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第16話 波動クリスタルと星間救助隊

「まずは、30光年の超時空ジャンプをするためには波動クリスタルからだな」

「イナバ星系方面の系外ジャンプポイントには波動ステーションあるの?」

「もちろん、ある。イウナ連邦の主要チェーンのステーションだけど、経営はおやじだから」

「おやじってことは、星系ネーデルの統主ってことね」


あ、そういえば、エルヴィンって、この星系の統主の三男坊って言ってた気がする。カンナさんよく覚えているなぁ。


「それなら問題ないわね。そこに行って跳びましょう」

「そういうことですね」


ふたりで勝手に星系を出るまでの行動を決めてしまった。この世界の常識のない僕は何の役にも立たない。ふたりで

楽し気に旅行のプラン立てないでほしいな。


三人を乗せた星間クルーザー『スターシード』第三惑星ネーデルランドから数分で成層圏を超えて宇宙に出る。ここから

亜光速で波動ステーションに向かう。星系ネーデルは一部を除いて、イウロ連邦の支配下にあるので連邦の貴族である

エルヴィンにとって、トラブルは起きないと思われた。


しかし、想定外のことは起きるものだ。


「えっ、星系封鎖?!」


エルヴィンが緊急ニュースに反応する。


「宇宙怪獣が発生した、ネーデル星系全域は星域政府により、レッドゾーンに緊急指定されました。艦船は星域政府の

指定する艦船を除いてすべて出入りを禁止されます。系内の移動に関してはイエローゾーン指定に準じます」


「どういうことかな?エルヴィン」

「うーん、やられた。星系イナバに行くことはできなくなったぞ。正式には」

「正式には、ってことは、正式じゃない方法も実はあると?」

「ないとは言わないが・・・波動クリスタルがない」


レッドゾーン指定が入ると波動ステーションは封鎖されてしまう。いくらステーションの関係者と言えども星域政府の

決定に逆らって波動クリスタルを入手するのは困難だ。


「波動ステーション以外にクリスタルを入手する方法ってないの?」


カンナさんの素朴な質問にエルヴィンが答える。


「ない訳じゃないけど。宇宙怪獣が出たとなると波動クリスタルを生成する宇宙植物も近くに存在しているはず。

宇宙植物の実を入手すれば、波動クリスタルを取り出せるかもしれない」


波動クリスタルというのは、宇宙怪獣と宇宙植物のエネルギー源でもある。

宇宙植物は、現時空と超時空の両方に存在し、超時空のエネルギーを元に現時空に波動クリスタルを作り出す。

宇宙怪獣は、宇宙植物が作り出した波動クリスタルを捕獲することでエネルギー源として利用している。


「宇宙植物って、どんな物なの?」


これまたカンナさんの素朴な質問で、エルヴィンはスクリーンに宇宙植物を多数表示した。


「宇宙植物と言っても種類が多くてね」

「あ、これ。見たことがあるわ!」


カンナさんが指さした写真。そこには、カンナさんを捕まえていた触手の怪物が写っている。


「宇宙植物『アイネ』だな。こいつは、すごく効率よく波動クリスタルを作り出す宇宙植物だ。ただし、超時空断層の

近くでなければ、育たたないはずなんだが」

「まちがいなく、こいつよ。どこに生えているか、だいたいわかるわ」

「よし、なら、そいつの波動クリスタルを収穫してやろう」


もしもし、おふたりさん。また、ふたりで盛り上がって勝手に決めちゃって。僕の立場がないんですが・・・もっとも、

何も知らない僕では、役にたたないんですけどね・・・



「出現ポイントは、ここ、あたりになるわ」

「おいおい。それって宇宙怪獣が検知された近くじゃないか」


やっぱりね。宇宙怪獣って、アイネがあったあたり、つまりモノリス近辺に出現しているんだ。

だから、そんなに簡単に波動クリスタル入手できたりしないって。


「宇宙怪獣が出るとなるとアイネで波動クリスタルは入手できそうもないな」

「何言ってんの。どうせ宇宙怪獣を倒す予定なんだし。まずは偵察も兼ねてアイネで波動クリスタルをもらおう」


やっと、ふたりの世界を邪魔できたぞ。ふっふっふ。


「おいおい。『スターシード』は非武装だぞ。まさか、それで宇宙怪獣と戦えるはずないじゃないか」

「むむむ」


何も考えずについ、話に割り込んでしまった。反論されると何も言えないのが悔しい。


「でも。何も戦う必要なんてないじゃない?宇宙怪獣が出てきたら逃げればいいし」

「カンナさんって、意外と大胆だね」


貴族のお坊ちゃんと違ってカンナさんは、まだ15歳なのにひとりで生きてきたんだ。

危険だから行動しないなんて、そんな選択肢はないみたい。


結局、僕とカンナさんが推す、強行偵察をすることに。ただし、『スターシード』では危険すぎるということで、

僕らの宇宙船で行くことに。



「そんな宇宙船、どこにあるというんだ?」

「えっと、もう横付けしましたけど」

「うわっ」


いきなり、ステレスモードを解除したら球形の宇宙船が現れた。

僕らの船は遠隔操縦ができるから、『スターシード』の後を追尾されておいたんだ。


「ん?なんだ、この船は?メーカーはどこ?」

「メーカーと言われても・・・」


「宇宙船なら大抵のモデルは知っていると思うし、知らないのも特徴があるからメーカーくらいは分かるはず

なんだけどさ。この船、全く分からない・・・どういうことだ?」

「ごめんさない。詳しいことは言えません。まぁ、古代遺跡の発掘品だと思ってもらえれば」


