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第9話 ボーナスと味方の撃沈

「今回の護衛任務で一番大切なのは、重点護衛対象があることだ」


オキタ艦長が護衛艦『サザナミ』の会議室で今回の任務の説明を始めた。


輸送船は4万トン級12隻と主導護衛艦『ハヤナミ』を旗艦とするネーデル203護衛小隊の4隻の護衛艦はすでに集合ポイントに集まっている。


24時間の休暇が終わり護衛艦『サザナミ』のすべての乗組員は会議室に集まっている。


今回、新たに配属になった対空レーザー射撃要員がふたり増えている。さきほどオキタ艦長が紹介したが、名前を覚えられていない。

おっさんA、おっさんBと呼ぶことにしよう。ふたりは40代らしいが軍隊経験がゼロの新人で、人権制限者ではないらしい。名前を覚えられないのは、単にユウトが興味がない、ということだろう。


「重点護衛対象は輸送船団の真ん中の隊列で5番船から8番船の4隻だ。この4隻が到達地点の第4惑星の宇宙ステーションに送り届けることができれば、ボーナス評価ポイントが得られる。搭乗員の各員もボーナスが得られることになるので、ぜひ頑張ってもらいたい」


オキタ艦長が嬉しそうに語っている。


「オキタのおやっさん、ずいぶん、やる気満々だな。きっとボーナス評価ポイントが相当あるに違いないな」


隣で聞いている操舵手のスズカワさんが耳打ちをしてくる。


「どのくらいあるんですか?」

「おまえ達は対象外だけど、艦長含めて他の搭乗員は1か月分の給料程度のボーナスくらいかな」

「あ、やっぱり、僕らは対象外ですか」

「当たり前だろ」


人権制限者にはボーナスなんて無いというのが常識らしい。感情を含めないでサラリと言うスズカワさんは嫌な感じがしない人だ。


オキタ艦長は護衛任務の詳細を語っているが、まじめに聞いている搭乗員はいない。カンナさんも聞いている様には見えない。いつもの任務前の会議なんだろう。


会議が終わり、予定どおりのフォーメーションで輸送船団と護衛小隊は発進していった。同時に恒星間キャリアは、超時空ジャンプをしてこの星系からは消えていった。


恒星間キャリアは、一定距離にある物質と共に超時空エリアに入り目的ポイントまでを超時空エリアを航行する。輸送船自体には、超時空ジャンプをする機能はなく、恒星間キャリアと一緒の時だけジャンプすることができる。


超時空ジャンプをするときには、輸送船には搭乗員がおらず無人となる。ジャンプアウトした星系で搭乗員が乗り込み星系内の航行をおこなう。恒星間キャリアだけ唯一超時空ジャンプの時も有人である。しかし、恒星間キャリアの搭乗員はたったの一人。


超時空ジャンプの時、12隻の輸送船と一隻の恒星間キャリアは、たった一人により制御されているのだ。その様な形をとるのは、超時空ジャンプに耐えられるのが、スーパーエリートの人間だけだからだ。一つの星系でたった200名しか超時空ジャンプができるスーパーエリートがいないのだ。


輸送船が船団を組み、護衛艦で囲まれて目的地に向かって進んでいく。予定では2日間の航行になる。


最初の日は、何も起きずに順調に航行していた。問題が起きたのは2日目に入ってから。敵襲が起きたのだ。その地点は、訓練シミュレーションの想定エリアとほとんど同じエリア。


「ほぼ、想定どおりとは!もしかしてシミュレーションと同じ駆逐艦がいたりして」

「冗談じゃないぜ、縁起でもない」

「ないない。駆逐艦みたいな虎の子、敵さんが出してくるはずないよな」


そんな雑談をしながら搭乗員達は戦闘配置につく。ユウトとカンナも対空ミサイル室に入り準備をする。おっさんAとおっさんBはもう一つの対空ミサイル室だ。


「接近中の敵は、戦闘機72機」


おっ、これもシミュレーション通りじゃないか。


「艦艇はゼロ」


なんだ、駆逐艦はやっぱりいないか。そりゃ、そうだ。


「攻撃機64機」


なんと。攻撃はシミュレーションの二倍の機数だって?すると、戦力比はどうなるのか?もしかして、不利になっているのかな。


「戦闘機、有効射撃エリアに入りました。対空レーザー、攻撃開始!」


考えても経験が少なすぎて有利か不利か分からないから、今は自分にできることをしっかりとやろう。まずは射程に入った戦闘機を射撃してみた。


一番前列で右端の三機編隊、第三編隊のリーダー機めがけて対空レーザーを撃つ。もちろん見込み射撃でだ。


外れ、外れ、外れ。残念ながらレーサー射撃のスキルは1レベルでしかない。なかなか、当たらないのだ。シミュレーションの時は、ゲームの経験を使えたから、レベル13にいきなり上がったけど、実戦だと初心者級のレベル1しかない。そう簡単に当たるはずはないのだ。


しかし、めげずに同じリーダー機を狙って対空レーザーを打ち込む。外れ、外れ、当たり!やっと命中した。



ジャジャジャジャーン♪「チュートリアルのチュー太です」


おっ、チュー太、レベルアップかな。


「違います。登場するときの音が違うよね」


なるほど。そういえば違うような違わないような。レベルアップじゃないなら、何んだよ。


「ユウトはシミュレーションレーザー射撃スキルのレベルが13です。それを実戦にコンバートしますか?」


そりゃ、できるなら、してよ。


「了解しました。シミュレーションレーザー射撃スキルのレベル13が二割ダウンしてコンバートされます。レーザー射撃10になりました」


おおっ、いきなりレベル10!ありがとうチュー太!!


