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第7話 尊敬の眼差しと「ひろ子ちゃん」

「あの・・・」


セントラルタウンの裏通りを歩いていると一人の青年に声をかけられた。背の高さは180センチくらいでやせ型。年齢は20代前半くらい。見た目はひょろっとして、あまり強そうではない。


「なんでしょう?」

「私はランベルト・バウマンといいます」


「はぁ」

「レオナルドリゾート株式会社の社員で」


「はぁ」

「リゾートに興味ありますか?」


なんと。キャッチセールス、らしい。日本ではキャッチセールスの規制が厳しくなっていたけど、この世界はどうなのかな。もっとも、さすがに、これで買う人、いないだろうなぁ。


元々、人権制限者の僕では、リゾート会員なっても入れはしないと思うけどね。買えっこないと分かっていると安心感で話を聞くことができる。

この世界のキャッチセールスはどんな話をするんだろうと興味が出てきて、ついつい、話を最後まで聞いてしまった。


「今なら半年たった100クレジットでスタートアップ会員になれるんです。いかがですか?」


ずいぶんと安いんだなぁ。といっても入れないけど。


「ごめんなさい。入れません。人権制限者なもので」

「えっ、すいません。知らないことと言え失礼しました」


この人、ずいぶん腰が低いな。面白いからキャッチセールスの世界を聞いてみた。やっぱりすごく大変らしい。完全歩合給で売れないと無給。その代わり、1か月のノルマを達成すると正社員になる研修に参加できるらしい。


「でも、あんまり売れていないんじゃないですか?」

「実は、今日で3日目でゼロなんです。1か月のノルマが150件の契約、とても無理です」


だろうなぁ。

この人の話し方じゃ、誰も契約しないはず。どうせ暇だし。ちょっと手伝ってみてあげようかな。そんなことを伝えたら、よろしくお願いしますとなって、一緒にキャッチセールスをすることになった。

100クレジットの契約をすると歩合給で80クレジットもらえるらしい。そんなに払って会社は儲かるのか、って聞いたら、入会した人を上級の会員にしていくという方法で利益を確保するらしい。まぁ、エステサロンのお試しコースみたいなものかぁ。


先ほど説明を聞いたから、僕もお客さんに声をかけてキャッチしてみる。もちろん説明もできないし、契約は僕ではできないから、いい感じになったら彼のところへ連れていって、契約になったら歩合の半分をもらうという約束をした。


実は僕、20代の頃、友達のキャッチセールスを手伝ったことがある。どうもセンスあるみたいで初日から友達以上に契約を集めたという経験があるんだ。

キャッチセールスのポイントは会話の主導権を取ること。そのためには、世間慣れしていない人をみつけるのが重要だ。


僕はメインストリートに戻って、お客さんになりそうな人を探してみた。


「あ、ひろ子さん、みっけ」


渋谷でキャッチセールスをしていたときのお客さん候補の仲間内の暗号がこれ。

世間慣れしていない人を「ひろ子さんとひろし君」と呼ぶ。

いかにも、お化粧をがんばってしていますって、感じがする男女。その割にどこかちぐはぐだ。


「こんにちは」

「はい?」


「ちょっと聞いてもいいですか?」

「はい、なんでしょう」


「この星系はマリンリゾートで有名だと知っています?」

「まぁ」


「もう行きました?」

「まだ、です」


おやっ。ずいぶん素直な人がいるなぁ、まさにひろ子さん。15年前のキャッチセールスのノリで話しかけてみた。

ランベルトさんは、ちょっと離れて、隠れてこっちをみている。


「どうでしょう。いつか行きたいと思うなら、今月行ってみませんか?」


嬉しそうにお話を聞いているひろ子さん。調子に乗って契約につながる様に話しまくってみた。


「あ。残念ながら今じゃないとこのお話は契約できないですよ。今日だけ、それもあと3名だけの特別キャンペーンです」


こんな、ありがちのセールストークだけど、あっさり誘導されまくり。結局、彼女と彼女の友達分ということで、スタートアップ会員、三名様契約。笑


チャララッタラー♪


チュートリアルのチュー太です。

「ユウトさんはセールスレベル1になりました」


「ええっ、なんでチュー太が出てくるの?」

「スキルのレベルアップですから」


「ここはコンピュータスクリーンないじゃない?」

「あれ、もしかしてユウトさん。チュー太はスクリーン上の存在だと思っていました?」


「えっ、違うの?」

「チュー太は、転生者専用のチュートリアルキャラです。どこでもレベルアップしたら出てきます」


「あ、そういうことかっ。じゃあ、転生者以外はレベルアップとかしないの?」

「実際はレベルはあるんですが、本人はレベルアップしてもわかりません」


初めて知った、チュー太の秘密。そういえば、今、周りの風景が見えなくなっている。チュー太だけ見える。


「それはそうと。セールススキルは前世コンバートができます。コンバートしますか?」

「もちろん、します!」


「ユウトは前世コンバートによりセールスレベル3になりました。習得レバレッジは2となります」

おおっ。レベル3。一人前のセールスマンくらいになったかな。


すっと、チュー太が消えて風景が戻ってくる。


「ユウトさん!すごいですね。いきなり3契約ですよ」


3日間ボウズだったバウマンさんが尊敬のまなざしで見てくる。

なんかちょっと気分いい。


「いやぁ、それほどでも」


実は、ここでのキャッチセールス、すいぶんと楽みたい。とにかく、ひろ子さんもひろし君もあちこちにいるし、警戒心ゼロだし。


「この星系の皇国ソルートの民間コロニーは急速に大きくなっているんですよ。人口はこの1年で30%も増えているんです」


なるほど。どんどんと新しい人が民間コロニーに移民しているのか。ひろ子さんもひろし君も多いはずだ。

バウマンさんの会社もそれを見込んでリゾート開発しているのか。


「それじゃ、あと3時間くらいセールスしてみましょうか」

「よろしくお願いします」


結局、3時間で13契約をゲットした。1契約で僕の取り分は40クレジット。520クレジットになった。なかなか、割りのいいバイトだ。


でも、さすがにひさしぶりのキャッチセールスは疲れた。バウマンさんと一緒に祝杯をあげることになった。この異世界では15歳になると飲酒は解禁になるらしい。一緒にバウマンさん行きつけの24時間営業の居酒屋にいくことに。

もちろん、人権制限者立ち入りオッケーのお店。

最初は割り勘でと言ったんだけど、おごってくれるということで素直におごってもらった。


なんだかんだで楽しい街歩きになって、夜の10時くらいに軍の宿泊所にかえってきた。


ユウトの獲得スキル一覧


レーザー射撃  レベル1

シミュレーション・レーザー射撃 レベル13 レバレッジ8

  サブスキル/精密射撃 溜め射撃 未来予想射撃 連続射撃

テニス     レベル4 レバレッジ5

  サブスキル/ブーストサーブ

セールス    レベル3 レバレッジ2

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― 新着の感想 ―
[一言] まさかSFでシューティングの名手が転生後にセールスマンをすると言う想定外の行動が面白かったですね。
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