#008「伏魔殿」
@エドワード邸
中狼「そういえば、ここへ来る途中に、ひときわ派手な建物がありましたけど?」
小華「わたしも気になってたわ。あれは、何の建物なんですか?」
エドワード「この街の繁栄のシンボル、とでも言っておこうかな」
中狼「たしかに、賑わってましたね」
小華「何か、美味しいものでも食べられるんですか?」
夫人「食べ物じゃないわ。あの建物は、束の間のドリームを売ってるの」
中狼「ドリーム? 夢で商売できるんですか?」
小華「形も無ければ、重さも無いわね」
エドワード「はぐらかすのは、やめよう。端的に言えば、あれは公営カジノなんだ。この国の経済は、ギャンブラーによって成り立っているのさ。かくいう我々も、カジノの株主で、優待権持ちなんだ。どうだろう。帰るのは明日の朝にして、今夜、四人で遊ばないかい?」
中狼「ええっ。でも、俺たちは、まだ子供だし」
小華「でも、こんな機会、二度と無いかもしれないわよ?」
夫人「あたしたちと一緒なら、咎められないわよ。それに、何事も経験よ」
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@公営カジノ
黒服「お客様。お連れ様は、十八歳未満ではございませんか?」
小華「早速、疑われましたね、エドワードさん」
エドワード「融通が利かないね。ホールではなく、支配人室に行くべきかな?」
エドワード、懐から名刺を出し、黒服に見せる。
黒服「ハッ。これは、失礼いたしました。どうぞ、お入りください」
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黒服「お客様。お連れ様のご入場は、お認めできかねるのですが」
中狼「駄目みたいですよ?」
夫人「あら、石頭ね。若い燕の一羽くらい、大目に見なさいよ。株主を降りるわよ?」
夫人、優待券をチラつかせる。
黒服「ヒッ。それは、ご容赦願います。どうぞ、お入りください」
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小華「さっき見せたアレは何だったんですか、エドワードさん」
エドワード「これが何かは、私にも分からない。ただ、以前、支配人から渡されたもので、部下が言うことを聞かなかったら見せるようにと言われてただけなんだ」
小華「そうなんですか。それにしても、あちこちに色んな人たちが居て、どれが何やら、目移りするばかりだわ」
エドワード「それでは、今宵は私がエスコートしましょう。リトルエンジェル」
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中狼「すごい威力ですね、それ」
夫人「癖になって濫用するといけないけど、たまには良い思いをしないとね。それより、手始めに何かしましょうよ。夜が明けちゃうわ」
中狼「それが、その。誰が、どういう人なのか、サッパリでして。オススメは、ありますか?」
夫人「そうね。それじゃあ、今夜は、あたしが案内するわ。ミドルハンサム」