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第18話 再会とパワーアップ 

サンダーレオで宇宙怪獣狩りの帰り道で出会ったのは、元の上司、護衛艦『サザナミ』のオキタ艦長だった。

今は、駆逐艦隊のオキタ指令だ。


スクリーン上のオキタ指令は、ユウトの姿を見てびっくりしている。


「お前、生きていたのか?」

「はい。まぁ、いろいろあって、今は星間救助隊サンダーボードに所属しています」


「そうか。それは都合がいい。我が駆逐艦隊の指揮下に入ることを命ずる」

「えっ、話きいていました?今はサンダーボードにいるんです」

「ユウトよ。お前は人権制限者だということを忘れているんじゃないか?」


うーん。この場合、どうなるんだろう。グレッグに聞いてみた。


「サンダーボードは隊員の前歴を問いません。そして、隊員は宙域政府の法に入ります。星系の法律や生まれた星の

法律から外れます」

「と、いうことは。サンダーボードにいる限り、自由だということですね」

「その通り。というより、サンダーボード隊員は他の組織の指揮下に入ることはありませんよ」


よし、突っぱねよう。


「オキタ艦長、あ、間違い。オキタ指令。あなたの指揮下に入ることはできません」

「なんと!反逆するというのか」

「反逆ではなく、今の立場は、正直あなたより上ですよ」

「なんだと?」

「だって、あなたの駆逐艦隊ってカブトガニタイプに負けているじゃないですか」

「ぐぐぐ」

「こちらの戦力から簡単にカブトガニタイプを制圧できます。命令ではなく、救援依頼をしたらどうですか?」

「そんなことできるか・・・うわぁぁぁぁ」


オキタ指令と話しているうちに、オキタ指令が乗った旗艦の駆逐艦がカブトガニタイプに攻撃を受けた。


「大丈夫ですか?」

「皇国ソルートの駆逐艦隊指令オキタマサヨシ、サンダーボードのユウト殿に救援を依頼する」


あっさりと、態度が変わるオキタ指令。

この風見鶏気質がきっと、護衛艦艦長から駆逐艦隊指令に昇進した理由だろう。


「救援依頼、受理しました。これより、駆逐艦隊を援護して宇宙怪獣の殲滅を行います」


そこからは順調にカブトガニタイプを撃破していく。作戦は前の時と一緒で同調攻撃を順番に行う。

その間に僕の波動ビーグル射撃スキルがレベル5に上がった。


こちらのダメージはないが、オキタ指令の搭乗する駆逐艦は2度ほど攻撃を受け、中破クラスの損傷がある。


「とにかく助かりました。救援に感謝します」


それだけ言って、オキタ指令の駆逐艦隊は去っていった。

僕らも、サンダーボードの移動基地に帰還する。


基地のプラットホームに入ったサンダーレオは、搭乗しているメンバーが降りてメンテナンス要員に引き渡される。

僕は待機室に移動した。


「お疲れさまでした。みなさん。初めてなのに、11体撃破、波動クリスタル5個回収はすごい結果です」

「ありがとうございます。ただ、その戦果はサンダーレオの性能のお陰ですね」

「もちろん、それはありますが、皆さんの習得の速さも結果につながったんでしょう」


その時、グレッグは呼び出しがあって、待機室を急いで出て行った。

僕ら3人が残った。


「ねぇ、ユウト。ちょっと話があるんだけど」

「なんだい?」

「今日の指示の出し方って、ちょっと強引じゃない?」

「えっ、でもさ。あの状況なら、あの指示が最適だと思わない?」

「そうだとしても、ちょっと相談してくれてもいいとは思う」

「エルヴィンはどう感じる?」

「カンナさんの意見に一票追加、ということです」


あれ?

