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エンジェルズ  作者: ムーン
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武器製作

再びのハジメパートです。

「武器…ですか?」


研究長は怪訝そうな顔で俺を見つめる。

相変わらず死んだ魚みたいな目をした奴だ。


「そ、武器。敵も強くなってきてるんでね、

優秀な研究長様につよーぉい武器を作ってもらいたいなぁって。」


「はぁ。」


本部の研究施設では武器の開発はしていない。

燃料が少なく、鉄が採れにくく、技術が無い。

ある程度の刃物はあるが、家畜の解体や料理用だ。


・『ネクスト』の処理は全て任せてあるから街が武装する必要はない。

・他に人がいると考えていないから人同士の戦争などおとぎ話でしかない。

・この街の食料は牧畜や稲作で賄われており、狩りが行われていない。

・革命などという発想は王にも市民にもない。


武器が必要ない街というのは上辺だけ見れば理想郷だろう。



「石を投げるとかじゃダメなんですか?」


本部で最も賢いとされる人間の発言がこれか。

平和ボケってやつだな。

『ネクスト』を仕留める武器が石でいいわけないだろうに。


「相手が盗っ人ならそれでいいんだろうな。」


「人に石投げるなんてしちゃいけませんよ!」


「ただの例えだろ。」


「あなたならやりかねない。」


俺をなんだと思っているのか、今度目を狙って小石投げつけてやろうか。


「武器ないんですか?なんかこう…長ーい棒持ってるのいたじゃないですか。」


「あれ刃物だぞ。足りないから作ってくれって言ってんだよ。」


「あんな長いのあるんですか!?」


「旧世界のだよ、じゃあ武器頼んだぜ、明日までに案まとめといてくれや。俺は買い物があるからよ。」


「明日!?あぁもう!分かりましたよ!

この蛇結茨(ジャケツイバラ)(リョウ)、あなたの依頼、引き受けます!」


少しボケてるところに目を瞑ればこいつも優秀なはずだ、俺の右腕だったんだから。

頼まれたことは期日までにしっかり仕上げてくれる、貴重な存在だ。



さて、お買い物お買い物。


買い物をするには券が必要だ。

上級市民の住宅地の端には商店街があり、出入口である門の脇の交換所で券をもらう。

普通なら服や食料など、物を券と交換する。

普通なら、な。

俺はこの街を創った1人、街では特別待遇。

そんなもの必要ない。


「店主ー、これ貰ってくぜー。」


声をかければそれでいい。

商店街で買えるものは嗜好品や玩具、装飾品の類、「生きていく上で必須では無いもの」だ。


腹にたまる食料は買えない。当然の事ながら武器もない。

ここに来る理由は1つ、気晴らしだ。


「若い女の子が好きそうなのってどれだ?」


「これはこれは(ニノマエ)様、恋人でも?」


「そんなとこ。」


「なんと喜ばしい!」


こちらをどうぞ、と言って見せてきたのは宝石を散りばめた装飾品たち。

肩が凝りそうなネックレス、耳がちぎれそうなピアス、手枷になりそうなバングル。

なんでこう装飾過多になるのか、加減ってものがない。


「派手だなー。光ってるのあんま好きじゃないんだよなー俺。」


「女の子はキラキラした物が好きなんですよ、そんなこと言ってたらフラれちゃいますよ?」


「ふっ…バーカ。俺色に染め上げるんだよ、俺がフラれると思うか?」


「………流石!」


何に感動したのか店主は店の奥へと引っ込んでいった。先にこの装飾品片付けてくれ、目が痛い。


「こちらはどうでしょう、最高級シルクですよ。」


「虫のやつか、綺麗だな。」


店主が持ってきたのは白い布地に緋い刺繍がほどこされたショールだ。

色合いも丁度いい、これにしようか。


「虫って言わないでくださいよ。」


「虫は虫だろ。じゃあこれ貰うぜ。」


「ありがとうございます!」




馬に乗って帰らないといけないから、重いものや大きいものは避けたい。

となると…やっぱり菓子がいいな。

俺の大好物でもある砂糖菓子。

持てるだけ持って帰ろう。


今日はもう眠い。

適当なところに泊めてもらうか。







「研究長ー、出来たかー。」


研究室のドア蹴り開ける。ドアは情けない音をたてながらゴミを押しのけ、ホコリを巻き上げる。


「ちょっとくらい掃除したらどうだ。」


「あなたみたいに乱暴にしなかったら問題ないんです。」


わざとらしく咳をしながら研究長は数枚の紙を渡してきた。

丁寧な図とビッシリと並んだ小さな文字に、研究長の几帳面さが伺える。


「はー、疲れましたよ。(リョウ)は作る方はからっきしなので、ご自分で作ってくださいよ。」


「ケチだな。…ってか研究長、一人称名前かよ。その見た目でそれはキッツいぞ。」


「あなたに名前を覚えてもらおうとしてたら癖になりましてね、努力の甲斐はありませんでした。」


俺のせいかよ、知られざる過去が判明だ。

そういえばこいつの名前、なんだっけ。


……まぁいいや。





馬に荷物を括りつけて、街を出る。

馬車で来ていたら中で研究長の案が読めたんだが、仕方ないな、家に帰ってから読むとしよう。

武器の完成はいつ頃になるのか、敵にどこまで通用するのか。

不安はあるが、希望だってある。


今夜は星が綺麗だ。柄にもなくそう思った。


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