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第2話 レベルアップと美少女奴隷

「第一級戦闘警報発令。総員、30秒後の戦闘に備えよ」


いよいよ来なすった。敵の本体。

前回の攻撃がただの偵察だったのに比べて、今回の敵襲は本気のはず。

なんといっても、攻撃機を伴っている。


敵の種類には二種類あって、戦闘機と攻撃機。


戦闘機は護衛艦が装備している対空ミサイルを叩き落とす為の機体。


護衛艦「サザナミ」は多目的ミサイルラック8連装2基装備している。

対艦ミサイルも使えるが通常は対空ミサイルが標準としてセットされている。

すべての対空ミサイルを敵に向けて撃つと編隊の近くで子ミサイルに分裂する。


攻撃機はこの対空ミサイルに弱い。その為、対空ミサイルを打ち落とすことができる戦闘機に

援護されている。

攻撃機は対艦ミサイルを2本搭載していて、それが命中する護衛艦「サザナミ」クラスだと

20%程度の損傷を受ける。

攻撃機を撃退する為には、まず戦闘機を無力化しないといけない。


「ほら来るわよ。他の記憶はいいから、あなたの正確射撃スキルだけは思い出してね」

「そんなこと言われても。。。」


空白症候群、つまり記憶喪失だと思われているから、カンナさんから、

今回のミッションに必要な最低限の知識だけは教わった。

しかし、射撃スキルを取り戻すことは当然ながらできていない。


僕らが操作する対空レーザーは、対戦闘機のメインウェポンだ。

本来、「サザナミ」護衛艦には対空レーザーは4砲塔あり、それぞれの砲塔には、10門の対空レーザーが装備されている。4基40門の対空レーザーで戦闘機を打ち落とす。


しかし、今の護衛艦「サザナミ」には、対空レーザー要員が僕と彼女のふたりしかない。本来の4基の半分の2基しか使えない。だから、本来の半分の対空能力しかない護衛艦「サザナミ」は危機的状況にあるといえる。


前回の偵察攻撃で、対空能力が半分しかないことはバレている可能性がある。僕が戦力外なので1/4だと思われているかもしれない。


相当、やばい状況かも。


「とにかく、正確射撃スキルを思い出して。それがあれば、なんとかなるから」


なんとかなる。逆に言うと、なんとかならないと。撃沈、ゲームオーバー。

えっ、死ぬってこと?僕もカンナさんも。


ゲームオーバー。


それで、自機は何機あるんですか。1プレイいくらですか。そういうゲームセンターの話じゃない。ゲームオーバーは撃沈。お終い。


「ほらきたわよ。いい?正確射撃よ、よろしくね」


よろしく、言ったって、そんなの知らない。実戦体験はおろか訓練も受けていない。

できっこない。。。。。。


と、泣き言をいうのは普通の男。僕のシューティング魂をなめてもらっては困る。初めてのシューティングゲームだからと言ってできないなんて言わない。


ダライアスに出会ってから34年間。ひたすらシューティングゲームだけ考えてきた。クラスメイトが女の子とデートしている時間だって、勉強している時間だって、僕はゲームセンターに通い続けてきた。

勉強もそこそこにシューティングゲームばかりやってきた。


それは、きっと、こんな状況であっても、カンナさんを守る為だったのだ。今こそ、シューティング魂の本領を発揮すべきだ。


やる気がふつふつと湧き上がってくる。僕は目を閉じて大きく深呼吸を1回、息を吐いて、吸う。

両手を合わせて印を結びたいところだけど、グローブで固定されているから、それは省略しよう。


ボス戦の前の精神統一シーケンスを行い、スクリーンを見つめる。

敵が接近してくる。前回と同じ、戦闘機の編隊が7つで21機。攻撃機は後ろから一団になって6機。


初めてのゲームをするときの王道、まずは、敵機の動きをゆく観察する。


「何やっているのよ、撃ちなさいよ」


カンナさんが文句を言う。だけど無視することにする。

初めての敵の場合は、まず動きを確認する。

単純に接近している訳ではなく、らせん状に回避運動をしながら接近してくる。


先頭の編隊を狙って10門のレーザーを散らしぎみに打ち込む。

外れ。目標の少し後ろにレーザーが抜けていく。


見越し射撃がいるということか。レーザーが届く時間を見越して射撃すること。今度は時間によるズレを見越して、やはり散らし射撃をする。


10本のレーザーのうち、1本が先頭編隊の右側の機体に当たった。

よし!


