第6話 宇宙ステーションと街歩き
次は明日朝8時予定です
「ほら、あそこが一日だけ停泊する宇宙ステーションよ」
カンナさんが指差す先には、宇宙構造体がいくつかある。一番大きい構造体は宇宙ステーションで、そこには軍事基地もあり護衛艦が接岸する港もある。護衛艦『サザナミ』はその宇宙ステーションに向かっている。あと30分で到着する予定だ。
宇宙ステーションから少し離れた構造体が民間コロニーで、皇国ソルートの人々が活動し生活もする場所だ。
民間コロニーは、薄い箱がいくつも連なっているように見える。ひとつひとつの箱の高さは10mで箱の幅と奥行きは300m~600mで正方形のものもあれば、長方形の物もある。
民間コロニーというとアニメ「ガンダム」世界の円柱形のものをイメージする人も多いが、この世界では
薄い箱形が基本で、何十もの箱が連なってひとつの宇宙構造体を作り出している。
どうして円筒形ではないのかというと、この世界では人工重力が実用化されているのが大きい。円筒形の
コロニーは、遠心力で円運動の外側に擬似重力を生み出すことを想定した形状だ。人工重力があれば円筒状である必要がなくなる。
人工重力の技術は、素粒子の「重力子」が発見されたことで急激に発展した。磁石は磁気を帯びた磁気双極子が一定方向に並んだ構造をしていて、鉄等を引き寄せる効果がある。
それに対して重力子は磁力ではなく重力を生み出す素粒子で一般の物質はさまざまな方向に向けて存在している。人工重力を生み出す物質は、重力子が一定方向に揃えてあり、望む方向へ重力を発生することができる物質となっている。
民間コロニー等の宇宙構造体は、薄い箱の底になる部分に重力プレートが置かれている。その上の空間に重力が発生して重力がある生活を実現している。重力プレートから10m以上離れた地点では、急速に重力が弱まる傾向があるため、10m程度の薄い箱が宇宙構造体の基本形になっている。
民間コロニーの中には人々が生活する上で必要なものがすべて作られている。住宅、事務所、学校、公共施設。地上と同じような生活ができるようになっている。
向かっている宇宙ステーションの近くにある民間コロニーは、人が住み始めてまだ20年の若い宇宙都市。人口20万人で主に軍人の家族が住む場所であり、ステーションから来るゲスト向けに数々のサービスを提供する施設も用意されている。
そんな話をカンナさんから聞き、これから向かう宇宙ステーション、そして、そこに併設されている
宇宙都市のことを質問していた。
「宇宙都市には、僕らは行くことはできるのかな?」
「もちろん、行けるわよ。今回は宇宙ステーションに停泊する時間があるから、24時間の休暇がもえらるの。その時間を使って、宇宙都市にある街にいけるわよ」
そうかぁ。街があるんだ。どんな街なのかな。
「レストランとかお店とか、街にはそういうの、あるよね」
「もちろん、あるわよ。そりゃ、いろいろとね」
と、なると。カンナさんとふたりで街歩きできるかもしれない。カフェでお茶したり、お店でショッピングしたり。
美少女とふたりでデート!
