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ニートと愛と望遠鏡 (3)


 相手がどこにいるか解らないから、とりあえず……

 あんまり人通りが多いところ行くのは、さすがに危ないよな。


 山崎はそう考えて、門を抜けて街に入ってから、人通りの少ない裏通りに向かう。

 昼間だと言うのに、殆ど人が通らない狭い裏通り。

 道の端には、ゴミが捨ててあり、腐臭さえ漂ってくる。


 さて、これから、どうすりゃいいんだ?

 てっきり、街に入りさえすれば、『転移者』が居て、バトルが始まると思ってたんだが。

 バトルの前に、探索くえすとか、めんどくせーな。クソゲーかよ。

 他の『転移者』を探すあても、何もねえし。

 とりあえず、街の人に話しかけて、色々と情報を聞けばいいのか?

 くそ。見も知らぬ他人に話しかけるなんて、やってられるかよ。

 べ、別に俺が、他人に声かけれないほど、コミュ障って訳じゃ無いぞ。絶対違うぞ。

 単に、なんで俺様の方から、知らねえ赤の他人に声かけなきゃいけないんだ、って事だよ。

 向こうから、俺に声かけてこいってんだ。くそ。


 山崎は、そんな都合の良いことを考えながら、あてもなく、トボトボと裏通りを歩き続ける。

 すると、通りの奥から1人の女性が走ってきて、彼に声を掛けてきた。


「助けてください!」


 女性が、山崎の胸にすがり付いてくる。

 その女性の茶色の髪の頭の上に耳がある。いわゆる"猫耳"と言うやつだ。

 形のいいお尻からは、ふさふさの毛に覆われた尻尾が生えていて、くねくねと揺れている。

 褐色の肌をしていて、細くすっきりとした体型なのに、胸の膨らみは豊満だ。

 ビキニの水着のような僅かな布しかまとっていない、その豊満な胸を、山崎にぐいぐいと押し当てながら、だきついている。

 そして、上目遣いで覗きこみながら、もう一度懇願してくる。


「お願いです、助けてください!」


 キタキタ キタよ、キターーー

 そうだよな。やっぱりこうだよな。

 俺は異世界に来た、『転移者』なんだから、こーゆーイベントがないとな。

 しかも、ネコミミ娘! これがやっぱり異世界だよな。

 おお、そのうえ、このネコミミ娘、胸にビキニみたいな服だけで、下着もつけてない。乳首のぷっくり浮いてるじゃん。

 うおお! 今 動いたら、ちょっと乳輪が、はみ出て見えたよ!

 いやいや、いかん。

 ここは、ちょっと男らしくかっこよく振舞っておかないと。

 こーゆー場面は、頭の中で、何度もシミレーションしてきただろう。


 山崎は、心の中の劣情をとりあえず押さえ込む。

 それから、自分では精一杯、かっこいいと思う声をだして言った。


「ど、どど、ど、どうなさ、なされたのの、のですか? き、きき、綺麗な、お、お嬢さん」


 久しぶりに、実に十年ぶりぐらいに女性と話すので、思わず緊張して、どもってしまう。


「追われているんです。助けてください」

 女性は、切羽つまっているせいか、彼のどもりは気にしていないようだ。

 さらに彼女が答えるとほぼ同時に、道の奥からいかにもチンピラ風な男達六人が姿を現した。

 周りをぐるりと周りをとり囲んでくる。


「おい、にーちゃん。その女をこっちに渡しな」

 チンピラ風な男が、ドスの聞いた声で、脅してくる。


 山崎は、その声にビクリと反応して、今にも泣きだしそうな、怯えた表情を浮かべる。

 だが、怯えたのは、ほんの一瞬で、すぐにニタリと、余裕の笑みを浮かべた。


 おっと。

 今の俺は、前の俺と違って『転移者』だった。

 こんなザコ共に怯えてどうするよ。

 『転移者』になって、力も速度も、並みの人とは比べ物にならないくらい高くなっているから、こんなザコ、そのままでも勝てる。

 でも、ネコミミ娘が、俺にでっかい乳をおしあてて縋りついている。

 ここで、派手にかっこよく決めれば、このお姉さんは、俺様に惚れるはずだ。


 そう確信した彼は右手を上げて、無駄に、自分だけがかっこいいと思っているポーズをつける。

 そして……


 声高らかに叫んで、自分の『特殊スキル』を披露したのだった。



  ――――――


 相手がどこにいるか解らないから、取りあえず……

 人の多いところで探すっきゃないよね。


 平松絵里奈はそう考えて、門を抜けて街に入ってから、人通りの多い表通りに向かう。

 通りには、多くの人や馬車が行き来し、街は活気に溢れている。

 道沿いには様々なお店も並び、食堂だと思われる建物からは、良い香りが漂ってくる。


 人ごみ、うざい。

 特にこの世界の人うざい。すっごい埃っぽいもん。

 でも、街すっごいお洒落でかわいい。

 しかも、歴史をかんじさせる?って言うの?

 なんか古くて、でっかくて、おおきくて、石でできてて、

 かわいくってすっごい。見てるとカンドー。まじカンドー。

 すっごい。とにかく、すっごくお洒落でかわいい。


 絵里奈は、そのままキョロキョロと左右を見回しながら、表通りを歩き続ける。

 その姿は、完全に、"都会に来た田舎者"そのものだった。

 

 あ。だめじゃん。

 ただ、カンコーしてても、だめじゃん。

 『転移者』だっけ? 探さなきゃ

 でも、どうやって探すん?