「チャララ、ラララーン。レーザー射撃レベル1を獲得しました」


いきなりの前のスクリーンが変化する。目の前、変なネズミぽいキャラが表示される。


「な、なんだ、お前は!」

「僕は異世界チュートリアルのチュー太。異世界で冒険するのに必要なことを教えるよ」


おいおい、今は戦闘中だから、後にしてくれないかな。せっかく、ゲームに集中しているのに。


「大丈夫。チュートリアル中は、時間外だから。この世界はスキルとレベルがあって、ある種のトライアルに成功すると、レベルアップするんだ」


「・・・」


今、そんなことを聞いてもしかたない。精神統一の邪魔だから、消えてくれ。


「つれないなぁ。それじゃ、また知識が必要なとき出てくるから、今回はこれにて」


チュー太が消えて、スクリーンが元に戻る。僕と敵機との戦闘が再開になる。

スクリーンには、さきほど命中した機体の損害表示がされている。


「15/100」、どうも15%の損害を与えたらしい。そんなものなのか、意外と固いな。7発命中させてやっと一機撃墜になるのか。


サブスクリーンには、攻撃機の距離情報が表示されている。攻撃機が対艦ミサイルを発射できる距離に「Damege」が引いてある。

そのラインまで達するには、あと、3分かかる。


それまでに戦闘機を無力化しないと「サザナミ」が危険だ。


第一編隊に向けて見越し射撃を続けてみる。レーザーが編隊の右側を抜けていく。


あれ、当たらない。損傷が受けたことで回避パターンを変えたのか。ただの見越し射撃ではあたらない。


敵の回避パターンを先読みする必要があるってことだな。


「いまだ」


長年培ったシューティングゲームのカンを使って打ち込む。


「遅い!」


慣れない射撃操作が邪魔をして、タイミングがズレる。どうしても、当たらない。


さて、どうするか。そうしているうちにも攻撃機は「Denger」ラインに近づいてくる。


こういう危機的状況な時こそ、全体を把握することが大切だ。第一編隊だけでなく、7つの敵編隊の全体を眺めてみる。


すると、不思議なことが分かった。第七編隊の三機がなぜか、動きがぎこちなく感じる。

他の編隊が綺麗な三角形を作っているのに、第七編隊だけは多少崩れている。


僕もカンナさんも射撃しているのは第一編隊。第七編隊は、全く攻撃を受けている訳でもないのに。。。おかしい。


「ははーん。新兵だな、こいつら」


たぶん、最初の実戦なのであろう。と、言っても、僕も同じで初参戦だ。新米同士、闘うとしようか。



第七編隊を観察していると、どうも先頭の機体が動きが鈍い。その鈍い動きに他の二機が合わそうとしているが、できていないと見える。

先頭の機体だけ観て、未来位置へ見越し射撃で打ち込む。


「おっ、当たった」


損傷「25/100」、なかなか損傷を与えたらしい。


続いて、同じ機を見越し射撃。命中!

今度はレーザーが同時に2本当たったらしい。


損傷「70/100」と表示され、先頭の機体は、パニックの様な動きになる。

もう少し!


「そこだ!」


損傷が増えて動きがさらに鈍くなった機体にレーザーを打ち込む。パッと明るく光って・・・消えた。


「やった撃墜!」



ひと段落して敵全体を見ると、第一編隊が離脱している。カンナさんの射撃による効果だ。やるなぁ。


「あれ、なんか出た!?」


僕が撃墜した第七編隊の近くに赤いマークが表示されている。真っ赤なパワーアップアイテムかな。

もしかして、レーザーのパワーがあがるボーナスがあったりして。笑

そこを狙って、レーザーを撃つ!


「その射撃は帝国戦時法違反です。キャンセルしました」


えっ、どういうこと?パワーアップアイテムは、射撃じゃなくて取りにいかないといけないのかな?


そんな「???」をもってスクリーンを眺めていると、第七編隊の動きに変化が。Uターンして離脱していく。


それだけじゃない。残っていた戦闘機も攻撃機すらも、離脱行動を始めた。

どうして?


