ある種のタブーに触れているようだ。それを言ったらおしまいだ。


「それ関連でもう一つ、途中でハーレムに加わるのがドラゴンが人化したロリババア、なんてのもパターンね」


「ドラゴンのままの方が強いと思うのですが、どうしてそのドラゴンはそんな能力を持っているのですかな?」


「そんなもの、主人公が人間だからよ。魔物を率いる魔王ですら、それが主人公ならほぼ人間みたいな姿なんだもの」


「なるほど、やはりパターンに落とし込む以上は、あまり奇抜なことは出来ないのですな。ちなみに、主人公が女性の場合はどうなのですか?」


「さすが爺ね、良いところに気がついたわ。女性主人公の場合は、ハーレム化しないのよ。でもその他の部分はほぼパターン通りね。でも一つ大きな問題があるの」


「問題ですか。それは?」


「女性主人公の小説はね、なぜか文章がメチャクチャなものが多いのよ。誤字脱字に始まり、日本語として成立していない、主語と述語がバラバラだったりして、正直何を書いてるのか理解するのに精一杯で、内容に集中できないレベルだったりするの」


「そうなのですか。そのへんは作者の性別なんかも何か関係があるかも知れませんが、追求すると後が怖いのでやめておきましょうか」


「賢明な判断ね。さすが爺やだわ。それじゃあ最後に、パターンの向こう側のお話よ」


「向こう側、と申しますと、パターンを使い切った後ということですな」


「その通りよ。このパターンの向こう側にはね、SFが待っているのよ」


「SFですか、ファンタジーの向こう側にさらにファンタジーが待っていたのですな」


 老執事とアリスは窓の向こうの夜空を見上げ、遠い顔をした。


「最終的には神とか、世界の管理者とか、時空を超えたバトルが待っているの・・・」


「それは、ファンタジーですなぁ・・・」




 この小説はフィクションであり、特定の作品を批判するものではありません。アリスは異世界小説が大好きです。

 

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