「サブスキルの精密射撃、溜め射撃、未来予想射撃も使えます」


やった。これで余裕だね。完璧。


「それでは、これにて」


チュー太は、手をくるんと廻して挨拶して消えた。



レベルが急に上がったので、もう一度同じ右端の編隊リーダー機を狙う。精密射撃でいこうっ。


命中っ!ダメージ30%か。うーん、一発では落とせないな。しかし、ダメージを受けたリーダー機は

離脱していく。


そうか、別に撃墜しなくても無力化すればいいんだよね。すると次は同じ編隊の二番機を精密射撃で狙って・・・命中!ダメージ35%!!これも離脱していく。一機になった三番機も一緒に離脱を開始する。


ひとつの編隊を撃退に成功だ。残りの戦闘機の状況を見ると、まだ65機がアクティブ状態。右端から順番に狙っていく。

それからの1分間でユウトは14機の無力化に成功し、戦闘機のアクティブ状態の機数は33機で半減した。


ここで、護衛艦4隻から一斉に対空ミサイルが発射される。それぞれ8基のミサイルで合計32機。戦闘機は発射されたミサイルに向かって高機動で向かっていく。


ミサイルは半数以上戦闘機に撃ち落とされた。残ったミサイルが攻撃機に向かい直前に爆発して子ミサイルが出てくる。

攻撃機を襲う子ミサイル達。多数の被弾が起きる。


「どうだ?」


ミサイル攻撃の結果が表示される。攻撃機の撃墜3で損傷10。損傷した攻撃機は離脱を始める。残った攻撃機は59機。

攻撃機は編隊を組んで侵攻してきたが、ミサイル攻撃を受けて編隊が崩れバラバラになった。乱闘状態に入った。


うーん、まずいかも。ミサイルでは、攻撃をあんまり減らせなかった。だいたい攻撃機の数が多すぎる。これじゃ全機無効化なんてできそうもない。


攻撃機もレーザー射撃の有効レンジに入ったから、射撃を開始した。


命中、だけど損傷10%。攻撃機は固いなぁ。ここはひとつ、溜め射撃でダメージを増やして撃とう。

溜めてっ。撃って。命中!損傷は40%、いいぞっ。よし、離脱したな。


ほとんどの攻撃機は、護衛艦ではなく輸送船を狙っているらしい。多数の攻撃機が輸送船に向かっていて、このままじゃ、輸送船、全滅なんてことが起きないともいえない。


「まずいなぁ」


といっても、良い方法を見つけられずに、とにかく攻撃機一機づつ減らすしかない。


それでも、ユウトも他のレーザー射撃要員も奮戦して、多くの攻撃機を無力化していった。



ところが乱戦になっているエリアから抜け出していた3機の攻撃機が高スピードで輸送船に迫っていく。その先頭に立っている攻撃機に、溜め攻撃と精密射撃をプラスして当てる。


命中!よしっ。。。あれ?ダメージ10%しかいかない?おかしいな。もう一度、精密射撃と溜め攻撃で。命中。でもダメージ18%。全然効果が弱い。どうしたことだろう。


よく見ていると、命中する瞬間に回避が入っている。ダメージが低い箇所しか当たらないらしい。


なんども溜め攻撃と精密射撃を繰り返すが、ダメージ70%までしかいかない。その上離脱しないで7番の輸送船に近づいていく。

まずい!まずい!重点護衛目標じゃないか。5番から8番の輸送船って!


三機の攻撃機から対艦ミサイルが発射された。先頭の攻撃機が1基、ほかの二機の攻撃機は2基。合計5基のミサイルが7番輸送船に向かっていく。


「なにくそっ」


そのうちの1基のミサイルに精密射撃でレーザーを撃つ。命中!ミサイルは爆発する。

しかし、残りの4基のミサイルは7番輸送船に命中してしまう。大きな爆発があって、積み荷のコンテナが放り出される。


「他の攻撃機をなんとかしない!被害が拡大するばかり!!」


ところが敵の戦闘機も攻撃機もすべて離脱を始めた。今回の戦闘は終わりになったらしい。



今回の宇宙戦闘の結果。


敵の損害  撃墜 戦闘機3機  損傷 戦闘機28機 攻撃機 12機


味方の損害 撃沈 輸送船1隻  小破 輸送船1隻 護衛艦2隻



結果だけを見ると、敵の方が損害が多いように見える。しかし、重要なのは重点護衛目標の輸送船が撃沈してしまったこと。

そして、その輸送船の積み荷のコンテナが散らばってしまったことだ。

それがどれほど大変なことか、すぐに分かってしまうのだった。


ユウトの獲得スキル一覧


レーザー射撃  レベル1

シミュレーション・レーザー射撃 レベル13 レバレッジ8

  サブスキル/精密射撃 溜め射撃 未来予想射撃 連続射撃

テニス     レベル4 レバレッジ5

  サブスキル/ブーストサーブ

セールス    レベル3 レバレッジ2

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