「ふぅ、終わったね、ユウト。ナイスファイト!」


横にいるカンナさんが声を掛けてくる。戦闘は終わったらしい。

今回の戦闘結果は、カンナさん、損傷2。

僕は、撃墜1、損傷1。



うーん、ずいぶん少ないなぁ。これじゃハイスコアには全然届かないや。


と、ゲーム感覚で考えていたら、とんでもないことがこの戦闘でおきていた。それが判明するのは、しばらく経ってからのことだけど。



ここは、護衛艦「サザナミ」のメイド喫茶、もとい、搭乗員達の食堂。

また、カンナさんはメイド姿でお茶を入れている。


「ユウト、お前、今日の射撃なんだ、あれは?」


またユウトに肩を揉ませているのは、アキツさん。ミサイル射撃要員。


護衛艦「サザナミ」のミサイルラックは8連装で2基あるが、アキツさん。ひとりで制御している。

ロックオン等は自動で行われていてアキツさんが発射トリガーを引くと全発射もできるらしい。


別に本当に肩が凝っているというより、人に揉ませるのが楽しい。そういうものらしい。


この時代になると、ロボットや自動化が進んでいるので、大抵のことは人の手を借りないで出来る。

マッサージも相当レベルのことがロボットが行える。

しかし、そこは人に揉んでもらうという、満足感があるのだ。


その隣で、メイド姿のカンナさんのお相手をしているのがスズカワさん。

護衛艦「サザナミ」の操舵手をしている。今自動操縦に任せているので、操舵手は必要ない。

カンナさんをメイドカフェにしたがるように、オタ属性が高い。


アキツさんとスズカワさんは、准士官。軍の中では士官か士官でないかは、大きな違いになる。

准士官は、士官候補生として、戦闘経験を積んでいるところ。


本当の士官より、准士官の方が、下の階級の人に偉そうにすることが多い。だから、僕に肩揉みさせたり、カンナさんをメイドにしてカフェを入れさせたりする。


「そういえば、ユウト。解放まで残りポイントはあと、どのくらいだ?」


解放って何だろう?意味が分からないで答えに窮していたら、カンナさんが代わりに答えてくれた。


「ユウトは、残り80万ポイント。私は45万ポイントです」


「そうか。なら、今回の戦闘でユウトは千ポイントは稼いだだろう」

「たぶん、そのくらいだと思います」


スズカワさんは大して興味なさそうに「そうか」と言ってその話は終わった。しかし、僕の方が分からないから興味を持ってしまった。


しばらくして、アキツさんとスズカワさんは食堂を出ていき、カンナさんとふたりになったので、聞いてみた。


「解放とか、ポイントって何?」

「そうか、ユウトは忘れちゃっているのよね。本当のこと言えば、私も忘れたいのにな」

「どういうこと?」

「レーザー要員の私が、なぜメイド姿しなきゃいけないのか、そこ分かる?」


うーん。カンナさん、メイド姿は似合っているからいいと思う。だけど、カンナさんにすると、そんなことしたいとは思っていなさそう。まぁ、スズカワさんの趣味なんだろうけど。。。


「あなたと私、この艦の中では他の人と違うのよ。人権が制限されている存在。つまりね。言ってみたら奴隷ってことね」


えっ、奴隷なのかっ。つまり、カンナさんは美少女奴隷ってとこだね。それって。。。。あまりに、お約束のシチュエーションじゃん。



奴隷を買い取って、僕の自由にできる。


「駄目ですご主人様。そんなことに手を入れちゃ」とか、してもいいってこと?


「カンナさんは、ど、ど、奴隷なんですか?」

「話、ちゃんと聞いていた?私もあなたも奴隷なの」


ええっ、僕も奴隷。ちょっと待ってよ、聞いてないよ。おい、チュー太!チュートリアルのチュー太は、出てこない。必要ないときは出てくるのに、呼んでも出てこない奴らしい。

使えないな。



カンナさんによると、奴隷というのは通称であって法律的には、人権制限者と言われているらしい。


要は罪人。牢獄に入る代わりに人権を制限される。マスターの命令に従わないといけない。

軍隊の中には、そんな奴隷、人権制限者が多数いるらしい。


人権制限者は職業選択の自由はないから、軍隊に入りたくないとは言えない。だから人権制限者は危険な前線に、下っ端として送られる。僕らは、そんな状況にある。


解放ポイントとはの人権制限者から解放されて自由市民となるためのポイント。1ポイントが1クレジット相当の労働。1クレジットは通貨の単位で、21世紀の日本で言うと100円程度。


「ちょっと待ってよ。僕の解放ポイントが80万ポイントだって?」


80万クレジットってことは、8000万円くらいの労働。おいおい、いつ、終わるんだよ、それ。

気持ちが暗くなってしまった。


「だから、軍隊にいるんでしょ。軍隊は割りがいいのよ。事実、昨日の戦闘で、ユウトは千ポイントくらい稼いだのよ。他に搭乗しているだけでもらえる定期ポイントもあるし」


要は、シューティングでスコアを稼げは解放されるってことか。それはいいかも。

まぁ、シューティング魂の僕には、あまり苦にならない状況とも言える。もっとも、死にさえしなければ、の話だが。


そんな、僕の転生先の悲惨な状況を理解した瞬間。


「搭乗員ユウト。至急、艦長室まで出頭しなさい」


艦内放送で呼ばれてしまった。艦長室では、今の僕には想像もしない展開が待っていたのだった。


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ユウトのスキル


レーザー射撃 レベル1


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― 新着の感想 ―
[一言] 誤字報告が出来ないのでこちらに。 中盤のレベルアップ後の2か所の英語がスペルミスです。damage、とdangerが正解です。 2年前の作品なのでほかのだれかが連絡してるかもしれませんが。…
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