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第17話 カブトガニと昇進艦長

『サンダーボード』の移動基地には、15分ほどで到着した。


最大長500メートルくらいで300メートルのドームと200メートルの方形が合体した形をしている。

方形のサイドには「5」と大きく描かれている。


方形の部分がプラットフォームの入口だということで、そこから亀形宇宙船と『モノリス01』が順番に入っていく。

入口から入った所は、中が大きなプラットフォームになっていて、不思議な形の宇宙船が何隻も係留されている。


「ここはサンダーボード宇宙怪獣対策用の移動基地で、宇宙怪獣と戦うためのメカが揃えてある。もっとも、移動基地は

緊急対応用なので、本格的な基地設営部隊が来たらバトンタッチする予定なんだ」


グレッグが歩きながら、サンダーボードの移動基地の説明をしてくれる。


「これがこの基地のメインメカ『サンダーレオ』。大型宇宙怪獣は無理だけど、中型くらいはなんとかできる性能はある機体だ」


サイズ的には12メートルくらい。ずんぐりむっくりな形状。高さと幅は共に3メートルで、大きさと形状はバスに似ている。

全部で20機がきれいに整列している。


「サンダーボードのメカを使えば簡単に宇宙怪獣を撃墜できるでしょうか?民のためにできるだけ早く宇宙怪獣を殲滅したいと思っているので」

「とても、今あるメカだけでは、これから発生する宇宙怪獣には対応できないだろう」

「そんなに増えるんですか?」

「いままでのケースで言えば、あの古代魚型が出てきたとなると相当数、発生するはず」


宇宙怪獣はトップのボスを中心にいろいろな種類のタイプが群れを作る。群れの大きさはトップのボスのタイプよって予想がつく。

古代魚型は中規模の群れを形成している。


「もっとも、宇宙怪獣を殲滅するのは、我ら『サンダーボード』の役割じゃない。我らは宇宙怪獣に対する対策を用意して、星系の住民たちで

対応できるようになってもらうのが役割だ。魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えるのが『サンダーボード』の方針だ」