いままでこんなに仲良くなった女性はいなかった。僕もカンナさんも同じ15歳。リア充なの青春。
わくわくするなぁ。
人生で初めての経験を今、することになった。
そうデートの誘いだ。
「じゃあさ。休暇時間で一緒に街を歩かない?」
さりげなく言ってみる。もっとも、ちょっと声が裏返っているから、ドキドキしているのはバレバレだ。
「いやよ」
あっさり撃沈!リア充への道は遠いなぁ。
カンナさんは、いつも休暇は、宇宙ステーションに用意される宿泊所で過ごすらしい。
「なんで街に出ないの?」
「行ってみれば分かるわよ」
理由は教えてくれないが、僕が街にいくのを反対する感じではない。街に出るにはお金がかかるが、どうも僕はそれなりに持っているらしい。
個人で使えるキャッシュカードみたいなものがあって、1万クレジットとちょっと入っている。
1クレジットが現代の価値でだいたい100円ということだから100万円くらい。一日街で過ごすくらいのお金はなんとかなるだろう。
護衛艦がステーションについて下艦した。
そして、僕は今、民間コロニーのセントラルタウンにいる。
宇宙ステーションから、イエローチューブと呼ばれている列車に乗ってセントラルタウン駅にいく。
セントラルタウン駅は民間コロニー真ん中にあるセントラルタウンプレートにあり、600mx200mのサイズのプレートだ。高さは他のプレートと同じ10m。
セントラルタウン駅で降りると広場があって、その先にショッピングモールがある。ショッピングモールは500mほど続いていている。
10m上には天井があるはずだけど、まるで青空があるように見える。どういう仕組みかは分からないけど、ちゃんと24時間ごとに朝、昼、夕方、夜と空が変わっていくらしい。今は、午前11時くらいだから、昼ちょっと前の感じになっている。
ショッピングモールに入ると、レストラン、洋服のブティック、洋服のブティック、雑貨屋さん、カフェ。数多くの店が並んでいる。ひとつひとつのお店は横10mくらいで現代日本で言えば中型店舗。人通りも多く、それぞれのお店はお客さんでにぎわっている。
宇宙旅行もしている未来のはずだから、街の状況は全然違うんじゃないかと思っていたけど、それほど現代日本と違いがない。いくら技術が発展しても人間が利用するとなると、あまり変わらないものらしい。
最初は右側のお店を中心に見て歩く。15分くらいで一番奥の所まで来る。一番奥は公園になっていて、
ベンチで昼寝している人もいる。
僕その前でUターンして、今度は左の店舗を見ていく。たこ焼きみたいな軽食を売る店、帽子屋さん、テニス用品屋さん。
僕は初めての街に来ると端から端まで歩いてみたくなる。街を見ればそこに住んでいる人たちがどんな暮らしをしているか、実感することができる。何が流行っていて、何を楽しみにしているか、見えてくる。
「あ、パチンコ屋さんだ」
もちろん、パチンコではないだろう。もしかしたら、スロット屋さんかもしれない。要は庶民的なギャンブルを提供しているお店だろう。賑やかな音楽とガチャガチャした色使いの看板で分かる。
さて、どうしようか。30分ほどで往復してしまった。まだお昼ご飯には早いし。カンナさんと一緒なら
楽しかったんだろうけど、一人だとそれほどやりたいこともない。
なんとなく、男性向けの洋服を売っているお店に入ってみた。
ビビビー♪ ビビビー♪ ビビビー♪
びっくりした。なんかすごい音。火災報知器が鳴ってるいような音。すぐに、店員がやってきた。
「なんですか、あなた!このマーク見えないんですか?」
入り口の近くにいるアルファベットのLに駐車禁止の標識が重なったようなマークを指差す。
「なんですか、これ?」
「もしかして、とんでもない田舎者?このマークは人権制限者立ち入り禁止のマークよ。あんたみたいな
人がお店に入らないようにしているのよ」
ええっ。そういえばユウトは人権制限者だった。護衛艦内だと特に気にしないでいられたけど、街みたいなとこでは、やってはいけないことが規定されているのか。
気にしてみると、ほとんどのお店が人権制限者立ち入り禁止のマークがあった。
「行ってみればわかるよ」
カンナさんが言っていたのは、これかぁ。街は人権制限者に優しくないらしい。困ったなぁ、それじゃ
街のほとんどの店が入れないということか。もしかしてと思って、メインストリートの途中にある横に入る道を通って、メインストリートの一本横の道に行ってみる。
そこも商店が並んでいる。裏通りというよりも、サブストリートかな。メインストリートよりは人権制限者立ち入り禁止マークは減るが、まだ多い。もっと奥に入ってみると、まさに裏通りって感じの路地に出た。
ここらのお店は立ち入り禁止マークはない。でも、呑み屋さんみたいなところが多くてまだやっていない。
「あの。。。。」
裏通りを歩いていると、ひとりの青年が声をかけてきた。
ユウトのスキル
レーザー射撃 レベル1
テニス レベル4 レバレッジ5
サブスキル/ブーストサーブ
シミュレーション レーザー射撃 レベル13 レバレッジ8
サブスキル/精密射撃 溜め射撃 未来予想者外科 連続射撃