「あー、そういうことか。だから見たこともないのか」

「そういうこと。だから、細かいことは言いっこ無しね」

「むむむ。了解した」


説明しろと言われても困るから、失われた技術で作られた宇宙船ということにした。まぁ、似たようなものだしね。


「それでは、この船で、アイネの生えているフィールドに行くとしよう。あ、ところでこの船。なんて名前?」

「名前・・・」


そういえば、名前がない。別にカンナさんとふたりしか知らないときは、「あの船」で済むから名前を考えていなかった。


「名前は『モノリス01』です」


今つけました。笑


「それじゃ、『モノリス01』に移乗して、出発しよう」


まぁ、そのあと。『モノリス01』に乗ったら、エルヴィンがやたら騒ぐ。どうも宇宙船オタが入っているみたいで

いままで見たこともない宇宙船だから、興奮しまくり。


そのあたりは、面倒くさいからカットしておこう。


一時間ほどで、アイネが生えているフィールド近辺につく。だけど、その前に敵襲にあってしまう。



「うわっ、さっそく、宇宙怪獣だ。でも、小さいな。全長15メートルほどのが3体。カブトガニ・タイプだ」


宇宙怪獣にも詳しいエルヴィンによると、一番多いタイプの宇宙怪獣のカブトガニ・タイプ。全身を装甲で囲っているので、

宇宙戦闘機の対空レーザー程度では歯が立たない。もっとも宇宙戦闘機の対艦ミサイルを使えばダメージを与えられる。


「だけど、こっちは丸腰。逃げるぞ」


と僕が言う前に、カブトガニ・タイプは前面に生えていた刺を撃ってくる。

ちょっとだけダメージがあったようで、ダメージ表示される。


「とにかく最大船速で離脱」


逃げ出したのはいいけど、カブトガニ・タイプは追いかけてくる。刺ミサイルを撃ちながら。

最初こそは当てられてしまったが、その後は全部回避に成功する。


「なんとか振り切れそうだね」

「ユウト、お前、操縦うまいな」


何気に回避をしているんだけど、操縦レベル8というのは効果テキメンらしく、エルヴィンが驚いている。


「まぁ、昔からちょくちょくやっていたらさ」

「その歳で経験多いのか・・・おいっ!!!!」


いきなり、進行方向にカブトガニタイプが現れる。何もない空間にいきなり飛び出した様子からすると、

超時空から現れたとしか見えない。


「うわわわっ」


『モノリス01』は、カブトガニタイプに捕まってしまった。その上、外から波動エネルギーをコントロールすることが

できる様子でいきなり減速させられ、後ろから来たカブトガニタイプにも獲りつかれてしまった。


「まずい。これじゃ何もできない」

「こいつら、私たちをどうしようとしているの?」

「喰べようとしているのかも・・・でも、『モノリス01』は食い破ることできない感じだね」


『モノリス01』は緊急事態に対応して、自動で船殻にそったバリアを張っているらしく、カブトガニタイプの歯が

バリアに当たる振動だけが伝わってくる。


「うーん。破られることはないけど、移動もできないからお互いどうしようもないって状態だね」

「カブトガニタイプだけなら、そうだけど、もっとでかいのが来たら・・・うわっ」


最悪の状況を話すと、最悪の状況が起きてしまうことを、マーフィーの法則という・・・らしい。

マーフィーさん、嫌いっ。


でっかいのが現れた。大きさは100mくらいで甲羅があって亀の様にも見える。その亀から通信が入ってくる。


「あー、そこで小型宇宙怪獣に捕まっているのは、人間が操縦する宇宙船でしょうか?」

「あ、はい。そうなんです」


なんだか、わからないけどでかいのは来たけど味方らしい。よく見ると亀の横腹に大きく「2」って書いてある。

マーフィーさん、ごめんなさい。嫌いじゃないです。はい。


「それでは、小型宇宙怪獣を倒しますね。多少、そちらにもダメージいくかもですが」

「お願いしますっ」


カブトガニタイプ三体それぞれに、何かレーザーの様な物が当てられる。当たった瞬間、カブトガニタイプは強く光って、

動きを止める。

亀の下腹部分がぱかっと開いて、カブトガニタイプを収容する。


「大丈夫ですか?」

「ありがとうございます・・・ところで、どちら様ですか?」

「私は星間救助隊『サンダーボード』のグレッグです。宇宙怪獣が出たと聞き、星域政府の要請で出動してきました」


星間救助隊『サンダーボード』とは、星域政府の要請で設立された宇宙災害専門の救助部隊だ。宇宙災害が起きたとき、

真っ先に駆けつけて、救助作業を行う正義の味方なのだ。

君たちも『サンダーボード』を応援しよう♪


スクリーンに『サンダーボード』の広報CMらしき物が流される。なかなか、自己主張が強めの組織らしい。


「グレッグさん。救助ありがとう。『サンダーボード』かっこいいですねっ」


おっ、カンナさんが通信でグレッグさんに感想を伝えている。バリバリ、ミーハーぽいキャラで。まぁ、助けてもらったん

だから好印象を伝えるのはいいことですね。


「いえいえ。これが私たちの仕事ですから」


美少女の感想に、まんざらでもない感じのグレッグさん。


「えっと、どうも波動エネルギーが切れてしまったみたいで。どこかエネルギーを充填できるところへ送ってもらえませんか?」

「わかりました。『サンダーボード』の移動基地に案内しましょう」


ということで。

僕らは『モノリス01』に乗ったまま、移動基地に曳航されていった。







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