そして、『サンダーレオ』をはじめとしたメカも、星系の住人達に開放していくという。


「あ。それなら、まずは三機、貸してくれません?」

ユウトが手をあげて提案する。


「君たちは小型機の操縦は経験あるかな」

「あります!」


ユウトは正式には一回だけだが、前世スキルをコンバージョンしているから操縦ベテランレベルになっている。そもそも、『サンダーレオ』を

見たところ、シューティングゲームの自機的な感覚がある。当然ながら、いろんな前世スキルが使えるはずだ。


「『サンダーボード』のメカ貸与は独特な仕組みがあってね。最初は『サンダーレオ』だけしか利用できないが、宇宙怪獣の討伐や

ミッションのクリア、アイテム回収等のポイントで、上位機種が使えたり、パワーアップが行えたりする。そのための施設が

この基地には揃っているんだ」


なんと。釣りに続いて、怪獣退治もゲーム性ということか。この異世界の人はなんでもゲーム化するのが好きと見える。


「と、いうことは、ユウト」

「当然だな。エルヴィン」

「「勝負だ」」


ゲームと聞いたら、チャレンジしない理由などない。グレッグに『サンダーレオ』で出撃する了解をもらい、宇宙怪獣を討伐に向かうのだ。


もちろん、すぐにではなく、一通りのシミュレーション練習と実地練習をしてからになるから、3日後になる。

『サンダーレオ』は、スキル的には、波動ビーグルという分類らしく、ユウトは前世経験が活きて操縦と射撃がともにレベル4になった。


「それでは、『サンダーレオ・ユウト隊』ファーストミッションを行う」


今回のミッションに限り、グレッグが指導役としてミッションに参加する。チュー太じゃないけど、チュートリアルだな。

ユウト隊の名前がついたのは、練習の成績が他のふたりより良くリーダーに任命されたからだ。


「ちょっと待ってくださいよ。貴族の私としては、リーダーになれないのは不満なのですが」

「『サンダーボード』は、星域政府に属する組織。イウト連邦や皇国ソルートの身分は関係しないんだ」

「ぐぐぐ」

「実力本位ということですね」


このあたりで、宙域政府とイウト連邦と皇国ソルートの関係を説明しよう。


星域政府というのは、正式には銀河帝国アンタレス星域の政府のこと。


銀河帝国は銀河系全域を網羅する多様な種族が属する組織。200の銀河域を持ち、それぞれの銀河域には200の宙域があり、

それぞれの宙域には200の星域がある。銀河系全体は恒星が3200億あり、それが800万の星域に分かれているので、星域は平均で4万の恒星を持つ。


イウト連邦も、皇国ソルートも、銀河帝国に属する星間国家だ。それも、星域を200に分けた200の星系を持つ星区のそれぞれひとつを

支配する星区レベルの星間国家。

銀河帝国に属する星間国家は、いろいろな理由で戦争状態になることがある。銀河帝国は属する星間国家に対して、帝国戦時法を履行して

いる限り、介入することは起きない。


『サンダーボード』は銀河帝国アンタレス星域政府によって組織された機関。よって、アンタレス星域にある星間国家、皇国ソルートと

イウト連邦よりも上位の政府に属している。だから、下位の身分制度を無視するのが当然という立場だ。


「ファーストミッションに行きましょう。グレッグ教官。エルヴィン、カンナ、行くぞ!」

「了解!」


カンナさんは素直に返事するけど、エルヴィンは返事しない・・・けど、ちゃんとついてくる。


「ファーストミッションは簡単な宇宙怪獣狩り。ターゲットは皆さんも遭遇しているカブトガニタイプ。最近、頻繁に出没している

フィールドに向かう。攻撃方法はシミュレーションで確認済みだと思うが、サンダーレオの下部にマウントしている波動レーザー

で攻撃する」


サンダーレオの波動レーザーは全長7メートルで口径120ミリの連装タイプ。前方だけ射撃できる仕様だが、多少の方向を変える

ことができるので旋回しなくても前方にいるターゲットは捕捉できる。


「ユウトがリーダーなので先頭に位置し右斜め後方にエルヴィン機、左斜め後方にカンナ機のフォーメーションで攻撃する」


教官のグレッグは、三機から少し後ろに位置して、危機的状況にならない限り戦闘には参加しない。


「ターゲット確認。カブトガニタイプ五機。ちょうどいい数だ、攻撃に移れ」


サイズ的には、サンダーレオとカブトガニタイプは大差がない。幅はカブトガニタイプ方が三倍くらいあるが、高さはサンダーレオの

方が高い。


前面から迫りくるカブトガニタイプを波動レーザーで攻撃する。カブトガニタイプも刺で反撃してくる。


「攻撃目標は右端の敵。攻撃タイミングは三機同調して行う」


サンダーレオには、同調攻撃モードがある。マスター設定された機のトリガーで3機同時に攻撃をすることができる。


「おいおい、手柄ぜんぶ持っていく気かユウト。それはないんじゃない?」

「思ったより、敵の回避能力が高い感じだ。まずは当てることが重要だろう。一体倒したらマスタートリガー渡すから、

順番に葬っていこう」


まずは右端の一体目。三機は散開して別々の方向からターゲットに向けて波動レーザーを叩きこむ。


命中!撃破!!


ど真ん中に命中したカブトガニタイプは、爆発して四散した。その場所に赤のひし形のマークが表示される。


「でたぞ、波動クリスタル。あとでまとめて回収だ」


波動クリスタルは、宇宙怪獣のドロップ品。

宇宙怪獣のエネルギー源になっている物で、宇宙船のエネルギーとしても利用されている。


「よし、命中。残念、ドロップはなし」


エルヴィンも一体を劇撃破した。


「あれ、当たらないっ。もう一発。うーん、よけないでよ」

「狙いはもっと先を狙って、カンナ」

「ここあたりかな・・・やった命中」


これで三体、続いてユウトとエルヴィンで二体、合計五体を撃破する。


「敵、殲滅しました。グレッグ教官」

「ご苦労様、ユウトリーダー。初戦でカブトガニタイプ五体撃破、損傷ゼロは好成績だよ」

「ありがとうございます。」

「エルヴィンとカンナもお疲れさま」

「「ありがとうございます」」


結局ドロップ品は2つ。どっちも、小さな波動クリスタル(赤)。

しっかりと回収しておく。


「それでは帰還する・・・おっと、その前にやることができたみたいだぞ」


探知センサーにいくつか表示がされている。


大きなサインが4つ、小さなサインが7つ。

大きなサインは200mサイズだと表示されている。


「えっと、小さいサインはカブトガニタイプですね、グレッグ教官」

「その様だな。ユウトリーダー」

「おっと、大きなサインは駆逐艦みたいだぞ」

「駆逐艦?」


センサーと連動している情報ライブラリをアクティブにして、探知された駆逐艦の情報を表示する。


「『アキカゼ』型駆逐艦だな、これ」

とエルヴィンが先に報告してくる。



『アキカゼ』型駆逐艦は、ネーデル星系に配備されている皇国ソルートの駆逐艦。

通常は警戒活動をしていて、あまり戦闘には参加しない。

しかし、宇宙怪獣が出現したことで、討伐に参加したのだろう。



「カブトガニタイプと皇国駆逐艦が戦闘している様子だな。どっちが優勢だとおもう?」

「ダメージを比べてみると、皇国駆逐艦が苦戦している様だ」


ユウトがエルヴィンに聞いて答えを得る。



いまさっき、5体のカブトガニタイプをサンダーレオ3機で殲滅した。ところが皇国駆逐艦4隻がカブトガニタイプ6体に苦戦している。


「グレッグ教官。サンダーレオって皇国駆逐艦より強いんですか?」

「比較の仕方によって違うが、宇宙怪獣相手の戦いなら、そのために開発されたサンダーレオの方が強いはずだ」


たった15メートル程度のサンダーレオが、『アキカゼ』型200メートル級の皇国駆逐艦より強い。

サンダーボードがもっている対宇宙怪獣の技術はすごいものがある。


「宇宙怪獣を倒すには、波動兵器が必要となる。通常兵器の皇国駆逐艦では宇宙怪獣に攻撃をはじかれてしまう。だからカブトガニタイプ

に苦戦しているのだろう」

「皇国軍を助けてもいいんですか?」

「星間救助隊サンダーボードの役割は、困っている相手を助けることにある。皇国軍が困っているなら助けるのが筋だ」

「了解しました」


皇国軍の駆逐艦隊を手助けする。ただ、いきなり参戦しても脅かすだけだろうから、まずは連絡を入れることから始める。


「こちら、星間救助隊サンダーボード、リーダーユウト。駆逐艦隊の指令とお話がある」

「こちら、皇国サルート駆逐艦隊指令、オキタマサヨシ。えっ?ユウト??」


駆逐艦隊の指令としてスクリーンに映ったのは、ユウトとカンナが搭乗していた護衛艦『サザナミ』のオキタ艦長だった。


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