#007「摩天楼」
@ガブルーン
中狼「天に向かって聳える、無数の鉄骨ビルディング」
小華「群青と蛍光オレンジのケーキ、ショッキングピンクのジュース」
中狼「大量のスジ肉とポテトの山」
小華「どうやら、大きいこと、丈夫なこと、たくさんあること、派手なこと、目立つこと、一番であることが重要みたいね」
エドワード「美国は開拓されて間もない、新しいエネルギッシュな国だからね。スクラップアンドビルドに、トライアンドエラーの連続さ」
中狼「より強く、より絢爛に ポップでゴージャス」
小華「興奮と感動のドリームカントリーで、エキサイティングな毎日を。パンフレットのままね」
エドワード「看板に偽りなしだろう? 退嬰せし栄華の面影にしがみついてる、どこぞの元覇権国家とは違うよ」
中狼「ひょっとして、吉国のことですか?」
エドワード「知ってるのかい?」
小華「ここに来る前に、行ったことがありまして」
エドワード「陰気な国だっただろう? 古都としての気位だけが残り、そのプライドの高さが邪魔して他国の良さを受け入れられない、可哀想な国さ。時代は、パクスガブルーナになりつつあるというのにね。――ここだよ。ようこそ、我が家へ」
*
@エドワード邸
夫人「お疲れになったでしょう? どうぞ、お掛けになって」
中狼「失礼します。うわぁ、フカフカだ」
小華「中中。どっかり真ん中に座らないで、端につめて。――わぁ、どこまでも沈んでいって、起き上がれなくなりそう」
夫人「アーサーが珈琲を淹れてますから。クッキーもあるわよ」
中狼「何から何まで、すみません」
小華「家中を隈無く紹介してもらって、その上、ご家族の皆さんまで」
夫人「ゲストを安心させるための、この国ではポピュラーな歓迎パフォーマンスなんだけど、自慢たらしいと思ったかしら?」
中狼「いえいえ。そんなことないです」
小華「広いお庭やプールがあって、素敵なお家だと思います。お子さんたちも、明るくて元気いっぱいで、一緒に居て楽しい人たちですし」
夫人「フフフ。多様な種族が共存するためには、どうしても自己開示が必要なの。後ろ暗い隠し事がないという証明ね」
中狼「所変われば」
小華「品変わる、ね」
エドワード「珈琲用のカップは、どこだったかな、マイハニー?」
夫人「また忘れたの? その隣の戸棚にあるバスケットの中よ、マイパンプキン」
中狼「ハニー? パンプキン?」
小華「クララベルさんは蜂蜜で、アーサーさんは南瓜なんですか?」
エドワード「最愛の人、という意味だよ。――おまたせ」
夫人「お砂糖が無いわよ。――どちらも、甘くて美味しいでしょう?」