すごくいい結果になったはずが、どうもそうじゃない感じ。


「どこが気に入らないんだい?」

「そもそも、同調射撃しなくても、それぞれの判断で各個撃破はできただろ」


エルヴィンは主張する。


「そうかもしれないけど、戦いの場では少しでも効果的な方法を選ぶのが指揮官の責任だ」

「指揮官ねぇ。たまたま、トレーニングの結果がちょっと良かっただけじゃん」


カンナもそんなことを言う。


「おいおい。ふたり共、なんかムキになっていないか?」



前世の日本において、リーダーの出した指示には従うのが普通だ。国民の従順度は、世界一ともいえる。

だけど、カンナとエルヴィンは全く違う世界で生きてきた。


人の上に立つのが当たり前な、エルヴィン。

誰の命令も受けずに生きてきた、カンナ。


軍隊という明確なルールがある場なら、上官に従うことはする。

しかし、サンダーボードは軍隊じゃない。ある種のボランティア組織だ。

リーダーとして当たり前に指令を出したユウトにふたりは疑問を感じているのだった。


「あれ?どうかしましたか、皆さん」


グレッグが帰ってきて、不穏な空気を感じたのだろう。


「グレッグさんに報告があります」

「何かな?」

「僕、ユウトはこのチームのリーダーを降ります」

「何、急に言うのよ、ユウト」

「カンナさんも僕が向かないと思っているでしょ」

「そんな話をしているんじゃないの!」


「すみません。状況が見えません。ユウトさんは誰がリーダーをすればいいと考えていますか?」

「エルヴィンがやるのが順当じゃないですか?」

「おふたりはどうでしょう」

「エルヴィンがいいと言うならいいんじゃない」

「どうですか?」

「やります」


どうせさ。人を率いるなんて向いていないんだよ、俺は。ゲームだってチームプレイのネットゲームは苦手だったし。

ひとりで戦い方研究して、試行錯誤して点数あげていけるゲームが好きだった。いきなりチームプレイをやろうとして

うまくいくはずがないじゃないか。


「リーダー変更の件は、いったん私があずかることでいいですか?明日又お話ししましょう」

「「「はい」」」


その後、グレッグは整備ガレージに僕ら3人を連れていった。

そこには、ひとりの若い男がいる。黒縁の眼鏡をかけて髪を7:3に分けた真面目そうな男。


「チャーリー、ちょっといいか」

「はい。今、波動クリスタルをセットしておきました」

「ちょうどいいな」


「えっと、ここは整備ガレージ。出撃した後に整備を行う場所だ。そして、彼が整備の主任のチャーリー」

「チャーリーです。よろしく」


「で、ここでは整備の他に機体のパワーアップも行える」

「パワーアップですか?どうやって?何か追加装備をつけるとか?」


ゲームの常識なら、追加装備を付けることで機体を強くすることができる。そんなゲームが多かったのだ。


「いやいや、そういうんじゃない。高次元の力を引き出して波動を強くしていく。波動ビーグルはそれができる機体なんだ」

「へぇ、不思議ですね」


「皇国や連邦では、波動ビーグルはほとんどなかってでしょ」


チャーリーが嬉しそうに言ってくる。


「でも、それなら最初からパワーアップをしておけばいいんじゃないですか?」


ゲームならだんだん強くなるのが楽しいが、実戦ならそんなことする理由がない。


「高次元の力を利用するためには、アイテムが必要なんだ。それがこれ、波動クリスタル」

「あ、それ。宇宙怪獣を倒すとドロップするアイテムですね」


なるほど。ドロップアイテムは機体パワーアップに使えるってことか。


「もっとも、私ができるパワーアップはシンブルな物でスペシャル攻撃とかは付けられません」

「他の人は、それができるんですか?」

「ええ。上級の高次元術士なら、できるんです。だけど、この基地にはまだ私しか高次元術士はいないので」

「そうなんですか。それって僕らでも習得はできますか?」

「残念ながら、高次元の力を利用するので、普通の赤い血の人は無理です」


おっと、ここでも赤い血が出てくるんだ。ということは、チャーリーは青い血だということかな。


「チャーリーさんは青い血なんですか?」

「ええ。この基地の正規スタッフはすべて青い血ですよ。もっとも7人だけしかいませんが」


こんな大きくていろいろなメカがある基地なのに、たった7人で運営しているんだ。自動化が進んでいるのだろう。


「もし、銀の血の人間なら、どうなんでしょう」

「そりゃ、ちゃんと習得プログラムをクリアして、ちょっとしたセンスがあればスペシャル攻撃を付加することも

できるようになるでしょうね」


いいこと聞いた。僕はチャレンジしてみたいな。

ただ、今日はなんか疲れたから、後にしよう。


その後、僕らが使っているサンダーレオの一番機を今回得た5つの波動クリスタルで一段階パワーアップしてもらった。


「リア充はやっぱり無理だったのかな」


サンダーボード基地の中の個室で僕は考えていた。個室はベットがあるだけの部屋。広さだと二畳くらいか。まぁ、寝るだけ

の部屋なので、不便は感じないが。

でも、ひとりになれるのはありがたい。


「カンナさんとちょっとは仲良くなれていた感じがするんだけどなぁ」


いきなり、気まずくなってしまった。仲直り、できるんだろうか。

異世界に来て仲良くなったカンナさん。ここをひとりで出るともう仲良くしてくれる人なんていない気がする。


「あー、ぐちゃぐちゃ考えても暗くなるだけだ」


そう。考えても無駄なことは考えるのをやめよう。もっとサンダーレオを効率的に動かすことを考えてみよう。


新しいメカだから、興味深々。もっと詳しく知るために情報端末からマニュアルを引き出して読む。


「もしかして、こんな使い方も」


人間関係を考えるのは苦手なユウトだが、メカ関係ならいくらでも楽しく考えていられる。


だけど、どこかでやっぱりカンナのことを考えて暗くなってしまっているユウトだった。


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