 携帯のアプリとか無いしぃ、教えてくれる友達もいないしぃ。

 えっと、人さがしって、コーバンに聞くば、いいんだっけ?

 うん、確かそうだ。とりあえずコーバン探そ。

 コーバン、どこ? 


 さらにキョロキョロと左右を見回しながら、フラフラと歩き続ける。

 そんな彼女に、後ろから誰かが声を掛けてきた。


「お嬢さん。何かお探しですか?」


 絵里奈が、声の方に振り返る。

 そこには、スラリと背が高く、金髪碧眼で、そして、もちろんすごい美形の青年が立っていた。


 うわ。うそ。まじ?

 かっこいい! まじ美形!

 ウエンツくんより、全然いけてる!

 ありないくらい、かっこいいんですけど!


 目を丸くして、驚愕している絵里奈に対して、青年はさらに優しそうな柔らかい微笑みを浮かべて、もう一度問いかけてきた。


「お嬢さん。大丈夫ですか?

 先ほどまで、キョロキョロと周りを見まして居たけど、何かお探しですか?」


 その声に、やっと彼女は我にかえって、あわてて質問に答える。

「えっとぉ、えっとぉ、あの、じつはー、私、コーバンを探してるんですぅ」


 絵里奈のその答えに、青年は不思議そうな表情を浮かべた。

「コーバン? コーバンですか? 聞いたこと名前ですねえ。どんな人物なんです?」

「ううん、ちがうの。コーバンは人じゃなくて、コーバンなの。お巡りさんが居る所。

 コーバン、どこにあるか知ってる?」


 絵里奈のふわっとした説明に、さらに青年は不思議そうな顔をする。


「残念ですが、僕はオワマリ・サンと言う人物も存じておりませんし、コーバンという場所を存じておりません。

 ですが、困ってる貴方を、ほったらかしすることなど、出来よう筈もありません。

 僅かでもいい。美しい貴方の、力に、なりたいのです」


 青年は、そこで一度、言葉を切り、とびっきりの微笑を浮かべて見せる。


「良かったら、そこでお茶でも飲みながら、ゆっくりと説明してくれませんか」


 ひょっとして、これって……、出会い?! 運命の出会い?!

 そっか、異世界だもん。こーゆーことも有るよね。

 もちろん、けっして、けっして、ナンパなんかじゃない。出会い、これは出会いなの。

 そう、出会い! 純粋に、運命的な出会い!

 あ、ユー君、もちろん浮気じゃないよ。本当に愛してるのはユー君だけ。

 私は一途だから、浮気なんかしないしぃ。

 これはアバンチュール。

 異世界でのアバンチュール。だから、ノーカウント。


 絵里奈は、心の中で意味不明な言い訳をしてから、その青年に誘われるままに、近くにあるお店に入っていった。


 …… ……



「それでは、貴方は、別の世界から来た『転移者』なのですね!?

 すごい。それは凄いですよ。やはり只者では無いとは思っていました。

 貴方のその茶色の髪。お洒落な髪型。垢抜けた雰囲気。すべてがこの世のものでないと思っていました」


「いや、そんな、本当の事言われても、照れるぅ」

 青年に熱く語られて、絵里奈はすっかり良い気分だった。


 お店に入って、もう小一時間くらい経っているだろうか。

 その間、美しい青年は常に蒼い瞳で絵里奈を見つめながら、絵里奈のどんなに支離滅裂でつまらない話でもしっかり聞いてくれて、さらに、その合間合間には、絵里奈の色々な所を賞賛し続けてくれた。

 良い気分にならない女性など、いないだろう。


「所で……」

 美しい青年が、最高に素晴らしい微笑を浮かべながら言った。


「先ほど、『転移者』は、全員1つだけ『特殊スキル』を持っているとお伺いしましたけど、貴方はどんな『特殊スキル』をお持ちなのです?

 美しい女神のような貴方のことだ、さぞかし素晴らしい『特殊スキル』をお持ちなのでしょうね」


「えっとね、私のとくしゅスキルって奴? それはね……」


 すっかりいい気分の絵里奈は、自分の『特殊スキル』について、自慢げにべらべらと説明し始めたのだった。



  ――――――


 勝てるかも。


 島原千賀子は、そう思う。

 門の入り口で見つけた、1人(・・)の『転移者』。

 その『転移者』に対して、協力者にお願いして、接触して貰った。


 小野原は、この街に来て、積極的に街の人と交流してきている。

 すでに、ちゃんとした賃金さえ払えば、色々とお願いを聞いてくれる協力者も得ていた。

 接触方法自体は、実にありがちな、とてもありきたりな方法だった。正直、成功する確率は低いけど、まずは相手の様子をみる為に実行した作戦だ。

 ところが、相手の警戒心が低かったおかげか、あるいは知能が低かったおかげか、とにかく接触は成功してしまった。


 見事に、『転移者』の特殊スキルが判明することができたのだ。


 島原は、腕組みをして思いにふける。

 どうやら、相手は、あまり警戒心が無いタイプみたい。

 回りくどい作戦を立てるより、直球(ストレート)な作戦の方が上手くいきそう。

 相手の『特殊スキル』はかなり強力で、しかも、私の『特殊スキル』は、けっこう癖があって使いづらい。

 だけど、作戦さえ嵌ればいけるはず。

 よし、警戒される前に、早速今夜、作戦を決行しよう。

 彼女の表情が、引き締まる。


  この街にやってきたのが、貴方の運の尽き。

  かならずやっつけて、星1個、獲得してみせるわ!


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