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第3話 むかつく貴族と身代金

お偉い艦長からの呼び出し・・・うーん、参ったなぁ・・・何やってしまったんだろうか、僕。


呼び出しと言うと小学校の頃、授業をサボってゲームセンターに入り浸っていたのがバレた時のことを思い出いだしてしまう。校内放送で校長室に呼び出されたっけなぁ。


「なんで艦長に呼び出されるんだろう?」

「私も分からない。艦長はふだん、人権制限者とあまり話したりしないのに」


カンナさんも分からないのなら、僕に分かるはずはない。ただ、ひとりで怒られるのは怖いから、カンナさんも付き添ってもらおう。お願いすると、カンナさんは興味深々って感じで着いてきてくれた。


「搭乗員ユウトです」


入り口で言うと、艦長室のドアが開く。高級そうな木目で統一された部屋。広さは6畳くらいか。大きな机がひとつあって、そこに白いひげを蓄えた40代くらいの男が立っている。

その横に、真っ赤なユニフォームを着た若い男がひとりいる。


「入れ。なんだ、カンナも一緒か」

「はい。ユウトに同行を依頼されました」

「まぁ、いい。ふたりとも入れ」


白ひげが、オキタ艦長。きっとクリスマスにはサンタをするんだろうなぁ。真っ赤な服に大きな袋。似合うだろうなぁ。

そんなことを考えていたら、隣の赤い男がいきなり口を開いた。


「君がユウト君かい。君の射撃は見事だった。

赤い彗星と呼ばれた私をなんと一撃で撃墜するとは見事だ」


ん?撃墜。。。。あ、もしかして、あのノロマな戦闘機?


「ユウトが撃墜した第七編隊のリーダー機に乗っていたのが、この男だ。彼の救命ボールを搭載艇で回収したところだ」


あの赤いパワーアップアイテムは救命ボールだったのか。


「私は星系ネーデルの統主、クラーセン公爵家の第三太子、エルヴィンである」


統主?第三太子?単語が分からない。。。。要するに、僕が撃墜したのが何か偉い人って、ことかな?

となると、、、、どうなるのかな?

疑問だらけで頭をひねっていると、艦長が説明してくれた。


「彼は今、我が皇国ソルートの捕虜となった。そして、彼の身柄は今回の作戦の責任者、私と、撃墜したユウト、ふたりの共同管理下に置かれる」


皇国ソルートはこの護衛艦が所属している国。艦内には名前を書いたプレートがあちこちにあるから、なんとなく知っている。


でも、他のことは、良く分からない。しかし、こいつ。なんかムカつく。へらへらして。公爵というか貴族として生まれてのほほんとして生きてきたんだろう。


僕みたいにシューティングゲームをする100円も自分で近所のおばさんの手伝いをして稼いだ。。。そんな苦労したことがないんだろうな。


「ユウト、彼をどうしたい?」

「よし、殺しましょう!」


すると、エルヴィンと名乗った男はあせったように言う。


「ちょっと、ちょっと!いきなり何いうんですかっ。帝国の戦時法ってご存知?捕虜にはちゃんと人権が認められていてね。。。」


その姿を見た艦長もにやりと笑って言う。


「確かに、こいつは殺した方が世の為だな、きっと」


「艦長まで。何、言っちゃってるの?冷静に話し合いましょうよ。話せばわかるって言葉もある訳ですし」


横を見ると、カンナさんもにやにやしている。どうも皇国ソルートの国民は、貴族という人種がだいたい嫌いらしい。


「艦長、発言を求ます」


カンナさんが声を上げる。


「カンナ、何かね。君は直接関係ないだろう?」

「先ほど、ユウトに依頼を受けています。代理発言をしたいと思います」


あ、そうそう。カンナさん、代わりに言ってください。どうしたらいいのかを。


「貴族なら、ただの捕虜としてお互いの捕虜交換にするのは無駄だと思います。直接、公爵家に交渉して、身代金を用意してもらったらどうかと思います」


「うむ。すでにエージェントを通して、交渉を始めておる。ただし、共同責任下にあるユウトの意見も確認しないとそれ以上進められなくてな」


カンナに確認すると、身代金は奴隷解放の為のポイントに使えるらしい。おおっ、やっぱりあの赤いのはボーナスアイテムだったのかっ。


「それでは艦長。この男の身代金を僕とカンナさんの解放ポイントに使いたいんですが」


どうだ。どのくらいの身代金になるか分からないけどさ。美少女と一緒に解放されて、ふたりはラブラブに。最高の展開っ。


「それはできない」

「えっ、駄目なの?」


オキタ艦長にあっさり、一言で却下された。


「ユウト、気持ちは嬉しいけどね。私たちの解放ポイントは他の人からもらうことはできないの。

自分でポイントを稼ぐことでしか解放されることはないのよ」


カンナさん。ちょっと微妙な顔をしているなぁ。気持ちは嬉しいけどって感じ。そりゃ、早く解放されたいよね。いつまでもメイド姿なんてしたくないよね。


それから3時間。僕らは艦長室で待機していた。優男の貴族は、別の搭乗員が来て連れていかれてしまった。

僕らはその間、待っていた。エージェントを通して、身代金の交渉が決まるのを。


「はい。オキタだが。そうか。ご苦労だった」


艦長が誰かと電話で話している。どうも、身代金交渉が終わったらしい。


「おめでとう、ユウト。君の取り分は10万クレジット。解放ポイントに換算して、10万ポイントだ」

「えっ、それだけ?貴族なのに少ないなぁ」

「軍に入るのは、その10倍だよ」


100万クレジット。日本だと1億円相当の身代金。

これが多いのかどうか。分からないけど、まぁ、いいか。


自称、赤い彗星。星系ネーデルの統主クラーセン公爵家の第三太子、エルヴィン・クラーセン。

彼は赤い太陽が船腹に大きく描かれた中立軍の高速艇の引き取られて、去っていった。


「ユウト、君を私の永遠のライバルとして認めよう」


そんな台詞を残して。。。もちろん。僕は全くライバルとして認めるつもりなんてない。


護衛艦「サザナミ」はこのあと、護衛隊の僚艦3隻と合流して4隻で輸送船団の護衛任務に就く。

系外ワープポイントから、星系ネーデルの第4惑星に向けて物資を輸送する船団だ。


皇国ソルート軍は、星系ネーデルが所属しているイウロ連邦軍と星間戦争をしている。星系ネーデルは、イウロ連邦のはずれにあり、今、皇国ソルート軍が侵攻をしている。イウロ連邦の貴族に支配されていて、しいたげられている人民を解放する為に。



第4惑星は皇国ソルート軍の最前線基地がある。そこに向けて、エネルギーや食料といった補給物資を届ける輸送艦隊がワープアウトしてくる。

いよいよ、護衛艦「サザナミ」が所属する護衛隊の任務がはじまるのだ。


ブックマークしてもらえるとうれしいです。

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